蟻退治(ボス部屋)
「この扉の先には……きっと蟻がいるんだろうなぁ」
大きいサイズならいいな。
斬ればいいだけだから。
「小さいのは勘弁して下さい」
祈るしかない。
「祈るよりも対策を考えた方が良いのでは?」
そうですね。
「大きいサイズなら一刀両断する」
「頼もしい顔をしていますね」
そう?
「小さいサイズなら?」
考えたくない。
「情けない顔をしていますね」
うん。
「ぷふっ……」
笑うなよ。
「あなたの顔芸に弱いようです」
そういうあなたの顔芸もなかなかのもんですよ。
「考えたくなくても考えなくては。入ったら悠長な事は言ってられませんよ」
そうですね。
「部屋のサイズにもよるけど、四角い部屋で中央とかにいると爆散の効果がいまいちな気がするんだよな」
「そうですね」
「凍らせるか?」
「できるならどうぞ」
「やった事ないからな」
大丈夫だとは思うけど、爆散ほどの自信はない。
「あ、吸うってのはどう?」
俺には風魔法があった。
「あなたの風魔法、吸引して手で掴んでましたよね」
そうだった!
「うわっ! 蟻の大群が俺の手に来る想像をしてしまった」
「気持ち悪い映像見せないでください」
すみませんでした。
「袋とかに入れるか」
「持っているんですか?」
持ってないね。
「アイテムボックスがあるから、袋なんか持ってないぞ」
袋入れとけば良かった。
アイテムボックスは順調に大きくなってるから油断してたわ。
「あ!!」
「どうしました?」
「俺、天才かも」
「それはないので安心してください」
はい。
「すっごい良いこと考えた」
「どうするんですか?」
「秘密!!」
これぞ幸運&天才のなせる技!
「楽しみにしてて」
「急に興奮していますね」
「行けるハズ! 大きい蟻でも小さい蟻でもどんと来いや!」
◇
ドン!!
「『どんと来い』とか言ったせいで、本当に『ドンッ』と来た」
俺の目に涙がたまっている。
「気持ち悪すぎだろ……」
「蟻さん、合わせ技でしたね」
目の前には巨大な蟻がいた。
体長5mくらいはある。
これだけ大きいと怖いっちゃ怖い。
けどこのサイズなら一刀両断する気にもなる。
だが問題はサイズじゃない。数だ。
これまで倒してきたサイズの蟻が無数に集まって、巨大な蟻を形作っている。どこかの海のお魚さんかよ。集合体恐怖症なわけではないと思うがこれはキツイ。漫画とかアニメとかだったら、モザイクだろう。
それが実際に目の前にいるとか、泣いてもおかしくないよね。
「あ~……どうしよ」
「秘密の攻撃はできそうにないのですか?」
「あ~……そうだった。秘密の攻撃な」
なんちゃって巨大蟻は俺の目の前でゆらゆらしている。
攻撃をしてくるというわけではないようだ。
俺的には倒れ込まれただけで、失神しそう。
「失禁しないでくださいね」
残念ながら『しない』とは言えない。
「汚」
まだしてませんから。
「ちょっと距離とろう」
なんちゃって巨大蟻からできるだけ離れる。
離れるといっても、3mから4mになったくらいだけど。
慌ててアイテムボックスを探る。
「どこだどこだ……」
出しておけば良かった。
「慢心していましたね」
はい。
「あったあった」
頼むぞ、俺の秘蔵っ子。
「おらよっ」
まずはなんちゃって巨大蟻の足元に1個。
バリンッ!
続きまして、その斜め後ろにも投げる。
「あらよっ」
バリンッ!
さらに、その斜め後ろにも投げる。
「そらよっ」
バリンッ!
「よし、良い感じ! まだまだ行きますよ」
バリン! バリン! と快調に投げ続け。
「最後、遠投行きまっす!!」
部屋の角に3個くらい秘蔵っ子を投げてやった。
「ふ~……やりきった」
夢中で投げていたせいで、ちょっと落ち着いた。
「どんな感じかな?」
なんちゃって巨大蟻の動向を見守っていると、ゆっくりと足元から巨大蟻のフォルムが崩れていった。
「お~……行け行け」
思いの他、予想通りで嬉しい。
「もっといるかな?」
ちょっと心配になったので、部屋の角にもう5個くらい投げてやった。
「いいねいいね」
蟻の大群が行進しまくっている。
「おえ、気持ち悪」
でも俺の方に来てるわけではないので一安心だ。
「まだ売ってなかったのですか?」
「そう、なんやかんやで売るの忘れてたんだよな」
『栄養価の高い蜂蜜』
そう、ソパールダンジョンでドロップしたアイテムだ。
サラ騒ぎでドロップアイテムを売る暇がなく、なんやかんやしててアイテムボックスにしまい込んでいたのだ。
「蟻さんは蜂蜜を食べなさるから~。たんとおあがり~」
蟻達がボス部屋の角でとんでもない事になっている。
「蟻の山だな」
ありゃま~だな。
「随分余裕がありますね」
結構上手い事言ったと思ったんだけど。
「尊敬します」
嘘つけ。
「それで、どうするのですか?」
「爆散でもいいけど、せっかくだから凍らせてみるか」
蟻さんたちは蜂蜜に夢中だから。
「そのまま安らかに眠らせてやろう」
「そんなセリフ言って氷でなかったら、笑えますね」
そうだね。
「これは大丈夫」
なんかもう感じで分かるようになってきた。
場にも慣れてきたのか、蟻がこちらを見てないからなのか、凄く落ち着いてきた。
蟻の後ろから軽く深呼吸して、俺は氷魔法を放った。
「凍結!!」
思ったとおり蟻は氷づけになった。
「な! 大丈夫だっただろ」
「氷づけにしてその後は?」
「え?」
標本瓶に蟻が入っているようだ。
「あれ? これ消えないのか」
「凍結! って言ってましたから、凍っただけですね」
「普通、バリーンってならない?」
「これはならないようですね」
「は~~……爆散!!」
二度手間だった。
「ではまた次回」




