気になる話
「神殿でも行くか〜」
なんだかんだで行ってなかったからな。
「そんな所もありましたね」
「せっかくだから、フェスに声かけて行こうかな」
「また小さくならねばですか」
面倒くさそ~。
「お前も魔法使えるって言えば?」
「お断りです」
あっそ。
◇
「オリだけで行って来て下さい」
フェスは最近たくあんぬ作りに精を出しまくっている。こちらを見ようともせず、一心不乱におおねを切っている。
おおね……『大根』なんだよなぁ。
「最近、引きこもってばっかりだろ。たまには外出しようぜ」
「今はたくあんぬ作りに集中したいのです」
「たくあんぬ、食べ切れないほどあるぞ」
「誰かに差し上げて下さい」
既にご近所さんには配りまくっている。
「何かあったのか?」
言った瞬間、おおねを切っていた手をピタリと止める。
「俺で良かったら、話し聞こうか?」
凄い勢いで振り向くフェス。
なんか思いつめてるな。
「どうした?」
「……なんでもありません」
どう考えても何かあるだろ。
「俺で良ければいつでも話しくらい聞けるからさ」
アドバイスとかは無理だけど。
「ありがとうございます……」
「じゃあ、神殿行って来るわ」
「……あの」
「?」
「オリは誰か好きな人とかいますか?」
はっ?!!
「え?! い、いないけど」
「好きな人がいた事とかありますか?」
そ、そそそ、そっち方面の悩み?!
「あ、い、う……え?」
「すみません。なんでもないです」
いやいやいや。せっかく話してくれたんだから。
「俺は……その……好きな人とかいた事ないんだ」
今世ではまず好きな人を見つけたいんだよな。
「私もです」
同士!!
「もしかして……好きな人できたのか?」
だったら凄く羨ましい。
「まさか?! 好きとかではありません!」
違うのか。
「……」
気まず。
「訳の分からない事を言う人がいて」
「何言ってくるんだ?」
「私がその人の事を好きになるとか」
は……?
はっ?!
なんだそれ!
あ、どうしよ。めっちゃ気になる。
「そんな事言ってくる人いるのか?」
誰だろ?
「その様な事を言われるのが初めてなので、つい……気になってしまって」
誰でも気になるわ。
「それで?」
「たくあんぬを作っていました」
なるほど。
「で、フェスはその人好きになりそうって事?」
「ありえません」
「じゃあ、気にしなくても」
「分かっていても気になるのです」
ええ~……
「誰……? とか聞いて良い?」
「言いたくありません」
「だよな」
誰だろ? フェスの周りに女子ってそんなにいないよな? フェスが絡むといったら、おおね…大根を販売してるお姉さんとか? でもあの人40歳前後だろうし。たくあんぬ屋の人とかか? う~ん、分からん。思い当たる人がいないな。
「でも凄いな、そんな事言ってくるなんて」
「そうなのです」
「フェスの事好きなんじゃないのか?」
「は?」
「フェスの事が好きだから、気を引くつもり。的な」
この線は結構アリな気がする。
「それはありません」
「あ、そう」
「『自分の事は好きになるな』と言っていました」
どんな奴だよ。
「フェスってモテるだろ」
「はい」
即答~。
「告白とかされて来ただろ」
「はい」
「その時は気にならなかったのか」
「全く」
「告白して来た人とその人との違いは何なんだろうな」
「彼女は私に興味がありません」
「ほほう」
ツキのがうつったな。
「フェスって人に興味持たれなかった事がないとか?」
「どういう事ですか?」
「ほら、フェスって綺麗じゃん」
「はい」
言うと思った~。
「俺も初めて見た時、こんな美しい人いるんだって思ったんだよ」
「分かりましたよ。しかも女性だと思ってましたよね」
バレとったんかい。
「うん、まぁ……はい」
なんか恥ずかしい。
「よく言われますので」
「俺でも見惚れるくらいだからさ。多くの人はフェスになんらかの反応をしちゃうと思うんだよ。惚れた腫れた以外でもさ。好意とか好奇の目というかさ」
「よくある事です」
「だからさ、フェスに興味のない人だと思ったから、フェスの方が無意識に興味が湧いちゃったとかじゃないのか? さらに普通なら誰でも気になる事まで言われたんだから余計に」
フェスが呆けた顔で俺の話を聞いている。
「俺とかだとさ、興味を持たれない事の方が多い……というか持たれないから『興味がある』って言われた方が、その人の事を気になるからさ。フェスはその逆なんじゃないか?」
「なるほど! それですよオリ! それ以外考えられません!」
「え? そう?」
思わず得意げな顔になる。
「私はその人に、かつてないほど興味が湧いていたのです。にも関わらず拒絶され、苛立ちました」
フェスにそんなに興味持たせるってどんな人だよ。
「たくあんぬ以外で、しかも人に興味が湧いた事も初めてなのに、人生で初めて人に拒絶までされて……気にならないわけがないのですよ!」
あれ……?
「オリのおかげでスッキリしました!」
「うん」
「もしかしたら、人を好きになったりしてしまうのかと思ってしまって」
「おお……」
それは良い事だろ。
「かつてなく動揺していた様です。オリ、ありがとうございます」
「いえいえ」
「これで顔を見ても平静でいられそうです。なにせ気になってしまってしょうがないのは、しょうがないのですから」
フェスがにこにこしている。
良かったね。
「ふふ……彼女の発言が気になって、いつもよりたくあんぬが喉を通らなかったので、余計に調子が悪かったかもしれません。ああ、これで気兼ねなくたくあんぬが食べられます」
フェスが足取り軽く、鼻歌をしながら去って行った。
それは漫画とかでよくある恋してる人の状態なのでは?
なんせ恋をしたことないから分からない。
う~ん、実体験がない事をここで実感するとは……。
「んん? もしかして、サラか? あいつ、そもそも人なのかって感じだし。フェスも人じゃないから興味が湧いてそうだし。あと余計な事も言いそうだし。うわ~……何やってんだよ。大丈夫かフェスの奴」
どうしよう、二人が顔を合わせた時、どんな顔して見ればいいんだ。
完全にこのシェアハウスの女性陣は対象外にしてた。
「結構良いアドバイスできたかも♪ とか思っちゃったけど、サラだと話しが変わって来るかな?」
まぁ、なるようになるか。
◇
「フェス神殿行かないってさ」
「そうですか」
「今、フェスと話してたんだけど、なんか聞こえてた?」
「いいえ」
本当か~?
「さすがにそこまでプライバシーを侵害する事はありませんよ」
本当か~?
「言ってしまうと、あなたのプライバシーは侵害しますが、フェスのプライバシーは守らねばなりません」
じゃあ、お前のプライバシーも侵害させろよ。
「どうぞ」
いいの?
「できれば。ですけどね」
でしょうね。
「俺も強くなったらお前のプライバシーを侵害できたりするのか?」
「できますよ」
マジで?
「先はあまりにも長いですが」
今に見てろ。
「また如何わしい映像でも見せる気ならご勘弁を」
「違うよ!! 今その話じゃないだろ!」
あと本当に忘れてください!
「受肉年齢16歳の私にはインパクトが強すぎて……よよよ」
『よよよ』じゃないよ。
「俺が悪かったですよ。お前のプライバシーとか強くなっても侵害しないから!」
「冗談はさておき」
もう二度とその冗談言わないで。
「ではまた次回」




