変態にいたる依頼
今日も授業が終わった。
漫画部の部室へ行って、後輩のふわりちゃんに弁当箱を返さなくてはいけない。
それにしても驚いた。ふわりちゃんが弁当を持って3年の教室に来るなんて。
ふわりちゃんは何で急にオレに弁当なんか作ってきてくれたのだろう。
その真意も知りたい。
なんとなくだけど、あれから阿舞野さんの機嫌がちょっと悪くなったような。
「アタシはお弁当作ってくれる人がいないから、購買でパンでも買ってくるかぁ」
とか、昼休みにオレがもらった弁当への嫉妬みたいなことを言っていた。
ふわりちゃんの弁当は、なかなか美味しかった。
でも教室で食べていたら周りの目が気になって、つい早食いになってしまい、よく味わうことができなかった。
他人に弁当なんて作ってもらったことがないのでわからないんだけど、こういうのって洗って返すものなのかな?
そんなことを考えながら、漫画部の部室へ行く前に、まずはラノベ部へと向かう。
雨宮瑞葉部長から連絡があり、夏休みの間に考えた漫画の原作を渡したいとのこと。
ラノベ部室内では、部長様が足を組んで椅子に座っていた。
「わたしなりに夏休みの間、今後の展開を考えていました」
ちょっと気取ったポーズでオレに原稿を手渡してくる。
「どうもありがとうございます」
部長は2年生の後輩だが、オレは丁寧に頭を下げて原稿を受け取る。
「もうすぐ体育祭なので、それに因んだストーリーにしてみました」
群光学園は9月の下旬に体育祭が行われる。
体育祭は学園ものの漫画で外せないイベントだからいいかもしれない。
「見てもらえばわかりますが、これぞ愛と青春とフェチズムの極致! まだ日中は暑さが残る体育祭当日。参加した競技で体を火照らせた二人は閉会式後に誰もいない場所で密会します。そして相手の体に鼻を近づけ、お互いに流した汗の匂いを嗅ぎ合い、その若さ滾る臭気を自分の体内へと取り込んで、そして二人はめくるめく陶酔の世界へ……」
眼鏡の奥に光る部長の瞳はトロンとしている。
語ってるうちになんだか自分の世界に入り込んでしまったみたいだ。
漫画のストーリーを考えてくれないかとオレが依頼したわけだが、そのせいで部長の隠されていた変態性がますます露わになってしまった。
このままでは部長は高2にして本当に変態になってしまうのではないだろうか。
やがて部長はハッと我に返ったように真顔に戻ると「どうです? ゾクゾクしませんか?」とオレに聞いてきた。
「あっ、はっ、はい! 仰せの通りです」
と、オレは答える。
しかし、果たしてこれを阿舞野さんが了承してくれるだろうか。




