オーク討伐
「また増えてるんだけど」
「13体いますね」
「さすがに怖いな」
「離れた所から攻撃するのだから大丈夫でしょう」
「MP持つかな?」
「さあ?」
嘘つけ。分かるくせに。
「毎度の事ながら、私でも分からない事はあるのですよ」
嘘つけ。これくらいは分かるハズだ。
「よく分かりましたね」
分からいでか!
「お前の事はもう大体分かってるから」
「ほほう」
嘘です。
「知ってます」
でしょうね。
「さて、と。やるか。弓の経験はなくても間違いなく当たると思うんだよな」
「ほほう」
「最近よく『ほほう』って言うね。流行ってんの?」
「はい」
「なんで当たるかって言うと、これ魔法じゃん」
「そうですね」
「だから」
「ほほう」
「魔法じゃない普通の弓矢だと技術が必要だと思うんだけど、結局これ魔法だからさ。当たるよね」
「なるほど」
本当に分かったのか~?
「魔法は特に狙わなくても、放てば対象に当たりますからね。敵が狙いの先にいないとか、敵が避けない場合になりますが」
「そそそ」
「では、どうぞ」
はい。
「俺の雄姿を見ててくれ」
「はいはい」
『はい』は1回じゃなかったのかな?
「アイヤー起動」
俺の右目右耳を覆うように新能力が現れる。
「はい。ちょっと待ってください」
「何?」
「キリッとした顔で『アイヤー起動』とか言ってますが何ですか?」
「俺の真似すんなよ~。恥ずかしいだろ」
「そこ照れる所なんですか?」
「で、何?」
「『アイヤー起動』ですよ」
「分かんない?」
「全く」
「この能力に名をつけました~! ってなわけで、行きます!」
「はい。ですからちょっと待ってください」
「なんだよ~。またオークどっか行っちゃうだろ~。また増えるぞ」
「なぜそうなったかだけ教えてください。でないと夜も眠れません」
「今夜は寝かさないぞ!」
「は?」
すみませんでした。
「その顔やめてくれる?」
「つまらない事言ってないで、早く答えてください」
はい。
「分かりそうなもんだけどな。
『目』が『アイ』
『耳』が『イヤー』
で、繋げると『アイイヤー』
だから『アイヤー』……なっ!」
「『な!』じゃないですよ。なんでそんな満足気なんですか」
「格好良いだろ」
「オークどこかに行きますよ」
「聞くだけ聞いておいてなんだよ全く」
まぁいいや。
「アイヤー起動」
よし、良く見える。
炎の弓矢でオークの禿頭を狙う。
「俺のはじめての魔法の弓矢! 行きます!」
勢いよく放たれた炎の矢が一直線でオークの頭へ飛んで行く!!
「あれ?」
矢は勢いよく飛んで行ったものの、オークに届く前……俺とオークの間くらいで消えてしまった。
「なんで?」
「遠いのですよ」
「え?」
「魔法でも弓矢でもそうですが、望遠レンズ……くそダサイ名称のアイヤーでしたか? アイヤーを必要とする距離で矢が届くわけがないですよね」
「言えよ!」
「今言いました」
そうですか。
「アイヤーいらないんだ……」
俺の耳と目からアイヤーが消える。
「早くオークの近くに行きますよ」
「ここまでの時間はなんだったんだ」
「アイヤーができるまでの時間ですね」
そうですね。
「勘違いとはいえ、こういう時でなければアイヤーは生まれなかったわけですから。今後使用していけば良いではないですか。考えた時間は無駄ではありませんよ」
「はい先生」
「よろしい」
「じゃあ、早く近づかなきゃな」
オークたちはそこそこ先の方にいたので、俺は頑張って走った。ツキは瞬間移動して、丁度良さそうな所で待っていた。
「ここからなら、丁度良く当たると思いますよ」
先に教えてくれればな。
「何か?」
「なんでもございません」
オークが13体うじゃうじゃしていた。
「これ行けるかな~……」
「行くしかありません」
「ですよね」
のんびりしていたせいで、そろそろ時間がやばくなってきた。任務失敗だけはごめんだ。
目視でオークの頭を狙う。
「お願いしますよ~……」
一直線で炎の矢がオークへ向かう。
「お! 当たっ……」
当たった瞬間、オークの頭が砕け散った。
正確には当たった瞬間、矢が爆発した。
「えぇ……」
どん引き。
「なかなか矢りますね」
うるせー。
「なかなか殺りますね」
うまいこと言うな。
「来ますよ」
やばい。どん引いてる場合ではなかった。矢は引かなきゃなだけど。
「うるさいですよ」
すみませんね。
「炎であんなんだと、氷はどうなるんだ?」
オークが12体、一斉にこちらに向かってくる。凄まじい迫力だ。
できるだけ落ち着いて、氷の矢を放つ。
「うわぁ……」
今度はオークの頭に矢が刺さった瞬間、頭だけ氷づけになった。
「あ、まだ走れてるわ……あ、倒れた」
炎の方が即死するんだな。
「氷の方がグロくありませんね」
そうだな。氷づけのマンモスを思い出した。
「じゃあ、次は雷か」
雷は当たった瞬間、全身に電気が流れてガクブルして倒れた。
「まだビクビクしてる……あ、止まった」
「残り10体、元気いっぱいに走って来ますよ」
「わぁ~、本当だぁ」
オーク達が凄まじい形相でこちらへ向かって来る。
「距離とろ」
さすがに10体は相手にできないので頑張って走る。
走るの嫌いなんだよな。
「飛べばいいではないですか」
え?
「飛べばいいではないですか」
聞こえてるよ。
「オークが届かない所まで上昇して矢を放てば走らなくて済みますよ」
「言えよ!」
「今言いました」
言うと思ったよ。
「確かに上に行けば良かったな」
俺はゆっくりと上へ飛んだ。
「飛んだものの……飛びながら矢を放てる自信がないんだが」
「あの岩場辺りまで戻ればオークも届かないので大丈夫でしょう」
なるほど、当初の予定どおりの位置取りね。
「頑張って走らないだけ良いな」
俺はふわふわ飛びながら残りのオークを引き連れ、安定した場所で安全に任務完了したのであった。
「飛べるって最高」
「ゆっくりでなければもっと良いですね」
「どうしたら早くなるんだ?」
「慣れですね」
慣れかよ。
「赤ちゃんと一緒ですよ。最初からスタスタ歩く子なんていませんよね? 誰しもいきなり歩けませんから。何回も飛んで慣れるしかありません」
なるほど。
「その内、意識もせずに飛べるようになりますよ」
「そんなもんかね」
「あなた、歩くときに『歩く歩く』とか思ってないでしょ」
確かに。
「てかさ、そもそもこれって魔法なのか?」
「違いますよ」
そんな気がしてました。
「アイテムボックスと一緒ですね。魔力は必要としません」
「じゃあフェスは? フェスも飛んでるだろ」
「あれも魔法ではありませんよ」
「そうなの?!」
「はい」
あっさり言うね~。
「フェス、魔法だと思ってるぞ」
「そうですね」
「そうですねって……その辺りどうなってんだよ」
「説明しだしたらキリがないのですが」
「教えて~、ツキ先生~」
「面倒くさいので嫌です」
「おいぃ」
「気が向いたら教えて差し上げます」
本当か~?
「本当です」
じゃあ待ってる。
「ではまた次回」




