はじめての思い出
「なんか、あっという間だったね~」
俺達は帰りの馬車に揺られながら、後にしたばかりのソパール旅行の思い出話しをしていた。
「サラさんとも仲良くなれて良かったね!」
「一時はどうなる事かと思ったけど、話してみると楽しかったな~」
「フェスはサラさんに会えなくて残念だったね! あの後すごく仲良くなったんだよ!」
「それは良かったですね。私はソパールたくあんぬが購入できたので、それだけで満足です」
「フェスとも湖遊びしたかったな~」
「楽しそうな所は拝見してましたので」
「そうなの?」
「ええ、リリーがオリを殺そうとしている所とか」
「そんな事してないよー! 泳ぎ方教えてあげてたんですー!」
「あれで……ですか?」
「ちょっとー! オリ言ってやってよー」
「え? 何?」
「ま~た、見てる~」
「オリってば、さっきから何回も見てるけど。本当に念写初めてなんだね」
そう、俺の手には宿を出る時に撮った写真……じゃなくて、念写があった。
「うん、嬉しくて。つい見ちゃうな」
前世では友達がいなかったから、こんな写真は1枚も持ってなかった。
素直に嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。
ライとリリーが顔を見合わせている。
こんなに喜んでたら、やっぱ変かな。二人にとっては友達との念写とか当たり前だろうし。
「んもうっ! オリってば、そんな嬉しい事言われたらにやけちゃうじゃない! ねぇ?! ライ!」
「うん。俺達も楽しかったし、念写も取れて最高だったよ~! また来ような~!」
ダメだ。目頭が熱い。これは泣いてしまいそうだ。
「涙」
ツキがハンカチを出している。
まだ泣いてないんですけど。
「ツキちゃん優し~」
普段は声を出さないくせに、ここで声を出す意味よ。
(他意はありません)
嘘つけ。
(本当です)
じゃあ、ハンカチありがとう。
「みんな良い顔してるもんな……あれ? フェスはなんか元気ないな」
「本当だ~。なんかふて腐れた顔してる。なんで~?」
「そんな顔はしていません」
「やっぱり、湖遊び一緒にしたかったんだ!」
「したくありませんから大丈夫です」
「じゃあ、なんでこんなしかめっ面~?」
「いつもと同じ顔です」
そう言われればそうなんだけど、そんな事ないんだよなぁ。
「ふて腐れた顔でもそうじゃなくても、一緒に写ってるの嬉しいし、それもまた思い出の1枚だよな!」
「オリ! 良い事言うわね! でも次は全開で笑顔にしたいから、くすぐってやろうかしら」
「いいね~」
「よくありません」
「じゃあ、俺、フェス押さえる係な」
「なんの嫌がらせですか」
「ははは! 楽しそ~。俺はそれ見て笑う係にしよ~」
「断固抵抗します」
「そう言われると本気でやりたくなるわね~」
リリーならやるだろうな。
◇
あっという間にシェアハウスに戻って来た。
「「「ただいま~」」」
「おっかえり~」
「?」
皆で顔を見合わせる。
皆ここにいるよな? 誰だ?
頭に『?』が浮かびながら居間へ行く俺達。
「ばあ!! 来ちゃった!」
「サラさん?!」「ええ〜っ?!」「サラ?!」「……っ!」
「あはは! ビックリしたかぁ?!」
おいおいおい。
「驚いたか~?!」
驚くもなにも……
「サラさん……どうしてここに?」
「私も一緒に住もうと思ってさ~」
何ぃ?!
「お前らと遊ぶの楽しかったし! 来ない理由がないよな」
「ダンジョンの管理人なんだろ。してなくて良いのかよ」
「管理人はどこでもここでもできるし~。問題ナッスィング!」
問題ありありだろうが。
「なんでここが分かったの?」
「宿帳に書いてあったからさ~」
盗み見て。
ライとリリーもさすがに引いてるし。そりゃそうだよ。
「出ていってください」
さすがフェス。毅然としてる。
「はぁ? なんでお前にそんなこと言われなくちゃならないんだぁ? おっと、いけね。なんでそんな事、フェス君に言われなくちゃいけないのかなー?」
「ここはシェアハウスです。あなたは住人ではない。部外者は出て行ってください」
「ざぁ~ん、ね~ん、でしたぁ。住人でぇ~す!」
サラの手にあるのは、入居者証だった。
「いつの間に……」
ライが呆然としている。
「こんなんちょちょいのちょいよ!」
「え? ここって冒険者専用よね?」
「そだよ~ん」
「じゃあ、サラは冒険者なのかよ?」
「そだよ~ん」
完全にふざけてんな。
「んじゃじゃ~ん!」
「ええ?!」「え〜」「嘘だろ?!」「!!」
その手にあったのは冒険者の最高ランクカード『ミスリル』だった。
何ぃ?!
「ミスリルカード?! しかもランク30!!」
「わっはっは! ひれ伏せぇい」
「凄い!! ミスリルカード持ってる人なんて見た事ないわ!」
「ただ者じゃないとは思ってたけど、それ以上だったね~」
「わっはっはっはっは! そうだろう! そうだろう! 敬えよ!」
「でも、ここって低ランク冒険者用のシェアハウスよね?」
「ランク30とか普通に断られるんじゃないの?」
「はっはっは! ここのオーナーはたかだかランク『27』! ちょちょいと脅せば……じゃなくて、ちょっとお願いすればなんてこたぁないのよ」
脅したな。
「オーナーが許可出してるなら、私達がどうこう言う権利はないけど」
「だね~」
「サラさんは今回やってはいけない事をして今ここにいますよね」
珍しくリリーがキリッとして話している。
まさかこんな一面があるとは。
「宿帳の盗み見とかとんでもないからね〜」
ライはいつも通りの話し方だけど、リリーの援護をしている。
「一緒に共同生活するなら、プライバシーとか最低限の気遣いとかはちゃんとして下さい」
おお、言うべき所はちゃんと言う。
しっかりしてんな~。
「おう! まかせろ! 仲良くしてぇしな!」
本当に分かってるんだろうな。
「私は嫌です」
おお、フェスが波風立てて行くぅ。
「はぁ~……フェス君だっけ? ソパールで注意してやっただろ。否定するのは良くないって。本当に嫌なのであれば普通に、無難にスルー……じゃなくて受け流しておかねーと、フラグ回収するぞ」
うわぁ。めっちゃフェスが睨んでるぅ。
「では! どうぞご自由にっ!!」
ドスドスドスとフェスらしからぬ足音を立てながら、部屋に戻って行った。
「フェスどうしたのかしら?」
「あんなんほっとけよ。あいつの為に言ってやってんのによ〜」
フラグ回収ってなんの事だ?
「じゃあ、私ツキさんの隣の部屋だから~。よろしくな~!」
サラが回りながら去って行った。
フェスとは対照的にごきげんだ。
「俺達も、もう休もうか~」
「そうね。なんかどっと疲れたわね」
ライとリリーがのろのろと自室へ戻って行った。
俺とツキは顔を見合わせ、サラの部屋を見つめるのだった。
「ではまた次回」




