ありふれたアイデアじゃない
文化祭も終わり、いよいよ大学受験が迫ってきた。
ネットで志望校の願書の取り寄せをしたり、オレも受験へ向けてのラストスパートだ。
第一志望は明導大学だけど、もしダメだった場合の第二志望、第三志望の準備もしなくてはいけない。
そんな時期の教室で、阿舞野さんと彼女の友達の会話を耳にした。
オレの隣の席の阿舞野さんの席で女子達が屯している。
「えっ!? マジ? うずめ、大学行くんだ? てっきりライバー部経由で芸能界入りするのかと思った」
友達の一人が言う。
「別に事務所からスカウトされてないし。それに進学しても芸能活動はできるし」
「それでどこ受けるの?」
「あー、それがまだ決めてないんだよねー。いま、どこにしようか悩んでっから」
「ちょっと待って、この時期で!? のんきだねぇ。早いとこならもう出願だよ」
友達は呆れている。
そうか、やっぱり阿舞野さん、大学進学に決めたのか。
以前、一緒に昼ごはん食べたときに、そんな感じのことは言ってたけど。
高三で阿舞野さんと同じクラスになる以前は、彼女はオレとは真逆の世界の住人だと思っていたけれど、同じクラスになって仲良くなるにつれ、彼女もやっぱりオレと同じ高校生なんだって実感していった。
その日の放課後、オレはラノベ部部長、雨宮瑞葉にSNSで呼び出され、漫画部へ向かう前に彼女に会いに行った。
「もうそろそろ、先輩も卒業ですし、漫画の方も仕上げなくてはいけませんね。これでわたしからのアイデア提供もラストです」
「ありがとうございます」
ハハーッと、オレは有り難く両手で原稿を受け取る。
「ちょっと最後なので物語は過激にしてみました」
オレは受け取った原稿に目を通してみる。
「こっ、これは……!?」
「どうです? 背徳的で素晴らしいでしょう?」
雨宮部長は自分が書いた物語のプレイを、実はオレと阿舞野さんが密かに実行していることを知らない。
だから、想像上で自由に書くのは仕方のないことなんだけど……。
「こ、これはちょっと……」
オレはやんわり答えた。
「なんです? わたしのアイデアにケチをつけるつもりですか? アイデアが無いから考えてくれと頼んできたのは先輩でしょう?」
「は、その通りです……」
オレは身を縮こませて頭を下げる。
「授業中、ずっと耐えていた尿意を履いたオムツの中に一気に放ち、開放感を得る二人。周りのクラスメイトはそんな二人に気づかず、いつも通り授業を受けている。そんな普段の光景の中、二人は密かに背徳感に浸り、二人だけが知る悦楽の世界へと……。あぁ、想像するだけでゾクゾクします……!!」
眼鏡の奥に光る部長の瞳は、オレの存在を忘れ自分の想像の世界へと入り込んでいる様子だった。
それにしてもよくこんなアイデアが思いつくものだ。
授業中にお漏らしだなんて。
オレはとんだ変態JKにアイデアの依頼してしまったのかもしれない。
って言うか、ほんとに周りにバレないんだろうな!?
いや、これはさすがに実行不可能だろう。
オレも阿舞野さんに伝えにくいし、提案したところで彼女も断るんじゃないかな。




