扉の向こう
「拍子抜けなくらい、静かなもんだな」
「全然出てこないもんね」
「ずっと居間で騒いでそうだったけどね~」
「せいせいします」
そう、シェアハウスで暮らすと言った割にサラは部屋から全然出てこなかった。
「何してんだろうね」
「1週間も顔みてないけど、ご飯食べてるのかな~?」
「中で倒れてたりしてないよね……」
「まさか~。ランク30だよ~」
「ちょっと、様子だけ見てみる?」
「放っておけば良いのですよ」
「まぁ、シェアハウスって干渉しないのも大事だしな」
「フェスとオリ冷たい」
「リリ~、冷たいとか言っちゃダメ~。オリの言う事も大事だよ~」
「あ、そうだね。ごめん!」
「いやいや」
俺、冷たいのかな……
前世でもよく言われたワードだ。
(繊細ですね)
しょうがないだろ。自分でも嫌だけど、気にしちゃうんだよ。
(否定したわけではありません。気にするだけすれば良いと思います。悪い事ではありませんし)
そうなのかな?
(人それぞれですから)
なんか優しいな。
(私はいつでも優しいですが)
そうですか。
「干渉はしないようにするけど。ノックだけ! 今回だけだから!」
「リリーの好きなようにしなよ~」
「確かに、俺達がリリーを止める事もまた干渉だもんな」
「じゃあ、行ってくる!」
リリーが走ってサラの部屋へ向かった。
離れたところから戸を叩く音とリリーの声が聞こえてくる。
「サラ~。大丈夫ー? いるー? サラ~?」
いないっぽいな。
「ダメ、出て来ない」
リリーが諦めて戻って来た。
「知らない間にどっか行ったのかもな~」
「ソパールに戻ったとか?」
「そうね! それもあるかもね!」
「さすがに、戸は開けられないしな」
「気が済みましたか」
「顔だけでも見れれば安心だったんだけどね」
「何が?」
「サラさん?!」
いつの間にか、リリーの背後にサラが立っていた。
「呼んだ?」
「呼んだよー!」
「何々? なんか面白い事でもあったか?」
「違うよ! 1週間も出て来ないから心配してたんだよ」
「え?! マジ?! そりゃ悪かったな」
「ご飯とかどうしてたの~?」
「普通にピーザ食べてたよ」
またピーザかよ。
「便所とかどうしてたんだ?」
「おいおい、そんな事レディ…じゃなくて女子に聞くんじゃねーよ」
確かに。
「失礼しました」
女子として見てなかった。とは言えない。
「ウチでしてたよ」
「用を足すには出てこないと無理じゃない」
「あ~、そっか。見せておけば良かったな」
「部屋にトイレがあるの?」
簡易トイレかよ。
「こっち来いよ。見せてやるから」
ツキ以外の皆と顔を見合わせる。
言われるがまま、サラの部屋の前までやって来た。
「さ~て、お立ち合い。ここにあります平凡なこの扉! 目ぇかっぽじってご覧ください!」
大袈裟だな。
「じゃじゃ~ん」
「嘘?!」「え~!」「マジかよ」「これは……」
目の前にはソパールダンジョンで見た、サラの秘密の部屋があった。
「なんで?!」
「ウチで~す」
「いや、その通りなんだけど」
「やっぱ、慣れた部屋がよくてさ~。枕が変わると寝られない的な~?」
「そういう問題じゃないわよね」
「何をどうしたらこうなっちゃうのかな~」
「ありえない……」
「あはは~! つなげちゃいました~」
『つなげちゃいました~』じゃねーよ。
「一体どうしたらこの様な事ができるのか……」
「ぴょぴょい! っとな!」
いや、分かんねーよ。
「まぁ、このサラ様にとってはこんな事は造作もないことよ! 伊達にこの世界のダンジョン管理人やってませんよ~! ってね」
何やらウインクをしているが、まずいのではないだろうか?
ツキを見てみると、『やれやれ』といった感じで首を横に振っていた。
「ってなわけで、この部屋にいて色々やってっから、あんまこっち来れないんだわ」
「そ、そうなんだ~」
さすがのリリーも度肝を抜かれている。
「だから心配すんな!」
「じゃあ、いっか~」
ライはすでに気持ちを立て直している。
「教えてください。これは魔法なのですか?!」
フェスは顔面蒼白だ。
おいおい、大丈夫かよ。
「魔法~? どうだろうな~?」
「はぐらかさないで下さい!」
「別にはぐらかしてねーし」
「なぜ何も教えてくれないのですか?!」
「お前に教える必要もねーしな」
うわぁ。
フェスが泣きそうな顔をしている。
「そうですか……それは大変失礼しました!」
フェスがまたしても凄い足音を立てて、自分の部屋に行ってしまった。
「なんだアイツ。構ってちゃんかよ」
「普段はこんな事ないんだけど」
「サラさん、今度何かフェスに教えてあげてよ。何でもいいから」
「気が向いたらな~」
「何はともあれ、サラさんが無事で良かった! これからは干渉しないから安心してね」
サラがおもむろにリリーの肩に腕を回した。
「そんな寂しい事言うなよ~。どんどん干渉しちゃって~」
またしても耳元で話している。ホストのようだ。
「サラさん! 生暖かい風来てるから!」
ライが耳を舐められたのを思い出したのかリリーが顔を赤らめている。
「あっはっはっ! 呼ばれても出て来れねー事もあるけどな!」
自由だな~。ちょっと羨ましい。俺にはない要素満載だ。
今度、ライの耳元で話してみるか……なんでだよ!
(一人ツッコミはやめましょう)
うるせー。
あ、お前実験台になってくれる?
(いいですよ。お返しに耳元でキャンプファイヤーして良いなら)
俺の耳で焚き火すな。
(あなたも人の耳に温風を送ろうとしないでください。気持ち悪い)
ですよね。
「じゃあ、戻るわ」
「うん、また今度ご飯行こうね! こっちのピーザもおいしいよ」
「お~、いいな!」
リリーの順応力よ。もう扉の先の事など気にしてない。
「また都合の良い時声かけて~」
ライもな。さすが幼馴染。いや、陽キャパワーか?
「よし! 気が済んだところで、今日もギルドに行くか!」
「「お~!」」
レベル上げだぜ!! あ、なんやかんやでレベルの確認してなかった。
(ではまた次回)




