くだらない話(馬)
「よし! ドラゴニュートを見に行こう!」
「死にますけどね」
え?
「では行きますか」
待て待て待て。
「なんでしょう」
いや『きょとん』じゃないよ。
「ドラゴニュートを見に行くのでは?」
「死ぬって何?」
「生命がなくなることですね」
そうじゃない。
「生きる機能を失うことですね」
そうじゃないって。
「この私に『死』について問うた上、さらに否定するとは」
「じゃなくて! 死について問うたんじゃなくて! なんでドラゴニュートを見に行くと死ぬんだよ」
「単純にドラゴニュートがいるエリアが今のあなたでは敵うはずもない、強いモンスターだらけだからですね」
……
「どうしたのですか? 四つん這いになって。乗ればいいのですか?」
「どっこいしょ。じゃねーよ」
乗るな乗るな。
「早く進んでください」
……
「そもそもドラゴニュートを『見に行く』などと言っているあなたは行くべきではないでしょう」
あ~……それはそうだ。
「本当そうだわ」
「分かったら、早く進んでください」
降りないんだね。
「どこまで行けば良いんでしょうかね」
「居間まで行ってください」
はいはい。
「ハイハイしてるのはあなたですけどね」
そうですね。
「では、今日はギルドに行くという事で良いですか?」
ん~、そうしよう。
「おい、何してんだよ」
は?
サラが俺の前で仁王立ちしていた。
「馬になってるだけだけど」
馬になってるってなんだろうね?
「そんな事していいと思ってんのか?」
俺は思ってないよ。
「ツキ、言われてるぞ。早くどけよ」
「ツキさんに言ってるわけねーだろ」
俺かよ。
「俺に言ってるなら、いいと思ってるわけないだろ」
お前もいい加減どいてくれ。
なんで、馬のままサラとやりあってんだ俺は。
「じゃあ、なんでツキさんがお前なんかを馬にしてんだよ」
「知らねーよ、勝手に乗られてるだけなんだから」
「あーん! お前自慢かよ! いい度胸してんなぁ!」
「どこに自慢する要素があるんだよ!」
もう本当に降りろよ!
あと、クソ重いし。お前は石でできてんのか。
振り落としたいのに、降ろせない。
「むしろ代わってくれ!」
「え?! いいのか!」
嬉しそ~。
「ダメな理由ないだろ」
「どうぞ、ツキさん乗ってください!」
俺の隣でサラが四つん這いになっている。
なんなのこの状況。
「オリ、早く進んでください」
続けるんかい。
ツキが両足で俺の胴体を叩く。
進まねーよ。
「サラに乗れよ」
「嫌です」
「ツキさん! こっちのが乗り心地いいですよ!」
「嫌です」
サラが眉をハの字にして口を尖らせる。
俺を睨むな。
「なんっで! そいつは良くて私はダメなんですか!!」
サラが馬をやめ、床を叩いて悔しがる。
何この馬争い。
「そういうところですよ」
「ツキさぁん……」
「求めるのではなく、求められる馬になりなさい」
求められる馬って何?
「あなたですよ」
俺?
「やはり、馬になるのを嫌がる相手でなければ馬は務まりません」
「深いっす、ツキ先輩」
1mmも深くないだろ。
「先輩と言うなと言っているでしょう」
「すんませんっした!」
「さ、行きますよ。オリ」
へーへー。
俺はツキを乗せて、居間まで行った。
ライとリリーに笑われた。
◆
「おい、弟子。ちょっと馬になれ」
「馬とは?」
「四つん這いになるんだよ」
「四つん這い? こうですか?」
「ふむ」
「?」
「確かに嫌がらない馬には乗りたくないな」
「?」
「やっぱ深いぜ」
「?」
◆
「馬乗りしてる人って久々に見た!」
リリーが手を叩いて笑っている。
「ツキちゃんは軽いから馬乗りもできるね~」
いや、クッソ重いけど。
「なんかほのぼのしていいわね」
「ツキちゃん俺にも乗る~?」
「オリは私を乗せてよ」
何この人達。
ツキがライの所へ行く。
行くのかよ。
「オリよりは安定感があると思うよ〜」
「休日のお父さんと子供って感じね」
「確かに」
「じゃあ、オリ。よろしく」
「乗せないよ」
「なんで?!」
「子供相手ならまだしも、いい年した奴が馬なんてやりたくないだろ」
「いるけど」
ライを指差すリリー。
「いるね」
「ツキは子供みたいだから分かるけど、リリーはダメだろ」
同じ歳の男女が馬乗りって……うん、ダメだ。
「は~?」
「あと、重いだろ」
ゴツッ。
殴られた。
「すみませんでした」
「女の子に対して重いは絶対ダメだからね」
はい。
「できればグーも絶対ダメな方向で」
「何?」
なんでもないです。
「おい……なんだよこれ」
また面倒なのが来た。
「なんで、ツキさんライに乗ってんだ?!」
「微笑ましいわよね」
サラが眉をハの字にして口を尖らせる。
なぜ俺を睨む。
「ちくしょー!」
サラが自分の部屋に走っていった。
◆
「おい、弟子ぃ! 馬になれ!」
「四つん這いですか?」
「そうだよ!」
「はい」
「やっぱり嫌がらない馬には乗りたくない!」
「?」
「ライみたいに喜々として馬になる方がまだいいのか?」
「?」
「くっ! 私みたいに必死なのはダメなのか!」
「?」
「はぁ……お前もさ、ちょっとは馬になる事に何か思えよ」
「何かとは?」
「馬になることに喜怒哀楽を出せって事」
「馬に喜怒哀楽?」
「そういう所だぞ、ちゃんと修行しろよ」
「馬の?」
◆
「お前が思いつきで俺を馬にするから面倒くさくなったじゃねーか」
「私はそこに馬があったので、馬に乗っただけです」
「それっぽく言ってんじゃねー」
じゃあサラに乗ってやれよ。
「あれは馬ではありません」
どういう事?
「馬の形をしていても、自我があるものは馬にはなれない」
俺がいつ、自我をなくしたんだよ。
「サラは欲まみれだったので、乗らなかったのです」
なるほどね。
「馬になるためには、純粋でなければならないのです」
あっそ。
「ではまた次回」
くだらね〜。
くだらない話しを書くのが止まらない時があるので、くだらない話は分かるようにしていきます。
境目どこよって話しですが。




