はじめての魔法コーナー
「今日からはじめる魔法」
「魔法ってなに?」
「魔法つかいってなに?」
「魔法のつかいかた」
「絵でみる魔法」
「魔法のきほん」
「魔法が好きになる本」
「らくらく魔法」
「魔法のぱずる」
「エトセトラ、エトセトラ……」
多。
はじめての魔法コーナーだけで何冊あるんだよ。ってくらい並んでる。
「これだけあると何を読んでいいか迷うな」
何がいいかな?
(とりあえず、今言った本を机に持って行って読んでみましょう)
行ったり来たりするの面倒だもんな。
とりあえず、目についた本を机に運ぶ。
「なんで机までクリスタルなんだろうな。椅子もだし。座り心地悪そ……んええ……?」
すごい、このクリスタル柔らかいぞ。
(特殊加工されてますね)
すんご~い。神殿すんご~い。
(阿呆みたいですね)
うるせー。
「でも凄い。腰が痛くなりにくそうだ。ジェルクッションみたい」
(見られてますよ)
本当だ。めっちゃ見られてた。恥ずかしい。
「さっさと読もう」
ここまでの道のりは長かった。
(あなたが長くしていたのですがね)
そうだね。
「どれどれ……『魔法ってなに?』から行くか」
ふむ。まだ読んでないが、第一の感想言っていいか?
(どうぞ)
文字がでかい。
(子供用なのでしょうね)
だよな。
『魔法はね、ふつうのひとにはつかうことができない能力や不思議なことをいうんだよ』
これだけで1ページなんだが。
(子供用だからそんなものですよ)
子供文字だから読みにくいんだが。
(子供用だから仕方がないですよ)
はじめての魔法コーナーやめない?
(文字が読みにくいくらいで、挫折しないでください)
別に挫折まではしてないが。
(確かに読みにくいかもしれませんが、基本的な事が書かれていて良いではないですか)
確かに。子供に伝わるように魔法について書いてある。
(今度は『魔法つかいってなに?』を読みましょう)
「どうせ魔法を使える人だよ~とか書いてあるんだろ」
『魔法つかいはね、魔法をつかえるひとをいうんだよ』
うん、当たってた。
『魔法つかいはね、おとうさんやおかあさん、かぞくに魔法つかいがいるとなりやすいんだよ』
血統ね。まぁ、そんな感じはするよな。
『かぞくに魔法つかいがいなくても、魔法つかいになることもあるんだよ』
ふ~ん。
『かぞくに魔法つかいがいないのに、魔法つかいになるりゆうは分からないんだよ。そういうのを神のみぞしるっていうんだよ。神様はすごいんだよ』
神のみぞ知るね。大体そうだろうよ。
(そんな事ないではないですか)
何が?
(あなた魔法使いになる理由知ってるじゃないですか)
知らないよ。
(有名ですよね?)
は? 聞いた事ないし。
(聞いた事くらいあるでしょうし、なにせあなたの事ですし)
何を言って……おい、嘘だろ。
(本当ですよ)
まさか……。
(ほら、知ってましたよね)
『30歳で童貞だと魔法使いになる』の事じゃないだろうな。
(それですよ)
嘘だろ。
(本当ですよ。正しくは『30歳で童貞だった人は、転生したら魔法使いになる』ですけど)
面白くない。
(面白い事を言っているつもりはないのですが)
ふざけてるだろ。
(ふざける理由がありません)
お願い、ふざけてるって言って。
(言うだけでいいなら、言いますけど)
いや、いい。
(あなた30過ぎても童貞でしたよね)
うん。
(今、魔法使いですよね)
うん。
(そういうことです)
やめて。
(しかも生まれて死ぬまで童貞だったから、大魔法使いになりそうですよ)
うるせー。
(あなたの世界では有名でしたから、記憶持ちが広めたのかもしれませんね)
ああそうかよ。
(やさぐれないでください)
そう思うと、フェスは前世で童貞だったのか?!
童貞仲間なのか!!
(フェスは家族に魔法使いがいますから血統でしょう)
あっそ。
(フェスの祖先が童貞だったのでしょう)
あっそ。
(気をとりなおして『魔法のつかいかた』でも読みましょう。ほら、その本は閉じて、こちらを開きましょう)
俺は顔を背けたまま。本を開いた。
(本を読んでる人がそっぽ向いてたらおかしいでしょう)
気がのらない。
(面倒くさい人ですね)
どうせ俺は童貞だったよ。
(別に悪い事ではないから良いではないですか)
いつも、童貞童貞ってさ……。
(それはただの事実ですから)
泣くぞ。
(泣くというのは、ただあなたが童貞だった事を無念と思っているだけでしょう。ハッキリ言いますが、童貞は別に悪い事ではないのです。あなたの言動こそ、童貞が悪い事のように言っています。全ての童貞に謝ってください)
ええ……。
(謝ってください)
申し訳ございませんでした。
(許してもらえればいいですね)
なんなの?
(いえ、前から言ってやろうと思っていたので、スッキリしました)
前から思ってたんだ。
(さて、あなたも正気に戻ったところで『魔法のつかいかた』を読みましょう)
はい。
「おや、オリ君。奇遇ですね」
目の前に、フェスの叔父さん……神官長がいた。
名前なんだっけ?
「あ、こ、こんにちはー。本日はお日柄も良く……」
「そんな堅苦しい挨拶はいりませんよ」
オリの叔父さんがくすくす笑いながら話す。
優しそ~。あと、本当綺麗だな。
「君、アース神官長の御前だぞ」
あ~、そうそう。アース神官長だ。
って誰だこの人?
アース神官長が『ザ・神官長』みたいな服装に対して、白いスーツを着ている。
白いスーツって派手だけど見事に着こなしてるな。神官長ほどではないにしろ、この人も顔がいいからだろう。背筋も伸びてるし。そもそもこの世界にもこんな服あるんだな? しかも眼鏡だし。頭良さそう。知的眼鏡君だな。
「何をぼうっとしている。立ちなさい」
そうか。座ったままで挨拶してた。
「ルイズ君」
「はっ!」
「そういう言い方は怖いですよ」
「そんな事はございません」
そんな事はあるよ。なぜお前が言う。
「オリ君、ごめんね。ウチのルイズ君ちょっと堅苦しくて」
アース神官長が顔を近づけて、こっそりと謝ってくれる。
おお……こんな綺麗な顔を近づけられると、同性とはいえ、めっちゃ照れるんだが。
「アース神官長、いけません。その様に顔を近づけては」
ルイズ君という人が俺と神官長の間に割って入る。
なんなのこの人。
「あの、ちょっと……」
ルイズくんの背中が俺の顔に当たってるんですけど。
頬が押しつぶされ、ひょっとこみたいな顔になってそう。
「ルイズ君、オリ君から離れなさい」
「もう近づきませんか?」
「近づかないから、離れてあげなさい」
「君、以後気をつけるように。もう一度同じ事があったら許しません」
俺かよ。
「やれやれ、ルイズ君にも困ったものだ」
「私ですか?!」
どう考えてもそうだろうよ。
「私はオリ君と話がしたいから、ルイズ君はちょっと離れてて」
「離れません」
「ルイズ君」
「少し後ろに控えております」
「ありがとう、すぐ終わるから」
「はっ!」
この人ちょっと顔赤くなってないか?
「ごめんね、オリ君」
本当それ。
「いえいえ」
「オリ君とお話したいな~って、ずっと思っててね」
はあ、そうですか……。
「勿体ないお言葉です」
「隣、座ってもいいかな?」
「あ、どうぞ」
ルイズ君がこっちを凄い形相で見ているのが伝わってくるが、俺は振り向かなかった。
(ではまた次回)




