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ダンジョン攻略法 第1巻

「ダンジョン攻略法 第1巻」


 サラが投げて寄こした本のタイトルだ。


「とりあえず、そんなんでどうよ。お前にはピッタリだろ」


「へ〜、こんな本あるんだな」


 興味惹かれるタイトルだ。


「1巻だから、初心者向けばっかだけどな。おい、ちょっと痛いぞ」


 パラパラと捲ってみる。

 イラスト付きだ。


「え、めっちゃいいなコレ」


「だろ〜」


 サラが得意気な顔をしている。


「お前らがいたソパールダンジョンも載ってるぞ。下手くそ。今度は弱すぎなんだよ」


「あ、本当だ」


「その次に載ってるダンジョンはこっから近いぞ」


「ここに近い初心者用ダンジョンなんて聞いたことないけど」


「確かに最近来るやついないな。ん〜、強さはこんくらいで良いけどさ、違うんだって」


「これ借りてっていいんだよな」


「ツキさんにお貸ししま〜す」


 ツキ様様だな。

 

「ありがとう。当分借りてて良い?」


 サラが、手をひらひらさせる。

 当分借りてて良いようだ。


 サラ曰く魔法の本は探せばない事もないらしいけど、すぐにはないらしい。パチンと指を鳴らせば整頓されてすぐに見つかりそうなもんだけど……とは思ったが、これはこれで凄く良い本を貸してもらえたから余計な事は言わない。むしろ思ってもみなかった本を借りられてラッキーだった。


 さてと……なんとか見ないふりをしていたが、ダメだ。


「お前さ〜、肩もみしたことないのかよ。もまれてる方の気持ちになれ」


 そう、フェスが弟子として初めての仕事といって肩もみをさせられていた。


「申し訳ございません。肩もみの経験がする方もされる方もなかったもので」


「なにぃ……ああ、そういやまだ若かったな。お前老けてんな」


 老けてはいないだろ。


「はぁ~、しゃあねぇな~、お前ここに座れよ。肩もみのなんたるかを教えてやる」


「はい、師匠」


「いいか? 肩もみってのはな〜、なんでもかんでももみゃいいってわけじゃないわけよ」


「はい」


「いきなりもむな。まずは肩を優しくさする。『さすさす』すんじゃねーぞ。一方向にゆっくりな。まずはリラックス……じゃなくて、緊張を解く事が大事なわけ」


「なるほど」


 本気のレクチャー始まってるし。


「で、緊張が解けた時に初めて肩をもみだす。親指の第一関節全体でゆっくり指を沈めていく『お前これ痛いか?』」


 相変わらず、サラの口が相手の耳に近い。

 ついにフェスまでサラの温風の餌食になった。


「痛くないです」


 師匠の問いかけに顔を赤くするな。

 俺ならするだろうけど、弟子はだめだ。


「こういう確認とかも必要になってくるわけよ。で、全体的に揉んだら次は『お前どこもんでほしい?』」


 あれ、わざとだよな。

 弟子に温風あてるなよ。

 そういえば、俺だけ温風あてられてないな……。


「背骨と肩甲骨の間ですね」


「分かった。いいか、効くところに効かせないと……この感じ分かるか?」


「気持ち良いです……肩もみ素晴らしいです」


「だろ! お前はこれを1日も早くマスターしろよ」


「はい……」


 フェスがうっとりしている。


「って! なんで私が揉んでんだよ! 代われ代われ」


 サラはマッサージの師匠だったのか……。


 俺は付き合ってられないので静かにサラの部屋を出たのであった。


  ◇


「なんなのアレ?! 何がどうしたらあーなるんだよ!」


「一部始終見ていたではないですか」


「見てても理解不能だよ」


「あれはフェスが最適解を導き出した結果ですね」


「どういう事だよ」


「サラの近くにいるには、あれが正解です」


「そもそも、なんで急に敬いだした。興味があるとかないとかって話しだったのに」


「激鈍クソ野郎には分かりませんか?」


 それやめてくれる?


「分かんないよ」


「あの子の事が好きだと自覚したのでしょう」


「はぁっ?! お前聞いてなかったのか? フェスはサラに惚れてないって正面切って言ってだだろ」


「さすが、激鈍クソ馬鹿野郎」


 増えた。


「誰が馬鹿だよ」


「だからあなたは死ぬまで童貞だったんですよ」


 うるせー。


「あの子に好きだ惚れたなどと言ったら、あの子はフェスと距離を置きます。というか、すでに距離を置いていたようですね」


 確かに俺とフェスは距離置かれてたな。


「あなたの場合は私がいるからですが、フェスはあのように周りに興味がない分、一度好きになったりすると猪突猛進します。たくあんぬは食べ物だからいいですが、人相手ではそうはいきません。非常に面倒くさいのです」


 面倒くさいって……うん、確かに面倒くさそう。


「フェスも常人相手なら、どうとでもできると思いますが」


 それもどうだろう。


「サラは常人ではありません」


 ですよね。


「フェスもそれを感じているからアレです」


「それで弟子?」


「思いさえ伝えなければ、話せる、側にいられる、尽くせる、知る事ができる」


「まぁ、確かに」


「それにフェスは自分の思いを相手に伝えてどうこうを求めるタイプではありませんし」


「確かにたくあんぬとはひたすら向き合ってるだけだな」


 俺は何を言っているんだ。

 たくあんぬに何かを求める事はそもそもできるわけがない。


「見返りを求めないとは究極の自己満足」


「お~。なんか上手い事言ってるっぽい」


「あの子も単純なので、ホイホイ引っかかりました。あの子、前から敬ってほしいとうるさかったので」


 言い方。


「あれだけの短時間で最適解を見つけられる人間はそうはいません。フェスは頭が切れますね」


「まぁ、なんでもいいけど」


 想える人ができたってのはめでたいね。


「フェスに先越されるとは思わなかったな~」


「自覚してからが早かったですね」


「土下座だもんな」


「なりふり構わぬ結果、求めるものを得られる」


「得られない場合もあるよな?」


「もちろんです」


「失敗すると思うと、なりふり構わないとかできないんだよな」


 これぞヘタレ。


「なりふり構わないあなたが見られる日を楽しみにしています」


 俺もだよ。


「ではまた次回」

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