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予定がイッパイいっぱい

 期末テストも無事終わり、高校生最後の冬休みへと入った。


 冬休みが終われば、いよいよ明導めいどう大学の入学試験だ。


「オマエ、正気かよ!」


 嵯峨元康さがもとやすが驚きの声を上げた。


 冬休みだけど、漫画部の卒業作品を完成させるために、部員みんなで学校に集まったのだが、そのときにオレはバイトをしているから昼には学校を出ないといけないことを伝えたのだ。


 すると、嵯峨は呆れたように大声を出し、衣川美南美きぬかわみなみには「先輩、お金がなくて困ってるんですか?」と、眉尻を下げた顔で心配されてしまった。


「この時期にバイトしなきゃいけないほど金が必要だなんて、一体何があったんだよ!?」


 目を見開いたままの嵯峨に聞かれた。


「みんなには言ってなかったんだけど、実は母さんが水虫に罹って高熱が出てしまい、ずっと家の布団でうなされてるんだ。それでこの間、救急でドクターヘリ使って大学病院まで行って診てもらったんだけど、医者が言うには、なんでもこれは高麗人参っていう高価な天然の生薬を煎じて飲ませないと治らない病らしくて、それで……」


 オレは口から出まかせを答えた。


「なるほど、そうだったのか……。そんな事情とは知らずに正気かよとか言っちゃって……、由良ゆら、ごめんな」


 嵯峨が謝る。


「先輩も大変な思いされてるんですね……」


 美南美には同情されてしまった。


 ただふわりちゃんはうつむいたまま、黙っていた。


 もしかしたらオレが阿舞野さんのライブイベントの投げ銭のためにバイトをやってるって、彼女は勘づいているのかもしれない。


 なにかもやもやする。


 いま思えば、ふわりちゃんは過去に弁当を作ってもってきてくれたり、文化祭で阿舞野さんがオレに抱きついたときに寂しそうな顔をしたりと、なにかと気になる行動があった。


 そしていまも寂しそうにしてる。


 つまりそれは、もしかしてだけど、ふわりちゃんもオレのことを……。


 それで阿舞野さんに嫉妬してるとか?


 まさかね。


「ま、オレのプライベートは心配しなくていいから、漫画を早く完成させようぜ」


 オレはみんなを促す。


「心配なんてするか、バカ。本気にしてねーよ」


 嵯峨が笑う。


「それにしてもラスト、めっちゃ良くなったじゃないですか。教室でお漏らしして終わるのよりよっぽどいい」


 美南美に褒められた。


「そうだろ。突然、物語の神が降りてきたんだ」


 オレは答えた。


「誰もいない教室で西日に輝く裸のヒロインを主人公がスケッチする。その途中、ヒロインからの突然の告白……、けっこうロマンティックじゃないですか。わたしも現実にやってみたいかなぁ」


 美南美が目をキラキラさせた。


 実際にやった人間がすぐ近くにいるなんて、彼女は夢にも思わないだろう。


「でも美南美のペッタンコの胸じゃ、せっかくのシーンも映えないかもな」


 嵯峨がからかう。


「嵯峨先輩、それセクハラ……」


 少女漫画のようにキラキラしてた美南美の目が、突如、氷柱のように鋭く冷たい目へと豹変した。


 確かに阿舞野さんの胸はボリュームがあった。


 カーテンが風船のように膨らんでいた。


 おかげで陰影がついた理想のスケッチができた。


 オレはあのときの光景を、いま制作しているこの漫画へとコピーする。


 嵯峨と美南美の二人のやりとりを見てふわりちゃんが少し笑っていた。


 ふわりちゃんが笑顔を見たら、なんだか安心した。


「さあ、頑張って完成させようぜ。オレは漫画制作の後、バイトに受験勉強と、予定がいっぱい待ってるんだからさ、みんなの力を貸してくれ」


 オレの頼みにみんなが応えてくれて、四人でちからを合わせ、卒業漫画の制作はだいぶん進んだ。


 ようやく明日にでも完成しそうだ。


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