スタンド・バイ・ミー
「二人ともおめでとー!! 頑張ったのが報われたじゃん。先生も嬉しいよー!!」
オレと阿舞野さんは二人で、明導大学の合格通知を持って担任の春日咲耶先生のところに報告へ行った。
春日先生は喜び過ぎて、オレをギュッと強く抱きしめてくれた。
いや、ちょ、ちょっと、待ってくれ! ここは職員室だぞ。
教職の立場にある者なんだから、少しは周りの人の目を気にしてくれ!
と、そう思ったオレも、実は大人の女性の魅力に包まれてまんざらでもない。
先生の膨らんだ胸の弾力がオレの身体に伝わってくる。
この胸の持ち主が教師だというのもなんだかエロいシチュエーション。
って、そんな快楽に浸っている状況ではない!
オレは阿舞野さんの方へちらっと視線を送った。
彼女は目を釣り上がらせて、頬をエサを詰め込んだハムスターのように膨らませていた。
担任に報告した後、オレと阿舞野さんは帰宅するため学校を出た。
二人並んで通学路を歩き、駅へと向かう。
「二人揃って合格できるなんて、マジお守りパワーじゃない?」
歩きながら阿舞野さんが言った。
二人の鞄には受験が終わった今でもふわりちゃんからもらったお守りがつけてある。
「とりあえずオレのおみくじの凶がハズレてよかった」
「あたしの大吉は当たったけどね」
そう、オレはおみくじで凶を引いたがハズレたのだ。
大学合格以外にも喜ばしいことがあったし。
阿舞野さんが自分の配信の中でオレ達漫画部の漫画を宣伝してくれたおかげで、売れ行きが好調なのだ。
今の時代はネットでの口コミが口コミを呼び、拡散するときはスピードが速い。
売上を部員四人で割っても一人あたり、なかなか良いお小遣い。
これならふわりちゃんのクリスマスプレゼントのお返しも買える。
それにもう一つ。
オレには大学を合格したら、絶対にやらなきゃいけないことがあるのだ。
「……阿舞野さん、ちょっと話があるんだけど」
オレは彼女に言った。
「ん? 話?」
阿舞野さんは微笑みながら小首を傾げる。
「ちょっとそこの公園に寄って行かない?」
オレは通学路の途中にある公園へと彼女を誘った。
公園内で近くに人がいない木の下を選び、オレは阿舞野さんの方へと向き直す。
「ゆらっち、話ってなになに? 遠慮なくアタシに話してみ?」
阿舞野さんが緊張しているオレの顔を、ニカッと笑いながら覗き込む。
そんなことされたらますます緊張するではないか。
「あの……、オレ、ずっと自分に自信がなくて……。これといって特技もないし、自分でも努力したって実感したこともなくて……」
オレは少しずつ阿舞野さんに自分の気持ちを吐き出す。
彼女は微笑んだままオレの話を聞いていた。
「だから阿舞野さんに告白された時も、オレはふさわしくないんじゃないかなって自分で思っちゃって……、だからすぐに返事ができなくて……」
「……そうなんだ」
「でもここ最近は今まで生きてきた中で、自分でも胸を張れるほど頑張ったって実感できて。阿舞野さんをイベントで優勝させられたし、大学にも合格したし……、だから今なら君の告白を受け入れられると思うんだ。なのでオレと…….、付き合ってください!」
そう言ってオレは阿舞野さんに頭を下げた。
少しずつオレに近づいて来る阿舞野さん。
頭の先まで来ると、彼女はオレの背中に手を回した。
そして力一杯、オレを自分の身体に引きつける。
「先生とアタシ、どっちにギュッてされるのがいい?」
オレの耳元で阿舞野さんが聞いた。
「……阿舞野さん」
オレは答える。
「アタシ、ゆらっちの気持ち超わかる。アタシのために頑張ってくれてマジでありがと。でも、以前のゆらっちでも全然ヨユーで素敵だし。なのでアタシこそよろしくね。これからゆらっちとはずっしょだよ!」
阿舞野さんはオレを抱きしめながら言った。
もしかしたらこうして二人抱き合っているところを公園内にいる誰かに見られているかもしれない。
でも今のオレは周りの人の目などどうでもよくなっていた。
いつまでもこうして彼女のそばにいたい気持ち。
そしてずっと彼女にそばにいて欲しい気持ち。
それらの気持ちが硬い鎖となって、阿舞野さんとオレに巻きつき二人を繋ぎ合わせているようだった。




