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わたしと離れないで

「漫画部の部室に入ったの初めて」


 オレに招かれて室内に入った阿舞野あぶのさんが言った。


 二学期の期末テスト前なので漫画部は休み。


 なのでここなら誰か来る心配はない。


 嵯峨さが美南美みなみもふわりちゃんも来ない。


 ……はず。


 でも念のために部室の内側から鍵を掛けておこう。


 冬は日暮れが早いため、窓の外はもう夕日の色だ。


「アタシ、この後ライバー部の方に顔出さなきゃいけないから……、早く終わらせちゃお」


「う、うん」


 オレは阿舞野さんのために室内に暖房を入れた。


「ゆらっち、ありがとう」


 彼女がオレにお礼を言った。


 そして、着ている制服のブレザーをゆっくりと脱ぐ。


 オレはスケッチブックを脇に抱えたまま、じっとその様子を見守っていた。


 阿舞野さんは脱いだブレザーを畳まずに、机の上に無造作に置いた。


「後はカーテンの裏で脱ぐから……」


 そう言って、白いスクールシャツに紺のミニスカート姿になった彼女が、薄いクリーム色のカーテンの裏に隠れた。


 オレは無意識のうちに息を凝らす。


 やがてカーテンにスクールシャツのボタンを外す阿舞野さんのシルエットが映った。


 彼女は脱いだシャツを無造作に床に落とした。


 続いて背中に手を回し、ブラを外す仕草が見える。


 阿舞野さんは無言だったけど、ためらくことなく脱いでいっている感じだった。


 いま彼女の上半身は、首につけているネックレス以外、何も身につけていない状態だと思う。


 上が脱ぎ終わると、今度は阿舞野さんは腰に手を当てた。


 カーテンと床の隙間に彼女がはいていた紺のスカートが落ちるのが見えた。


 その瞬間、強く鼓動を打ったオレの胸。


 続けて彼女がスカートの中にはいていた黒パン、そしてワインレッドのショーツが落ちた。


 下半身も脱ぎ終わると、左右に閉じたカーテンの隙間から阿舞野さんが顔をだす。


「全部……、脱いだよ」


 少し顔が紅潮しているように見えた。


 窓から入る西日を背中に浴びて、阿舞野さんが琥珀のように輝く。


 そんな美しい彼女にオレは息を呑み、見惚れてしまう。


「メッチャ、ガン見するじゃん……」


 どのくらい阿舞野さんを見つめていたのだろうか。


 恥じらう阿舞野さんの言葉で、オレは我に返った。


「ご、ごめん。よし、始めよう」


 オレは頷き、かすかに震える手で椅子を用意する。


 その椅子に座り、まずはカーテンに包まれた彼女をスマホのカメラで撮った後、スケッチを開始した。


 阿舞野さんをいつまでも裸にしておくわけにはいかない。


 なるべく早く描いてあげなきゃ。


 オレはカーテンに映る彼女の身体のシルエット、そして全裸になった恥ずかしさにより硬くなっている表情をできるだけ忠実に写生しようと、無我夢中でスケッチブックにペンを走らせた。


 そんなスケッチに没頭するオレに向けて、彼女が口を開き話し始めた。


「ねぇ、ゆらっち、そのままでいいから聞いて欲しいんだけど。アタシ、三年に上がってゆらっちと同じクラスになってさ、それまで退屈気味だった学校が超楽しくなった。ゆらっちはアタシの知らなかった刺激をいっぱいくれた。次は何をするんだろうってマジで楽しみだった。高校生の最後の年にマジで良い思い出ができた。まあ、ほとんどは人には言えない思い出なんだけど。でもそれでもいい。シンプルに嬉しいよ。マジありがとう」


 少し震えた声で阿舞野さんは話を続ける。


「それでさ、これが一番言いたいことなんだけど。アタシ、ゆらっちのことが好き。超好き。大学に行くって言ったのも、もっとゆらっちと一緒いたかったから。これからもゆらっちに刺激を与えて欲しかったから。そしてアタシからもゆらっちに刺激をあげたかったから。でも考えたらさ、もしかしてだけど二人そろって合格できない可能性だってあるじゃん? だから、たとえどちらかが合格しなかったとしてもゆらっちと離れないでいられるように……、アタシと付き合って欲しい」


 その言葉を聞いた瞬間、オレは思わず手に持っていたスケッチブックとペンを床に落とした。


 裸の阿舞野さんが突然の告白。


 そしてオレが受けた生まれて初めての告白。


 オレの中に動揺が走る。


 こういう時って、どう反応していいのだろう。


 恋愛漫画の場合、主人公って告白されたらどんな行動を取ってたっけ?


 ベタなたとえだけど、オレの頭の中は阿舞野さんを描く前のスケッチブックのように真っ白で、何も言葉が浮かばないし、何も映像が浮かばない。


 オレは動けず、また声も出せず、ただただカーテンに包まれた阿舞野さんを見つめる。


 彼女も裸なので動けずにじっと固まっていた。


 左右のカーテンの境目からのぞかせる伏目がちの彼女の顔は、強さを増した陽射しによって、より一層輝いているように見えた。

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