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蟻退治

 蟻。

 俺の記憶にある蟻は黒くて小さい6本足の昆虫。

 前世の子供の頃は蟻でよく遊んでいた。

 残虐非道な遊び。良い子は絶対真似しちゃダメな遊び。

 体育とか運動会で地面に座ってる時とか、蟻の手足を引き抜いたりしてた。

 足1本引き抜いても歩くかとか。

 じゃあ、手もいけるかと引き抜いてみたら身体がバラバラになったりとか。

 なんとか身体をバラバラにしないようにしようとこころみたりして。

 中学生くらいになったら、そんな遊びもしなくなったけど。

 ある時読んだ漫画で蟻に復讐される話しがあって、それからビビリだした。

 俺も蟻に復讐されるのではないか。

 考えてみれば、あの小ささだ。

 耳の中とか鼻の穴とかから侵入され、ガサゴソされた日には……考えたくない。

 腕とか足とかこそばゆいなと思ったら、蟻が登ってた!! とかね。

 あと集団でもぞもぞしてたりとか見ると『ひいぃぃ』ってなる。


 そして現在。


「ひいいいぃぃ!」


 蟻だ!! 蟻の大群だ!!


「おええぇぇっ」


 吐いてないぞ。

 そんな気分ってなだけ。


「無理無理無理無理……」


 ソパールダンジョンの蜂はそこそこのサイズだったから怖くなかったけど、この蟻は大きいとはいえ、テニスボールサイズ。こんなんが大群でいるとか無理無理無理。


「ごめん! 逃げたい!!」


「では屋敷内まで戻りましょう」


 俺は走って逃げた。


 ◇


「尻尾を巻いて逃げるとはまさにこの事ですね」


 そうですね。


「我ながらなんというヘタレ」


「そうですね」


「……」


「なんという情けない顔をしているのですか」


「右にしようかな……」


「お好きにどうぞ」


 でも右も蟻だったら同じだよな。


「よし、まずは考えよう」


 せっかく安全地帯がすぐ近くにあるんだ。


 ……助かるぅ……。


「こういうのが初心者にはいいって事かな?」


「それもあるでしょうね」


「はぁ……閉鎖的な場所で大群ってキッツイな」


 剣では対応しきれないからな。


「やっぱ魔法か」


「無難ですね」


「焼くか」


「無難ですね」


「無難が一番!」


 まとめて焼きたい。


「ゴブリン相手の火力より上げていかないとな」


 昨日確認したらレベル18になってたから。


「まとめて焼く火力は出るでしょう」


「まだ試した事ないけど、ぶっぱなしてみるか」


 周りに他の冒険者がいないのは助かるな。


「右に行きますか?」


「いや、左のままにする。逃げてもしょうがないからな」


 俺はこの試練を乗り越え強くなるぜ。


「はいはい」


 あしらわれた。


 ◇


「いる~」


 あいかわらずガサゴソしてる。


 こちらに気づいてないのはありがたい。蟻だけに。


「さっさと火魔法放ってください」


 はい。


「あいつらを焼いて一層するイメージだけはすぐできるな」


「蟻に復讐されると思って怯えていた人のセリフとは思えませんね」


 あのサイズは耳鼻口には入ってこれないからな。


「ただ、あの数がキツイ」


 洞窟の灯りが揺れ、蟻達のフォルムが見て取れる。


 意を決して、前へ進む。


「こっからなら大丈夫だろ」


「蟻は5m先ですけどね」


 うるせー。


「行くぞ! 爆散!!」


 野球のピッチャーよろしく、爆弾をイメージした火魔法を放つ。


 ドゴオォォンッ!!


 想像通りの火魔法が放てた。


「おっしゃぁ!」


 蟻が燃えている。


「きっつ……」


 燃やしたの俺だけど。


 地獄絵図のようになっている。


「来ますよ」


 爆散火魔法は成功したものの、蟻の数が多い為、後ろから何匹か蟻が出て来た。


「ぎゃっ!」


 燃えながらこちらに来る。


「うわわ……」


 身体が竦みそうになったが、燃えながらこちらに来た奴は俺に辿り着く前に燃えた。


「はあぁ~……」


「全て燃えたようですね」


「ビビッた~」


「びびったのは蟻の方でしょうけどね」


 蟻さんはビビる前に燃えたけど。


「見に行くか」


 恐る恐る蟻がいた方に近づく。

 近づく度に灯る灯り。


「この灯り助かるな~。お、なんか落ちてる」


 大量の蟻がいたからか、そこそこの数のアイテムがドロップされていた。


「コレなんだろ?」


 小さい透明のボールの中に粉が入っている。


「こればっかり落ちてるな」


「こんな時に攻略本なのでは?」


「お~、持ってて良かったってな!」


 どれどれ~。


 『ハンプレンドルダンジョンで入手可能なアイテム<ドロップアイテム>』


「あ、これだな『洞窟蟻』が落とす『鎮痛剤原料』

 『鎮痛作用を持つ薬が作れる』だってさ」


「では先へ進みますか」


「お、おう」


「進みたくなさそうですね」


「そんな事はあるが、俺は前に進むぜ」


「今の戦いを見る限り、何も問題はないようなので、あとは気持ちだけですね」


「そうだ。ここの蟻退治は爆散でいいとして、MPが持つかどうかだな」


「左手に聞いてみれば良いではないですか」


「教えてくれるかな?」


「さあ?」


「聞くだけ聞いてみるか『爆散の消費魔力量が知りたいな~』」


【 10だよ~ 】


「お、教えてくれた。確かMPが237だったから、23回はいけるな」


 何回打てるか分かると安心するな。


「よっしゃ、行こう!」


 俺は軽い足取りで前に進んだ。


「思ったよりいないな」


「一度にいる数が多いですからね」


「おいっ! 宝箱あるぞ!!」


 思わず宝箱に駆け寄った。


「このまま開けて大丈夫かな」


「さあ?」


「とりあえず浮いておくか」


 1階に落ちたら嫌だもんな。


「ほぼ進んでないのですから、あまり関係ないのでは?」


 確かに。


「普通に開けよう」


 何が入ってるんだろう?


「お、高そうな小瓶だな」


「聖水ですね」


 聖水か~。


「この前、聖水買わなかったからこれはいいな」


 先へ進み何度か蟻達に遭遇したが、爆散で問題なく倒す事ができた。


「お、また宝箱あるぞ」


 ここ、結構宝箱あるよな。


「聖水ですね」


「また聖水かよ」


 これで5本目だ。


「もっと違うのないかな~?」


「この階はここまでのようですね」


 俺達の前に大きな扉があった。


「ボス部屋か」


 これまでの少ない経験上、蟻だろうな。


「最近誰も来ていないダンジョンなので、確実にいるでしょうね」


 そうですね。


「MPはまだあるし、行くか~」


「ではまた次回」

 

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