ドラゴンからのお願い
「あらためまして、今回は本当にありがとうございました」
「どういたしまして」
「私の名前はクリス。弟は」
「ぼくクウガ!」
「クウガ、『です』までちゃんと言わないといけませんよ。気を抜くとすぐに地が出てしまうんだから」
「です!」
「もう知ってると思うけど俺の名前はオリ・ジナル。二人ともよろしくね」
「はい!」「あい!」
クウガ君の方が歳相応って感じだよな。
「クリス……ちゃんはしっかりしてるねー」
「『クリス』とお呼び下さい」
「いいの?」
クリスの場合は『クリス』呼びの方がしっくりくるから、本人から言われると助かるな……
俺はこんな幼い子に何を言わせてるんだ。
(クリスは前世の記憶持ちですよ)
「はっ?!」
「どうかされましたか?」
クリスが不安そうにこちらを見ている。
しまった、あまりの衝撃に声が出てしまった。
「な、なんでもないよ~」
前世の記憶があると言われても納得してしまう。
それくらいクリスはしっかりしている。
「二人ともお父さんとお母さんはどうしたんだい? 一緒じゃないのかい?」
俺、話し方へたくそだな。
(聞いてて恥ずかしいです)
うるせー。
「私たちの両親は……家にいます」
「そうか! じゃあ、親御さんの所に行けば大丈夫だな」
「いえっ! いません!」
???
「え~っと、どっちかな?」
「家にいますけど、家にはいません」
むずかしー。
「ごめんな~。お兄さん頭がちょっとよくないから、ちょっとどういう事か分からないな~。もうちょっと詳しく教えてもらえるかな?」
(ちょっと、ちょっとちょっと)
うるせー。ちょっとって何回も言って悪かったよ。
(確かに頭がちょっと? 悪い話し方ですね)
うるせー。
「……家にいますけど、私たちの家じゃなくなっています」
う~ん、複雑そうだ。
「親御さんの所に行ったり、迎えに来てもらったりは難しいのかな?」
「家には戻れません」
「ぼく、おウチ帰れない……」
「え……じゃあこれからどうするんだい?」
「……オリ様! お願いです!! 私達をオリ様と一緒にいさせてください」
突然、クリスが椅子から降り、土下座をした。
クウガはクリスが土下座するのを見て、同じように真似をして土下座をした。
「ちょちょちょ、待て待て待て」
どうしたどうした。
「小さい子が土下座なんてしちゃだめだよ」
慌てて、二人を立たせようとする。
「お願いします! どうか! どうか!」
何を思ったか、土下座では足りないと思ったのか、クリスが寝下座をした。
「やめてやめて、汚いから」
クウガはまたしても、クリスが寝下座するのを見て、真似をした。
俺の目の前で、小さな子供が二人、うつ伏せになっている。
「待って待って。とりあえず起きよう。話しはそれからだ。な?」
クリスがのろのろと座った。
クウガはまだうつ伏せのままだ。
「起きなさい、クウガ」
そういうと、クリスはクウガの背中を踏んずけた。
おいおい。
クウガはけらけらと笑いながら起き上がった。
それは普通のスキンシップなのね。
「えっと、どういう事かな?」
「私達は帰る家をなくしました」
「えぇ……」
「命からがら家から逃げて、森を彷徨い、なんとか人間がいる街にたどりつきました。しかし、弟が深手を負ってしまったのでパーン屋の裏で隠れていました」
何があったらそんな状況になるんだ……。
「このまま命が尽きるのかと思い、せめて最後にパーンの良い香りに包まれたなら、良い旅立ちができるのかと」
子供だよな?
(前世の記憶がありますからね)
「家から逃げて来たのか?」
「家を……乗っ取られました」
「ええっ?!」
そんな事あるのか?!
「なのでオリ様! オリ様は私達の希望なのです! パーン屋の暗がりで死ぬところを救っていただいたのです。このままオリ様のお側を離れてしまったら、また命の危機が訪れます。勝手だとは思います。オリ様にとって、何の得もありません! 分かっています! ですが! ですが! 一度命を諦めましたが、やっぱり諦めたくないのです! 弟達と3人で健やかに暮らしていきたいのです!」
「弟達?」
「私達は三つ子なのです」
何ぃ?! おい、ツキ! お前双子って言ったよな?!
(さすがに対象が近くにいないと、つながりは分かりませんよ)
それもそうか。
「三つ子って、ドラゴンだろ? 凄いな、そんな事あるのか?」
「数百年前にはあったそうです」
あるんだ。
「私、はぐれてしまった弟、そしてクウガと逃げてきました。はぐれた弟の名はシオンといいます。もしかしたら追手に捕まったのかもしれません」
物騒だな。
「一体何があったんだ?」
「その話をすると、オリ様に危険が及ぶかもしれません」
やばそうだ。
「ですが! それでも、オリ様のお側になんとかいさせてください」
「治安維持隊とかに行ったら、俺の所なんかよりもっと安全だと思うよ」
「そんな所に行ったら、終わりです」
「治安維持隊に詳しくないから、あれだけど。そんなに行きたくないのか……」
「やだやだ~、オリ兄ちゃんの側がい~いっ」
うぐぅ。
「俺の側って言ったって、特に良い事もないと思うぞ?」
「良い事はあります!」
そうなの?
「安心とやすらぎ、そしておいしいご飯。何よりもオリ様のオーラは他に類を見ない輝きを放っています」
そうなの?
(そんなものはありません。地味色のオーラです)
そうですか。
「まぁ、そう言って貰えるのは嬉しいけど、子供の面倒とか見た事ないしな……」
(なにせ童貞でしたからね)
うるせー。
「大丈夫です! 大体一人で何でもできます! ご迷惑はおかけいたしません!」
う~ん、この圧たるや。
「分かった分かった。オーナーからOKが出るか分からないけど、これも何かの縁だしな」
「オリ様!!」
「オリ兄様だろ?」
「お兄様!」
「じゃあ、一緒に住んでみるか」
「オリ兄様!」
クリスが俺に抱き着いて来た。
ふぐぅっ。
可愛い見た目に反して重いタックル。
「お、おお」
クリスが俺に抱き着いたのを見て、クウガも俺に抱き着いてくる。
ふぐぅっ。
今の俺でなきゃ吹き飛ばされちゃうね。
「お、おお」
可愛いすぎるにも程があるとはこの事か。
二人の頭をなでながら、嬉しそうにしてくれる二人を見て、これからどうするべきか悩む俺だった。
「クウガ、そこは股間に近いからグリグリ頭を押し付けるんじゃありませんよ」
小さい子供が言うセリフではない。
あと、恥ずかしい。
(ではまた次回)




