今後の予定
「おかえり! どうだった?! ダンジョンあった?」
帰宅早々、リリーに聞かれた。
「あったけど、ひどい目にあった」
「初心者用ダンジョンなんだよね~?」
「敵は弱いんだけどね……たぶん初心者用ダンジョンで間違いないと思うよ」
まともに戦ってないから実際のところは分からないけど。
「弱いのにひどい目にあったの?」
「不快の極み。二度と行きたくない」
「なんで~?」
「蟻んこダンジョンだった」
「何それ」
「こんくらいのサイズの蟻がぞろぞろぞろぞろ」
「へ~、でも弱いんでしょ?」
うわ~、リリー平気そ〜。
「俺は嫌だな~」
「だよなだよな!」
「えー、1回行ってみようよー!」
「行くならフェスいた方がいいと思うぞ」
「そうなの?」
「数が多すぎるから、剣とかクナイとかで戦ってたらキリないからな」
もちろん、弓矢も。
「でも弱いんでしょ」
「うん、2階と1階にしか行ってないけど何もしてこない」
と、思う。本当にただただ不快なだけ。
「え? 2階層行っただけなの?」
「うん」
「さすがにそれは……」
「行ったら分かるって! ホント無理」
「凄く気になる~。ライ、やっぱ行こうよ~!」
「他にも初心者用ダンジョンはあるんだから、やめよ~」
「そうだけどさー」
こうして避けられ、冒険者が来なくなり存在を忘れられるわけね。
「おー、戻ったか。楽勝だっただろ」
サラがどかどかとやってきた。後ろにはしっかり弟子もいる。
「最悪だった」
「あん?」
「2階層だけ攻略して帰ってきたんだって」
「あははははは! マジかよお前! 何しに行ったんだよ!」
「ピクニックだな。ツキの作った弁当を食べて、ちょっと寝て帰ってきた」
「お前、今なんつった?」
「冗談だよ」
「何が冗談なんだよ」
「『ピクニック』が冗談だよ。2階層行って、外で弁当食べただけ」
「そんな楽しそうな事すんなら、声かけろよ!」
「ダンジョン攻略に行ったんだよ」
「弁当は食うつもりだったんだろうが」
「あ〜、弁当が食べたかったわけね」
「お弁当なら私が作りますよ」
フェスってたくあんぬ以外も作れるのか?
「ツキさんの弁当が食べてぇんだよ!」
「嫌」
「そんな事言わずに! ピクニック行きましょうよー!」
敬語になっちゃってるぞ。
「ツキさん、サラ様がこう言ってますし、なんとか作っていただけないでしょうか」
「嫌」
「弟子、いいんだ。やめろ」
「しかし」
「いいっつてんだろ!」
「はい」
「ツキさん、気が向いたらピクニック行きましょうね〜」
「嫌」
サラが眉をハの字にして口を尖らせ、ツキがプイッと横を向く。
「弟子、戻るぞ」
「はい」
サラとフェスがサラの部屋へ戻っていった。
「弟子になったって本当だったのね」
「既に師匠と弟子が板についてるよな〜」
あれは、師匠と弟子なのか?
ヤンキーとパシリにしか見えないが。
◇
「ちょっとサラに冷たすぎないか?」
「あの子にはあれくらいで大丈夫です」
「ピクニックくらい行けばいいだろ」
皆で行けば楽しそうだし。
「それならいいですが、あの子の言う事を聞くと調子にのりますので」
確かに調子にのったら面倒くさそうだ。
「冷たくされるのを好むタイプなので、放っておけば良いですよ」
サラが〜?
「もちろん人は選びますよ」
「それが、ツキってこと?」
「強者に弱いのです」
「ツキはサラより強いんだ?」
「ふっ」
鼻で笑われた。
「当たり前過ぎる事を言われると、笑ってしまうものですね」
性格悪いだけだろ。
「は?」
なんでもありません。
「じゃあ、サラができることは、お前もできるのか?」
「その質問をされること自体がナンセンスです」
あっそ。
「じゃあ、サラみたいに異世界を渡れるのか?」
「渡れますん」
どっち?
「さぁ……どっちだと思いますか?」
「なんでそこ濁すんだよ」
「その方が面白いかなと思って」
あっそ。
「おや、もう聞かなくて良いのですか?」
「絶対言わないやつだろ。
それにちょっと聞いてみただけだし」
「もっと聞かれれば答えていたかもしれませんよ」
「いいよ、別に。食い下がる内容じゃない」
「ほほう」
「なんだよ」
「いえ別に」
「そんな話したいんじゃなかったんだった」
「明日は何にしましょうね」
「サンドウィッチ」
「お昼のメニューを聞いたわけではないですよ」
知ってるよ。
「まぁ、でもせっかくなのでサンドウィッチにしましょうか」
やったー!
「こうしていつも話がズレて行くのですよ」
そうですね。
「そもそもサンドウィッチという料理名はないのですから、気をつけてください」
「それをいうなら、お前だってこの間『唐揚げ』とか言ってただろ」
「「……」」
「二人だけの場合はよしとしましょう」
そうしよう。
「明日はまたギルドに行って、モンスター狩りながら魔法練習でもするか」
「手堅いですね」
「お金溜めて旅行行きたい」
「この間行ったではないですか」
「遠出したいんだよ」
「ほほう」
「俺は忘れてないぞ」
「何をですか?」
「この世界は人種がたくさんいるってな!」
「そうですね」
「エルフとか」
「この辺りにはいませんね」
「フェアリーとか」
「この辺りにいないこともないですね」
「ドラゴニュートとか」
「この辺りにいますよ」
「え……?」
「なんですか?」
「いるの?」
「いますよ」
「見た事ないんだけど」
「いる所に行かないからですね」
「あ、そんな感じ?」
「そんな感じですね」
「行きたいんだけど」
「どうぞ」
「いつ行こう……」
「ではまた次回」




