八月の砂上で触れる
「海だー! ヤッバーい! メッチャ、Funが増すんですけど!」
阿舞野さんは満面の笑みで叫ぶように言った。
「海の家でさ、浮き輪の空気入れてくれるから行こーよ!」
阿舞野さんに連れられて更衣室を使っている海の家の店員さんのもとへ行く。
初めてここに来たオレとは対照的に、阿舞野さんは毎年来てるのか、慣れた感じだ。
「それっ! 行っくよー!」
浮き輪に空気が入ると、阿舞野さんはスタイルの良い身体を通して、駆け足で砂浜を走る。
オレも彼女についていき、二人でザバザバと海水に浸かった。
「キャハー! 超楽しい!」
浮き輪で海に浮かびながら、阿舞野さんはバチャバチャとオレに水を掛けてくる。
晴れた天気、海の匂い、光る波、明るい日差し、そして阿舞野さんのオレンジ色のビキニ、全てが完璧にマッチされていた。
しばらく二人で海と戯れていた。
やがてはしゃぎ疲れてくると、砂浜に二人並んで座り休んだ。
「超楽しい! マジ、今日来て良かった!」
阿舞野さんが言う。
「うん、オレも。友達とこうして海に来たことなかったからさ」
オレが答える。
こんなこと言うと今までぼっちだったのがバレバレだな。
でも事実だからしょうがない。
「そっか、友達と来た……か」
阿舞野さんがポツリと言う。
ん? なにかおかしなこと言ったかな。
「どうかした?」
オレが訊く。
「ううん、なんでもない。ゆらっちも楽しんでくれてるなら嬉しいし!」
そう言って阿舞野さんは座り直す。
彼女は少しオレに近づいたのか、砂浜に手をついていたオレの小指に彼女の小指が触れた。
そのままお互いの指が触れ合ったまま、きらめく海面を眺める阿舞野さんとオレ。
高校生最後の夏休み、記憶に残る思い出ができて良かった。




