無駄話
「ひどい目にあった」
「ひどいのはあなたでしょう。普通、出された飲み物を『まっず』なんて言いませんよ」
ですよね。
「それは本当に申し訳ないと思ってる」
美味しいって聞いてたから、勝手にハードル上げてた。
紅茶の香りは好きなんだけど、味がね。
ミルクティーなら飲めるんだけど。
「神官長のフォローがあって命拾いしましたね」
そうだな。
「それにしても、お前の事バレてたな」
「油断していました。あの神官長はなかなかやりますね。あなたが最初、本気で気づいてなかったから、なんとか誤魔化せました。あなたが激鈍野郎で良かったです」
言い方。
それにしてもあれは誤魔化せたというのだろうか。
「あなたが気づいていないと少しでも思わせたのであればアリです」
演技派だからな。
「どちらかというと、ルイズ君のおかげですね」
「確かに。場を乱しまくってたもんな」
冷静そうなのに、1mmも冷静じゃないルイズ君よ。
「もう神殿行くのやめるか~」
「あなたのお好きにどうぞ。そもそも私は行かなくてもいいわけですし」
「なんでそういう事言うんだよ。俺は哀しいよ。ツキちゃんと一緒に行きたいよ」
「そういう所は素直で良いのですけどね」
そう?
「素直になれる相手を増やしていけるといいですね」
俺もそう願うよ。
「願ったって増えませんよ」
ですよね。
「もう神殿来たくないから、さっと本読んで帰ろう」
「そうですね」
◇
「特に収穫はなかったですね」
「むしろ前世で読んだ漫画とかの魔法とそう変わんなくて驚いた」
「剣や魔法の物語を考えた作者が前世の記憶持ち又は何かの拍子で記憶が発想として出てきて書いた。とかですね」
「そういう事ってあるのか」
「あります」
「じゃあそれじゃん」
「沢山の世界がありますが、全ては一つですからね」
「どういう事?」
「それは教えられません。というか大体わかるでしょう。今の答えですからね」
俺が馬鹿みたいだな。
「分かっているではないですか」
うるせー。
「やっぱ最初にフェスが面倒くさがりは神殿行かなくていいって言ってたけどその通りだったな」
「そうですね」
「陰謀も派閥もないって言ってたけど、ルイズ君を見る限りファンクラブとかありそう」
「急に庶民的になりましたね」
「ファンクラブはなんか違うか。熱烈に神官長の事好きじゃん。尊敬とか超えてそうだし。アイドルを追っかけるファンというか。アイドルっていうと偶像崇拝か……そうそう崇拝しちゃってる感じ」
「神殿なのに神官長を崇拝しているのですか」
「俺の読みではそうだな。あれは愛だの恋だのとは違うね。絶対的な崇拝だ。目からお茶を出すとかいうわけの分からないことも言ってたし……あれ、何の例えなんだろうな」
「さあ?」
「神官長に対抗馬がいたらさ、派閥が生まれると思わないか?」
「ルイズ君が二人いたら派閥は生まれるでしょうね」
「な〜。派閥とか『っぽい』よな」
「っぽいとは何ですか」
「いや、漫画とかみたいだな~と。あったら面白そうだからまた神殿に行かない事もないけど」
「ただの野次馬じゃないですか」
「ははは、そうだな。でも神官長の対抗馬だぜ、見てみたくないか?」
「単なる仮定の話で盛り上がりませんよ」
「え~、想像膨らまそうぜ」
「あなたじゃないんですから」
「お前は色々想像とかしないのか?」
「予想はしますが、想像はしません」
「え~、そんなのつまんないじゃん」
「想像とは実際に見たり経験したりしていない事を頭の中に思い浮かべることですよ。今まで何度も転生し、その記憶を全てもつ私に経験していない事などほぼないと言って良いでしょう」
「え……お前って今までの記憶全部あるのか?」
「ないですよ」
「は?」
「嘘ですよ」
「いや、嘘じゃないだろ。本当っぽい」
「ふっ……あなたなら信じそうな事を言っただけですよ」
「俺をからかうのやめてくれる?」
「この生での唯一の楽しみですからやめませんよ」
「他に楽しい事いくらでもあるだろ」
「思いつきませんね」
「想像しないからだろ。想像しろよ」
「オリのように妄想できれば良いのですが」
「妄想なんてたま~にしかしてないわ」
「それはしてると言います」
そうだな。
「あなたは性欲があるんだかないんだか」
あるよ。
「そういう事ではありません」
どういう事だよ。
「それはあなたの心の中に」
適当に話してるな。
「私が適当に話すタイプに見えますか?」
見える。
「ふふ……ではそういう事で」
「『ふふ』って笑う奴って強キャラっぽいよな」
「強キャラなので」
そうですね。
「つまんない話してたら着いたわ」
「ひどい言い草ですね」
「ははは、嘘だよ」
「知ってます」
「てかさ、サラに本を見せてもらえばいいんじゃないか? それかこの世界の話詳しそうだから聞いてみるとか?」
「嫌ですね」
「頼むな先輩」
「私の声、聞こえませんでしたか?」
「そうだ! サラの部屋探検しようぜ」
「殺されますよ」
「怒られるとかじゃなくて?」
「私がいれば大丈夫ですが」
「いなかったら殺されるみたいだな」
「……」
嘘ですって言って。
「ではまた次回」




