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ぼくは今日、人気のきみとデートする

 ゆっくりなように感じても、時間は確実に流れている。


 まだ先のことだと思っていても、いつかは必ず訪れる。


 今日、とうとうその日がやってきた。


 阿舞野あぶのさんと一緒に水着を買いに行く日だ。


 つまりその日はオレにとって初のデートとイコールである。


 なにせ初めてのことだから、着ていく服にも困る。


 やっぱりオシャレしなきゃいけないのだろうけど。


 でもそんなに服を持ってないから、そもそも選択肢が無い。


 というわけで、毎年夏に着てるチェックの半袖シャツにするしかなかった。


 待ち合わせ場所の駅へは、予定よりだいぶん早く着いてしまった。


 おかげさまで、本日は梅雨の影響もなく、雲一つない快晴。


 だけど、まだ6月だというのに、好天気のせいでかなりの暑さだった。


 あまり街中をうろうろして、阿舞野さんを熱中症にでもしたら大変だ。


 この猛暑の中、阿舞野さんの到着をじっと待ってると、汗が次々と流れ出てくる。


 でもこの汗の原因は暑さだけでじゃない。


 初デートの緊張のせいもあるだろう。


「ゆらっちー!」


 休日の人込みの中、一際目を引く可愛い女の子が、少し離れたところからオレの名を呼び、手を振っていた。


 阿舞野さんだ。


 デニムのショートパンツに、白のノースリーブを着ていた。


 通行人の視線がオレに集まる。


 嬉しいやら恥ずかしいやら。


 人から注目を集めることに慣れてないので、なんと表現すればいいのか。


 阿舞野さんもライバー部で顔出ししてるんだから、自分のことを知ってる人がいる可能性を考えて、もう少し目立たないように気を配ってほしい……、なんて内心思ってしまった。


「お待たせー! それにしてもマジあっつ!」


 阿舞野さんはパタパタと手で扇ぐ仕草をした。


 暑いけど阿舞野さんの姿、そして笑顔は、晴れた夏の日差しととても似合っていた。


「ところで水着買うのって、オレ、どこ行けばいいのか全くわからないんだけど」


 言うまでもなく、男一人で女性用の水着を買うなんて怪しい行為をしたことがない。


「大丈夫。アタシ、毎年買いに行ってるとこ、あるから。今年も新しいのちょうど欲しかったし!」


 ということは阿舞野さんは毎年、海かプールへ出かけているのか。


 当然と言えば当然のような。


 翻って陽のあたらない陰キャ者のオレなんて、海やプールなんて行くわけがなく、学校の授業で使うスクール水着しか持っていない。


「それじゃ、レッツゴー!」


 街中で元気よく拳を突き上げた阿舞野さんとオレは二人並んで、彼女の案内で目的地へと向かった。


 一応、人気ライバーと一緒に歩いてるわけで、阿舞野さんを『うーめろ』って気づいた人が、彼氏と一緒に歩いてたなんて変な噂を立てる心配はないだろうかとか、何故か本人以上にオレが気にかけてしまう。


「ってかさー、毎年どの水着にしようか悩むんだよねー。やっぱり将来、インフルエンサー的なライバーになりたいからさ、流行る水着を選ばなきゃいけないし? でも今日はゆらっちが見立ててくれるからね!」


「オ、オレ、そんな水着のファッションセンスなんてないよ」


 オレは首を振って汗を撒き散らしながら、慌てて否定する。


 そんなこんなで彼女に連れてこられたのは「ハイビスカス」という名の水着ショップ。


 キュートな南国風の店構えからして、なんかもう女子修道院のような男子禁制の場所な気がする。


 本当にオレが立ち入って良いものなのだろうか。


「おー、今年もいいの揃ってんじゃん!」


 阿舞野さんは、店頭に飾られている最新の水着を見て、テンションが上がっているようだった。


「さ、行こ!」


 阿舞野さんに腕を掴まれ店内へと引っ張られたオレは、いよいよ禁断のレディースの水着ショップへと足を踏み入れた。

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