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色じかけのオレンジ

 禁断の水着ショップの中は、すでに真夏を先取りした南国のような雰囲気だった。


 観葉植物と色とりどりの水着が並ぶ中、阿舞野あぶのさんは慣れた感じで店内を歩く。


 一方のオレはというと、そんな阿舞野さんの後ろを、おずおずと体を縮こませながら付いて行く。


「何色がいいかなー」


 目に止まる水着を阿舞野さんは片っ端から物色していった。


 店内を見渡すと男性客はオレ一人だ。


「今年はビタミンカラーのが流行りなんだよねー」


 品定めする阿舞野さんがオレに言う。


 なるほど、そうなのか。っていわれても、全く知らん。


「ゆらっち、どれが良いと思う?」


 阿舞野さんに聞かれた。


「いや、その、難しいな」


「とりあえず、ゆらっちの好きな色でもいいよ」


「そんな、オレの好きなやつなんかでいいの?」


「だって、撮影するのゆらっちじゃん? ゆらっちも気に入った水着を着たアタシを撮影したいでしょ?」


 確かに水着の阿舞野さんを撮影するのはオレだ。


 自分の好みの水着を着てもらえるならありがたい……かな。


 かと言って、その好みの水着があんまり酷いものだと、センスのない男と思われそうで怖い。


「じゃあ、このイエローとピンクとオレンジで」


 オレは目についた三色のビキニを選んだ。


 これでどうだ。


 複数選べば、全てがセンス無しのハズレという可能性は低い……と思う。


「うん、なかなかいいじゃん? でもこの三つからさらに一つに選ばないといけないし。とりあえず三つとも試着してみよっと」


 オレが選んだ三着の水着を持って、阿舞野さんと二人で試着室まで移動した。


 って、水着も試着できたんだ。知らなかった。


「んじゃ、ちょっと待ってて」


 そう言って、阿舞野さんは試着室に入り、カーテンを閉めた。


 このカーテン一枚遮られた小さな個室の中から、何やら物音がする。


 いま阿舞野さんが着替えているのか。


 さっきまで目にしていた服を脱いで、オレが選んだ水着を……、いや、変な想像はしては失礼だ。


 すると、早くもわずかにカーテンをめくって阿舞野さんが顔を覗かせた。


「あれ? もう着替えたの?」


 オレが聞く。


 すると阿舞野さんはニカッと笑った。


「ううん。いま、ブラだけ外して上半身裸。なんならゆらっちも中入る?」


「……はぁ!?」


 オレは思わず脳内がパニクって慌てふためく。


「冗談だよ、冗談! じゃ着替えるからもうちょっと待っててねー」


 そう言って阿舞野さんは再度悪戯っぽく笑うと、再びカーテンを閉めた。


 冗談とはわかっていても、反射的に胸がドキドキしてしまった。


 まるでジェットコースターのような時間を過ごしていると言えばいいのか。


 それからオレの胸の鼓動がおさまるぐらいの時間を待つと、


「ゆらっち、これどう? 良くない?」


 と言って阿舞野さんがカーテンを開けた。


 下はデニムのショートパンツで、上半身だけ水着を着けた阿舞野さんがいた。


「三つのうち、これ一番アタシに合ってる気がするんだけど?」


 あの中から彼女が選んだのはオレンジ色のやつ。


 細身ながら健康そうな体型にマッチしていた。


「……良いと思う」


 オレは呟くように言う。


「マジで!? じゃあ下も着てみるね」


「商品の水着、履いちゃって良いの??」


 思わず気になったことを口にしてしまった。


「下着の上から履くんだよ。直接着たらマナー違反だし。じゃ、またちょっと待ってね」


 そう言って阿舞野さんはまたカーテンを閉めた。


 彼女がデニムのショートパンツを脱ぐ音がする。


 ということは、いまは下半身は下着一枚の姿か。


 いかんいかん、心を乱さないよう明鏡止水の精神でいなければ。


「お待たせー!」


 阿舞野さんの声とともに試着室のカーテンが開く。


 そこにはバストはボリュームがあり、ウエストはくびれが際立つ、メリハリある体型の阿舞野さんが、オレンジの紐ビキニを着て立っていた。


 つい見惚れるほど、キュートさとセクシーさを兼ね備えた姿。


「どう? 似合う?」


 彼女のその愚問に「似合い過ぎる……」と答えるのが精一杯だった。


「マジ!? 超嬉しいんだけど! じゃこれ買おうか!」


 阿舞野さんそう言って背中側もオレに見せ、振り返るポーズをとる。


「ゆらっち、一緒に写真撮ろうよ!」


「えっ、えっ??」


 戸惑うオレの腕の腕を組んで、阿舞野さんはオレを試着室の中へ入れようとしてきた。


 オレは慌てて靴を脱ぐ。


 そしてオレの腕を組んだまま、笑顔の阿舞野さんは、試着室の鏡に映る二人の姿をスマホのカメラで撮影した。

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