ドラゴン姉弟
「とりあえず治安維持隊に行けばいいと思うわよ」
なるほど治安維持隊か。
「それにしても初めて見たわドラゴニュート」
そうなの?
「リリーでも珍しいのか?」
「あはは! 私をなんだと思ってるの?」
「や、何でも知ってるって感じだから」
「私だけじゃなくて、ドラゴニュート見たことある人の方が少ないわよ」
そうなんだ。
「この辺りにいるんじゃないのか?」
「聞いたことないけど」
なにぃ?!
俺はすぐさまツキを見た。
お前、この辺りにいるって言ってただろ。
(言いましたが、周知の事実とは言っていません)
確かに。
「へー、そうなんだ。なんか勝手にこの辺りにいるかと思ってたわ」
「オリって頭打ってからなんか変わったわね」
ギックゥ!
「ぇへぇっ? ど、どかごぁ?」
「なんて?」
「ど、どごが? いや、どこが?」
「う~ん、なんだろ? 一般常識を忘れてるというか? 初めて知りました、みたいな感じが凄い出てる」
冷や汗出てきた。
「そっかぁ。そんなつもりなかったけど、頭打ったせいかなぁ?」
秘技! すっとぼけの術!
(しょーもないですね)
そうですね。
「あと、ツキちゃんにちょっと横柄になったよね」
ええ?!
「そ、そんな事ないよなぁツキ!」
「そんな事あるわよねぇ、ツキちゃん」
コクコク。
コクコクじゃねぇ。
「嘘だぁ」
それはないよ……ないよな?
あとでゆっくり考えよう。
「それはそれとして、ドラゴニュートが珍しいって事は治安維持隊に連れてったらどうなるんだ?」
「……そう言われると、想像がつかないわね」
「保護してもらえたり、ドラゴニュートの里……があるかわからないけど町とかあれば連れてって貰えるとかならいいけど、治安を守る為~とか言って変な事されないよな?」
……
リリーと二人で腕組みをしながら首を捻る。
「どうしよ」
「とりあえず、ドラゴンちゃんたちが起きてから考えたら?」
「そうだな。別に慌てる事もないだろう……し?」
親御さんとか心配してるか?
でも治安維持隊に行くとも考えられないしな。
「よし、寝よう」
◇◇
「う~ん……」
あ~、ひんやりしてて気持ちがいいな。
触り心地が良い。
ずっとさすさすしてたい。
あ~……なんだろ、コレ。
この世界にこんなのあったっけ?
なんだ?
朝の光がカーテンの隙間から射している。
やっぱりカーテンはナチュラルホワイトですよね。
優しい光とはいえ、寝起きには眩しい。
「う~ん……もう朝か。早いなぁ」
手がひんやりしている。
「夢じゃなかったのか?」
手の方を見ると、青くうずくまるボール。
ボール? ボールにしてはサイズが大きいな。
「え? ドラゴン弟?」
どうしてここに?
「キュイィ」
「おお、おはよう。どうしたこんな所で」
可愛く丸まりおってからに。
「俺に踏まれなかったか?」
「キュ」
うん、分からん。
「姉ドラゴンはクッションかな?」
いない。
「あれ? 姉ちゃんいないぞ。どこ行った?」
「キュ」
うん、分からん。
「とりあえず、居間行くか」
ドラゴン弟を抱き、顔と顔をスリスリしながら部屋を後にした。
あー、可愛っ! 癒される。
◇
「おはよう~」
ダイニングテーブルに赤い髪の女の子がいた。
「おはようございます」
女の子が、まだ子供だというのに丁寧に挨拶をしてくれた。
え……?
俺の腰よりも背の低い子にお辞儀をされてしまった。
慌てて、しゃがみ俺も挨拶を返す。
「おはよう」
女の子が輝く笑顔をくれた。
眩しい! こんな所にも朝日が!!
「もしかして……」
「その節はお世話になりました」
「いえいえ」
「おかげ様で私も弟も助かりました」
「なんのなんの。治って良かったよ」
「もうダメかと諦めていましたが……」
「ちょっと待った。君は昨日のお姉ちゃんドラゴンで合ってる?」
「はい」
すんごいスラスラ話すね。
「暖かいお風呂、食事、寝床をご提供していただいたので、すっかり体力も回復し、人間体をとる事ができました」
「そっかそっか」
人間体になれたって言ってるけど、どう見ても5歳くらいなんだよなぁ。
なんでこんなにしっかりしてるんだろ。
ドラゴンって皆こうなのかな?
こう見えて35歳とか?
異世界あるあるの、実年齢と見た目年齢のズレね。
「クウガ! いい加減オリ様に甘えてないで、あなたもお礼をいいなさい」
オリ様?!
瞬間、俺の腕の中にいた弟ドラゴンが人間に姿を変えた。
青い髪の男の子だ。
「もっとオリ様の側にいたいぃぃっ!」
オリ様?!
クウガと呼ばれた子が俺のほっぺにほっぺを当ててスリスリしてくる。
うん、可愛い。
そう! 今更だが人間体になっても可愛いいな二人とも!!
「じゃなくて! オリ様って何?」
「え……? オリ様……ですよね?」
手のひらで俺を指す。
「お、おおう。俺はオリだよ」
ほっとした顔をする女の子。
「じゃなくて。オリは合ってるんだけど『様』がおかしいってこと」
「私たちの命を救ってくださった方に『様』をつけないで誰に『様』をつけるのですか?」
いやいや。きょとん顔も可愛いけどさ。
「『様』はやめような」
「はい、オリさま」
ひらがなにした所で一緒だよ。
「可愛い言い方の『さま』もやめようか」
「ではなんとお呼びしたら……」
こんなに小さい子が困った顔をしている。
「そうだな……ごほんごほん」
(わざとらしい咳払いですね)
うるせー。
「お兄ちゃん……とか?」
俺、一人っ子だったからな。
「オリ兄ちゃん!!」
さっそく、呼んでくれた。
おお~~……こんな気分になるのか。いいな。
「クウガ! そんな慣れ慣れしくお呼びしてはいけません」
「俺はお兄ちゃんって呼ばれたいから、様より嬉しいよ」
またしても困った顔をしている。
「オリお兄様?」
「まだ固いな~」
「オリ兄様でお許しください」
許す! 可愛いから!!
「分かった。様はいつでもやめていいからな」
女の子の頭を撫でる。
「ずるい! ボクも!」
なんかめっちゃ好かれたな。もの凄く嬉しいけど。
「はいはい」
男の子も撫でてあげた。
二人とも非常に満足そうだ。
俺も満足だからとても良いね。
(あなたは何をしているのですか)
は?! デレてた!
「見てた?」
(かつてない程、鼻の下が伸びてましたよ)
それは気持ち悪そうだ。
(ご存じでしたか)
はい。
(朝食の用意ができましたから食べましょう)
はい。
(ではまた次回)




