俺の弓矢
【 12だよ 】
「お! 上がってる~」
「亀の歩み!!」
「大きい声出すのやめてくれる?」
キャラに合ってないだろうが。
「心の声を音量で表してみました」
よく伝わりました。
「前確認した時のリリーのレベルと一緒か。リリーの今レベルいくつ~? 知りたいな~」
【 15だよ 】
「まだリリーのが上だな」
「同じ速度で走っているのに、追い越せるわけないでしょう。あなた特別頑張ってるわけでもないのですから」
「本当のこと言うのやめてくれる?」
「頑張らないのも勝手にどうぞ。ですが、頑張らないくせに成果を欲しがるのはどうかと思いますよ」
そうですね。
「よっしゃ! じゃあ頑張るぞ!!」
「音量だけは一丁前ですね」
ありがとう。
「褒めてません」
あっそ。
「今日もオークにするか。受注数増やす感じで」
「お好きにどうぞ」
「新たな魔法もやっていきたいな〜」
◇
「あ~、いるいる。なんであんな顔してんだろ」
「なぜあなたはその顔をしているのですか?」
「遺伝?」
「ではオークも遺伝なのでしょう」
「なるほど」
「得てして、自分と同じ回答だと納得する」
「言われてみればそうだな」
次は俺の中で回答がない事を聞いてみるか。
「気が向けば答えて差し上げます」
どういう時に気が向くのやら。
「オークいましたよ。5体ですね」
「まとまってくれると助かるわ」
「オーク1体でおろついていた人がよく言いますね」
うるせー。
「とりあえず、あの岩の上に行くか」
そう、ここは岩場。5体のオークの横には、お誂え向きの足場があり上から狙えばかなり戦いやすい。
「俺もだいぶ飛べるようになったからな」
「亀の歩み!!」
うるさ。
それ流行ってんの?
「歩いてないし。飛んでるし」
「亀の飛行!!」
つまんな。
「それにしても遅いですね」
「隠れて上がる分には問題ないんだよ」
ゆっくりだけど、上へ飛んで行けるようになった。まだ5mくらいまでだけど。
「あんよは上手、あんよは上手」
誰が赤ちゃんだ。
「あんよ使ってねーんだよ」
安定感なく上へ飛ぶ。
「見てられませんね」
ツキはさっさと目的の場所にいる。
「俺も瞬間移動できるようになるんだよな?」
「あなた次第です」
「絶対やりたい!」
「どうぞどうぞ」
軽。
「瞬間移動をしたいのであれば、こんな所でもたもたしている場合ではありませんよ」
確かに。そして本当にもたもたしている。
「これ、格好悪いよな」
「はい」
フォローなし。清々しいな。
「ありがとうございます」
「褒めたつもりはない」
「で、ここからどうするのですか?」
「へっへ~。考えがあるんだよ」
「その笑顔、殴りたくなりますね」
なんでだよ。
「『へっへ~』がちょっと」
もう二度と言わねーよ。
「お気遣いありがとうございます」
どういたしまして。
「考えとは?」
「さっきさ、ギルドですれ違った人達見たか?」
「5人パーティーの方達ですか?」
「そそそ」
「それがどうかしましたか?」
「弓矢の人いたじゃん!」
「いましたね」
「弓矢いいな! と思わないか?」
「特に思いませんが」
「俺、弓もやりたいんだよな!」
「お好きにしたらいいですが、今日は弓を持っていませんよ」
「魔法で出すんだよ!」
「ほお」
「格好良くない?」
「どんな武器も使用者によるかと」
「俺が持つと格好悪いみたいだな」
「そういうことではなく。弓は難しいですよ。一朝一夕でできるものではありません」
確かに。練習が必要だな。
「そもそも、魔法で弓を出せるのですか?」
「出せるぞ」
「ほほう」
「見てて見てて」
俺は弓を構えるポーズを取る。
さらに、弓があるイメージで両拳を同じ高さに持ちあげ、打ち起こした弓を左右均等に引き分ける。
「そして、ここで炎の弓矢発現!」
「おや」
俺の手にはメラメラと燃える炎の弓矢。ちなみに熱くない。
「か、カッコいいー!! この横顔見て! ああっ! 全人類に見せたい!」
「変態みたいですね」
おい。
「このまま弓の引き分けが完了して矢を放てばオークに当たる。という、寸法よ。どう?」
「想像よりも良いので驚いています」
「だろだろ!」
「あなた弓なんて習っていましたか?」
「習ってないんだけどさ。弓って格好良いじゃん? だから前世でたまに弓を引いてるイメージトレーニングというか、素振りというか、してたんだよ」
「炎の弓矢も綺麗に発現していました」
「めっちゃ褒めてくれる!」
「良い時は良いといいますよ」
「ち・な・み・に~」
「殴っていいですか?」
いいわけないよね?
「見てて見てて」
俺は動作はそのままに、氷の弓矢を出した。
「どうよ!!」
カッコいいー!! 氷がピキピキ鳴ってる。
「いいと思いますよ」
「だろだろ! そ・し・て~」
「もうそろそろ殴ってもいいですよね」
ダメダメ。
今度は雷の弓矢を出した。俺の手の中でバリバリしている。
「あ~……最高すぎる。よだれ出そう」
「出したら許しませんよ」
出さねーよ。それくらい興奮してるってこと。
「一人でいる時に出しててください」
それただのヤベー奴だから。
「人前で涎出す人の方がやばいと思いますよ」
だから出さねーって。言葉のあやだよ。
「分かってますよ」
あっそ。
「どうかな?」
「いいのではないでしょうか。丁度、5体いますし。適当に矢を放てば当たりそうですね」
まさに数打ちゃ当たる。だな。
「だよな! ちょっとやってみる!」
何がいいだろ? やっぱり炎かな? 次に氷。次に雷をあいつらにお見舞いしてやろう。もっと色んな属性もあるといいな……。
「あ! ひらめいた! 光の弓矢も格好よくないか?」
「もう何でもいいですよ」
「ツキちゃん、付き合ってよ~。ツキだけに。あはは!」
ああ、無表情ってこういう顔かぁ。
「光の弓矢ですか……」
「先に光の弓矢やってみるわ。神々しそ~」
光の弓矢。光の弓矢。あー、キラキラしてそー。
そして、俺の手には光輝く弓矢が……
「わあぁぁ! 目が目がぁ!」
「ぷっ! ……そうなるだろうと思いましたよ」
光の弓矢は出たものの、すんごい眩しかった。
「他は熱くもないし、冷たくもないし、感電もしないのに。なんで光だけ……」
「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感は必要な情報として影響があるのでしょう」
「なるほど。でもさ、触覚って触れたら分かる感覚だろ? なんで熱い炎の弓矢とかは平気なんだよ」
「自身で発現させているからではないでしょうか」
「え?」
「魔法で発現させているという事は、その弓矢自体もあなたの手足のようなものなのでしょう」
「どゆこと?」
「『手と手を合わせてしあわせ~』とかいうのをやってください」
「これが何?」
「どっちが触って、どっちが触れられてますか?」
「え……」
「あれ? 分かんない。これ分かんないぞ」
「そういう事です」
「どういう事?」
「分からないならいいです。なにはともあれ、光の矢を放ちたいのであれば、サングラスが必要ですね」
「それだ!!」
そんな事を話していたら、オークはいなくなっていた。
「ではまた次回」




