臍にピアス
屋上の様子を窺った阿舞野さんは、オレに向けて指でオッケーサインを作ると、ウインクしてみせた。
そしてオレを手招きする。
屋上には誰もいないようだ。
急に胸が高鳴る。
屋上に足を踏み入れると、頭上には爽やかな青空が広がっていた。
プランターに植えてる花の葉も鮮やかな緑色だ。
「さあ、人が来る前に済ましちゃお!」
そう言って阿舞野さんは首のリボンを外した。
続けてスクールシャツのボタンを素早く外してゆく。
オレがその様子を固唾を飲んで見ていると、彼女のシャツの下から二人で買いに行ったオレンジ色のビキニが露わになった。
「どう? 似合ってる?」
シャツを広げて阿舞野さんが聞く。
阿舞野さんの胸の膨らみを包んだビキニを見たオレは無言でコクコクと頷いた。
「下も?」
続けて阿舞野さんは紺のスカートを捲り上げ、ニカッと笑った。
いくらビキニだからって、なんて大胆な。
ふわりちゃんもそうだけど、この行為がどれだけセクシーなのか気づいていないらしい。
それから彼女はホックを外してスカートを下ろした。
学校の屋上で制服を全て脱ぎ去り、阿舞野さんはついにオレの目の前でビキニだけの姿になった。
「うーん、この解放感、サイコー!」
夏空の下、阿舞野さんは笑顔で両腕を高く伸ばす。
海やプール以外で見る女子の水着姿。
なんだか非現実感があって新鮮で、オレの胸の鼓動は速くなる。
体を覆うものはビキニのみで、肌を多く露出させた阿舞野さん。
そんな彼女のお腹に、夏の陽射しをキラリと反射するものがある。
それは臍につけたピアスだった。
均整の取れた彼女のボディを飾る銀色のアクセント。
そのピアスの強い輝きが、オレの目に突き刺さる。
「ゆらっち、どーした? フリーズして」
気づくと阿舞野さんがオレの顔を覗き込むように見ていた。
ハッとオレは我に返る。
「いや、ごめん、なんでもない。誰も来ないうちに早く撮影しよう」
オレはスマホのカメラを起動した。
「ポーズどうしよっか? こんなのどう?」
阿舞野さんはそう言うと、少し前屈みになって、顔を斜めにピースサインをした。
さすがライバー部。
自分を可愛く魅せるポージングを知っているようだ。
オレは一瞬で胸がときめいた。
「えっと、じゃあ、撮るよ」
スマホを構えたオレは、カシャリ! とシャッター音をさせて撮影した。
一枚だけじゃなく何枚か撮る。
「ねぇねぇ、別のポーズも!」
阿舞野さんは、今度はベンチに座り、左膝だけ折り曲げて抱えるポーズを取る。
阿舞野さんは撮影されることに対して、気分がノッているようだ。
次々に色んなポーズを繰り出した。
オレは汗ばみながら、夏の屋上の風景に映える彼女のビキニ姿を、夢中で撮影した。
スマホのアルバムに写真がみるみる溜まってゆく。
「さてと、もっとやってたいけどこんなものじゃない? 長い時間してると誰か来るかもだし」
いくつかポーズを撮影したところで阿舞野さんが言った。
もう終わりか。
確かに長時間やればやるほど学校の人にバレる可能性が高くなる。残念だけど。
彼女は脱いだスカートを手に取った。
長い時間、彼女を撮った気がする。
だけど時計を見ると、二人だけの秘密の撮影会は5分ぐらいの出来事だったようだ。
「撮ったやつ、後でアタシのスマホに送ってよ?」
ビキニの上に素早く制服を着る阿舞野さん。
「うん」
学校の屋上で、阿舞野さんがビキニ姿になっていたことをオレ以外誰も知らない。
誰とも共有できない彼女の姿がオレのスマホに収められている。
彼女がオレだけに開催した撮影会。
マジ尊いって言葉が軽いほど、マジの10乗尊い時間だったのかも。
オレの後ろでガラス扉が開く音がした。
振り向くと、一年生の女子二人が仲良く屋上に入ってくるのが見えた。




