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お化け屋敷 2F

 さあて、気を引き締めて本格的にダンジョン攻略と行きますか!


 意気込んでいた俺の目の前には、レトロ洋館の和と洋が混ざり合ったような雰囲気のフロア。広い廊下と、ロビー、奥には沢山のドアが見えるから部屋があるんだろう。

 所々に置いてある家具は細部にいたるまで緻密な意匠が施されており芸術品のようだ。


「あれ? ここダンジョンなんだよな?」


 上がってきた階段を見る。


「こっから雰囲気違いすぎだろ」


 下は幽霊屋敷の空気が出ている。なんせ地縛霊もいるくらいだし。

 この階はあまりに綺麗すぎて、前へ進むのも遠慮しがちになってしまう。天井にはシャンデリア、光沢がかすかに映える綺麗な色の壁紙、そして絨毯はレッドカーペット。


 いつから俺はスターになったんだ。


「アオトさん、2階からはモンスター出るって言ってたよな」


 どう見ても出なさそう。


「ここは安全地帯のようですね」


「はあぁ? 1階から上がってきただけだぞ」


「そこのダイニングテーブルに書いてありますよ」


 ツキが指示した方向に目をやるとドアのない1室。貴族とかが使ってそうな、長くて大きなダイニングテーブルがあった。

 その上に銀製の小さな看板が。


『ここは安全です。本格的な冒険が始まる前にこちらでおくつろぎください』


「なんだそりゃ」


「ダンジョンへ入る前の宿屋的な場所なのでしょうか」


 各部屋のドアを開けてみると、1泊3万円くらいしそうなホテルの部屋みたいだった。


「ダダなのかな?」


 ウロウロ見学みたいな事をしていたら廊下の突き当りに来た。


『ここから先、モンスターが出ます』


「あ、こっから先モンスター出るんだ」


 右と左を見てみると、後ろの安全地帯との差に引く。


「世界感変わりすぎじゃね?」


 そもそも、こっちからモンスターとか来たりしないのか?


「それはないですね」


 ないんだ。


「こちらの左右は別空間と繋がってます」


「え? そうなの?」


「2階だけのダンジョンというのもねぇ」


 確かに。


「左右どっちに行ってみる?」


「「お好きにどうぞ」」


「ははは! 絶対言うと思った」


 いつか同時に言ってやろうと思っていたのだ。


 ツキが薄目で俺を見る。


「では聞かないでください」


「『人は無意識に左を選ぶ』ってのが大人気漫画のおかげで有名になったんだけど、それにより皆が意識して左右を選ぶようになってさ。俺ももちろんそうなったんだけど、どっちを選ぶようになったと思う?」


「興味ないですね」


 持てよ。


「左になりました~」


「そうですか」


「なんでか聞いて」


「なぜですか?」


「今までは適当に選んでたんだけど、それを知ってから必ず左を選ぼうって思うようになった」


「考えなくて済むから楽ですね」


「ははは、そうなんだよ。そんな薄い理由で俺は左を選ぶから、お前が右がいいなら右にしようと思ってさ」


「では私はどちらでもいいので左ですね」


「じゃあ左な」


 左に進んで行くと建物と洞窟の境に来た。


「お~お~、何だこれは。大丈夫なのか?」


 恐る恐る、境目に手を伸ばしてみる。


「ブシュッ!」


「ぎゃあっ!」


「あはははは!」


「やめろよ!」


 ピタリと無表情になるなよ。


「あなたがあまりに無防備なので」


 確かに。


「剣とかで試すべきだったな」


 でも普通に止めてくれれば良くない?


「あなたの驚く顔が面白くて」


 お前はそういう時だけ声を出して笑うよな。


「なぜでしょうか?」


 俺が知るか。


「でもありがとう。腕が飛ぶ可能性もあるもんな」


 以後気をつけよう。


 俺は背中の剣で、境目の確認をする。特になんの影響もないようだ。剣で円を描いてみる。動かしてみてもやはり特になんの影響もない。


「大丈夫そうだな」


 俺達は洞窟っぽい空間に足を踏み入れた。


「うわ、さむ」


 屋敷側が心地良い温度だっただけに、ひんやり感がすごい。


「普通の洞窟と一緒のはずなのに、これだけ雰囲気の差があるとなんか怖く感じるな」


 屋敷側の明かりが遠くなる。


 光る石とか埋まってないから、目の前はもう真っ暗だ。


「これ灯りいるな」


 呟いた瞬間、洞窟内に火が灯った。


「何?!」


「灯りいりませんでしたね」


 そうだね。


「いやいやいや、なんで灯った」


「灯りがほしいと言ったからでは?」


 なにその親切設計。


「そんな事ある?」


「今まさに」


 そうだね。


「深く考えるのはよそう」


 そう、ここは初心者用ダンジョンなんだ。

 こんなに恐れる必要はない。


「でもなんか怖いんだよな~」


「私の袖を引っ張らないでください」


「あ、ごめん」


「そんなので冒険者が務まると?」


 ですね。


「この雰囲気が怖いんだから、モンスターが出た方が安心するかも」


 先が見えないな。


 灯りは俺達が進むペースに合わせて灯る。


「灯りが消えないのは助かるな」


「出たようですよ」


「え?」


 目を凝らしてみると、暗がりにモゾモゾと何かが動く気配。


「なんだ? 暗くて見えない」


 もう2、3歩進めば見えるかな?


 警戒しながら前に進む。


「こえぇぇ……」


 見えないってのが一番怖い。


「あともうちょっと」


 ついにモゾモゾ動く何かが見えそうだ。


「うげぇ……」


 勘弁して。


「蟻ですね」


「俺、蟻もダメなんだよーーーー!!」


「ではまた次回」

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