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アブノに首ったけ

 オレはいつも寝る前に漫画を描く。


 今夜も可愛い女の子の描き方を練習していたオレが、そろそろ寝ようかと思った時、スマホにメッセージが届いた。


 差出人は阿舞野あぶのさんだった。


《明日の朝イチ、なる早でエントランス集合!》

《今度はゆらっちがドキドキチャレンジする番だよ♪》


 ドキドキチャレンジ?


《なにそれ?》


 オレは尋ねる。


《ゆらっちは体操服交換してないでしょ!》


 ああ、あの件か。自分の漫画なのにすっかり忘れていた。


《なにしたらいいの?》


《明日の朝、教えるよ♪》


 阿舞野さんは体操服交換に変わる何かを思いついたようだ。


 一体、オレに何をやらせる気だろう?


 気になって、彼女が思いついたアイデアが何なのか、頭の中であれこれと考える。


 その間、オレの胸はドキドキしていた。


 なるほど、確かにこれは病みつきになる要素はあるな。


 阿舞野さんがオレの漫画にハマった理由もこれなのかもしれない。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝、約束どおり、オレと阿舞野さんは学校のエントランスで合流した。


 二人で人目のつかないところへと向かう。


 何をされられるんだろう? そのことを思うと、起床から胸の鼓動が止まらない。


 二人で中庭の目立たないところへ行くと、阿舞野さんはカバンの中に手を入れ、


「じゃーん!」


 と何かを取り出した。


「……これは?」


「アタシのネックレス。ゆらっちには今日一日これをつけて過ごしてもらいまーす!」


 そう言うと、阿舞野さんはニカッと笑った。


「えぇー、オレ、アクセサリーなんてつけたことないんだけど」


 そう、アクセサリーなんて色気づいた物は、陰キャのオレには無縁の物だ。


「だからやるんだよ。これチェーンの長さ50cmのやつだから、ゆらっちがシャツの中につけてても目立たないよ」


 そう言って阿舞野さんはオレの制服のネクタイに手をかける。


 戸惑っているオレのネクタイを取ると、阿舞野さんは続けて「シャツの上のボタンはずすよ」と言った。


 阿舞野さんの細い指が、オレのシャツに触れる。


 まるで恋人に着替えさせられている感じだ。


 彼女の顔が近い。


 ボタンを外すと、阿舞野さんは今度は背後に回った。


 前に手を回し、オレにネックレスをつける。


 首の後ろで留め具を繋ぐと「できたよ……」とオレの耳元で囁いた。


 彼女の吐息が耳にかかる。


「あ、ありがとう」


 オレは反射的にお礼を言った。


「さっ、これ一日つけて、レディースのネックレスつけてること周りにバレないか、ゆらっちもドキドキしながら過ごして!」


 阿舞野さんはオレをいたぶるように笑った。


 彼女はSっ気もあるのかもしれない。


 ◇ ◇ ◇


 授業中、ふだんは無い首についている異物が、やはり気になった。


 隣の席の阿舞野さんへ目を向けると、ニヤニヤと笑みを浮かべ、オレに視線を送っていた。


 学校一の美女とも名高い彼女の私物が、自分の首にひっそりとある。


 そのことを周りの男子は誰も知らない。


 だから周りの目も気になった。


 バレたら、由良ゆらのヤツ急にオシャレに目覚めたみたいだぜ? って思われそうだな。


 そんなことが頭の中を巡り、矛盾した言い方かもしれないけど、オレは静かに興奮していた。


 異性のものを身につけるって確かにドキドキするな。


 阿舞野さんとオレが細い鎖で繋がっている、そんな感じがした一日だった。

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