小さな同居人
「とは言ったものの……」
「早速行こうぜ! ではなかったのですか?」
「うん、なんだけど」
「なんですか」
「ちょっと俺の部屋来て」
「なんですか」
「分かってるだろ」
「流れでいいのではないですか?」
「普通そんな流れ来ないだろ」
◇
「前世の記憶あるの知ってるって言っていいかな?」
「お好きにどうぞ」
「言うと思ったー」
「もちろん、私が教えたなど言ってはいけない事は分かっていますよね」
「当たり前だろ」
だめなんだ。
「分かっていないではないですか」
えへへ。
「気持ち悪い人ですね」
ひどい。
「本来の私を知っているのは、あなたとサラだけなのですから」
そりゃそうか。
「私の事を言わなければ、言っていいですよ」
「俺の能力で分かったー! とかでもいいの?」
「いいですよ。ボロが出なければ」
出そ~。
「では行きましょうか」
待て待て待て。
「前世って何歳くらい?」
「自分で聞いて下さいよ」
「知ってるくせに」
「そうですね、一つだけ教えても良いでしょう」
何々何?
「あなたの世界の前世持ちではないですよ」
え?!
「やはり、勘違いしていましたか」
「あなたの世界だけが世界ではないのですから当然でしょう」
「どこの世界?」
「聞いたって分かるわけないでしょう」
「ケチ」
「は?」
すみませんでした。
「自分で聞いてください。それもまた楽しいのではないですか?」
確かに。
「よし! じゃあ今度こそ行くか!」
◇
「喜べ~!」
嬉しいお知らせをするべく、手を広げて居間に入った。
「小さいのにクリスちゃんはクウちゃんの面倒見て偉いね~」
「そんな! 当然の事ですわ!」
クリスがソファの上で、ライの膝に座り抱き着いている。
ライはライでクリスの頭をなでなでしている。
「ぼくはリリーちゃんが好きです」
「ホントー?! ありがと! 私もクウちゃん好きだよ~」
クウガもソファの上で、リリーの膝に座り、あろうことかリリーの胸の谷間に顔をうずめグリグリしている。
おい、そこ代われ。
いや、違う。そうじゃない。
「なんか……随分仲良くなったな」
「オリ兄様!」
「オリ兄ちゃん!」
俺を見るやいなや、二人ともソファからぴょんと降りて俺に抱き着いてきた。
お、おう。いいな。
「さすがにオリには敵わないね〜」
「オリ大人気で羨ましいわ」
「そんな事ないです! お二人も好きです!」
「ぼくも!!」
うんうん。まぁ、好きな人は何人いてもいいよな。
別に嫉妬なんかしてない。
「いいお知らせでもあった~?」
「あっ! そうだった。オーナーが二人ともここにいて良いってさ!」
「本当ですか?!」「やったー! オリ兄ちゃんと一緒だー!」
「おう! ただし、俺の部屋に住むことになるから狭いけど。いいか?」
「もちろんです!」
「ぼく、オリ兄ちゃんと寝るー!」
「たまにならな」
クウガを押しつぶしそうだから。
「え~!!」
でも喜んでもらえたようで良かった。
「ってなわけで、これからよろしくな」
「はい!」「うん!」
「ライもリリーも騒がしくなるけど、ごめんな」
「なんで謝るの~? 賑やかで楽しいよ~」
「そうよ! 謝ったりする必要ないから!」
「ありがとう」
「ありがとうございます!」
「ざいます!」
「たまに、俺の部屋に来て寝てもいいしさ~」
「行かせていだだきます!!」
クリスが秒で返事をしていた。
前世の記憶があると思うと微妙な気分になる。
何歳なんだろうか。
「今日にでも行かせていただきます!」
「いいよ~、おいでおいで〜」
「私の部屋にも来ていいわよ」
「ぼくリリーちゃんの部屋で寝る~」
「おいでおいで」
初日から二人にとられた。
「良かったな二人とも」
「はい!」「うん!」
二人ともはしゃいでいる。元気になったようで良かった。
「さて、と。一緒に暮らす事になったわけだし、買い物にでも行くか」
二人とも寝間着みたいな白い服を着ている。
シルクのような、良い感じの布でできている。
「ぷっ……」
「なんだよ」
「良い感じの布」
ツキが小さい声で俺の表現を馬鹿にした。
(馬鹿になどしていません)
「買い物嬉しいです!」
「ぼく探検したい!!」
「よし、行こう行こう」
「子供用の服、案外高いわよ」
「え? そうなの?」
「俺たちも出そうか~」
「いいよ、俺が面倒見る子達だし」
「遠慮しなくていいわよ」
「なんとかなるから大丈夫だよ」
なんとかなるよな?
(なんとかしましょう)
頼もしいぜ、お母さん。
(誰がお母さんだ)
「私たち、お金なら持ってます!」
え?
「ぼくもー!」
ええ?
そういうと、クリスとクウガは空間をごそごそし、お金をとりだした。
「「「ええっ?!」」」
それって。
「え~? もしかして二人ともアイテムボックスあるの~?」
「ライ君、アイテムボックス知ってるんですか?」
ライ君て。
「クリス、ライの事『ライ君』って呼んでるの?」
「はい。いけなかった……でしょうか?」
「俺が『ライ君』って呼んでって言ったんだよ~」
う~ん、君呼びの発想はなかった。さすがライ。
「ライ君なんでアイテムボックスの事知ってるんですか?」
「オリも使えるから」
「オリ兄様、アイテムボックスが使えるのですか」
クリスが驚いた顔をする。
「うん、小さいけどね」
今の所は。もっと大きくする予定だけど。
「さすがオリ兄様です! なかなか人間で使える者は少ないですよ!」
「そうなんだ。それはラッキーだったな」
クリスもクウガも俺をキラキラした目で見て来るが、君たちも使えるんだから一緒だよね。
「私たちの服や日用品はこちらで購入してください」
すごい大金が入っている。
「ど、どうしたのコレ?」
「両親が何かあった時の為にと、用意してくれてました」
「ぼくもー!」
クウガも凄い大金を持っている。
「ここにいる誰よりもお金持ちね!」
「だね~。優しいご両親だね~」
「はい」「うん!」
「でも、他の人にはこんな風に見せちゃダメだからね!」
「もちろんです! 皆さんだったので、お見せできただけです!」
「使っていいのかな?」
急に心配になる俺。
「もちろんです。こういう時の為のお金ですから」
「いや、俺が払うよ! ……と言いたい所だけど、俺達も駆け出しの冒険者だからご両親に甘えてもいいかな」
「もちろんです! 甘えているのは私達なのですから」
「よし! じゃあ、買い物行くか!」
「はい!」「うん!」
「ではまた次回」




