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<フェス・ティバール>

「一体何をしているのでしょうか」


 たくあんぬを無事購入し、湖まで来たものの……


 オリはリリーに頭を水面に押し付けられもがいている。

 ライはツキさんをお姫様抱っこしたかと思ったら、湖に投げ飛ばしているし。

 

 湖とはああいった遊び方をするのですか。

 私は御免被りますが。


 オリがリリーを背中に乗せて湖で泳ぎ出しました。

 リリーはなぜ馬乗りなのでしょう。

 しかしながら、人を乗せてあのように泳げるとは色んな意味で私には無理です。

 

 ……あれは泳いでないのでは? 手も足も動いていない。なるほど、水の中で浮く魔法をしているのですね。確かにああいった使い方もできますね。したいとは思いませんが。


 ん? ツキさんが泳いでいるライの背中に掴まっているではありませんが!! ライが平泳ぎして進んでいるので、湖を泳いであげているのだと思いますが、あれはよろしくありません。ライの首に腕を回して掴まるなど密着しすぎです。後で注意しなければ。


 皆して楽しそうにしていますが……


「何がそんなに楽しいのやら……私には理解できませんね」


「そんなもん、一緒に湖に入ってみりゃいいじゃねーか」


「?!」


「お前さっきから何ポリポリ食ってんだ?」


「あなたは……」


「たくあんぬかよ。友達見ながら食うたくあんぬって旨いのか?」


「な、何をしているのですか?」


「あ? また会おうっていっただろ」


「サラ・ノエル!!」


「おい、呼び捨てすんな。サラ様だろうが」


「なぜ、あなたに様などをつけねばならないのですか」


「ダンジョンでは『あなた様』って言ってただろうが」


「あれはあなたという人を知らなかったからです」


「ま、なんでもいいけど。お前は向こう行かねーのかよ」


「あなたこそ、なぜここにいるのですか。私の事が嫌いなのでしょう。皆のいる方へ行けばいいではないですか」


「なんだそれ」


「私に『面倒くさい奴だからあっち行け』と言っていたではないですか」


「そんな事言ったっけ? 覚えてねーな」


「人にあんな事を言っておいて、覚えてないとは」


「何お前? 根に持つタイプ?」


「はい、根に持つタイプですが何か?」


「ふ~ん、執着するタイプの人間ね」


「何が言いたいのですか?」


「別に~。お前みたいな奴に好かれたら大変そうだと思ってな」


「あなたの事は絶対に好きになりませんから安心してください」


「おいおい、フラグを立てるなよ」


「フラグ?」


「お前それ、私の事好きになっちゃうヤツじゃん」

 

「は?」


「いくら私が魅力的だからってな~」


「あなた、人の話聞いていましたか?」


「聞いてたぞ。後々私の事好きになるんだろ?」


「そんな事、一言も言っていませんよ」


「あちゃ~。この手のタイプは自覚したとたんグイグイ来るからな~」


「私が女性にグイグイ行くことなどありえません」


「うわ~。来るじゃん。そんな事言うからほぼ確定しちゃったじゃん」


「話にならない」


「お前な~。否定の言葉は呪いの言葉だぞ」


「何を言って……」


「呪いの言葉ってのは大袈裟かもしれないが。否定すればするほど、固執する。ましてやお前みたいな執着しやすい人間がラブ方面で否定の言葉なんて口にした日にゃ、私の事が気になって気になってしょうがなくなり、惚れてしまうという典型的なパターンだ」


「なん……」


「分かるだろ。お前みたいな普段は『何も興味がありません』みたいなタイプは、一旦興味を持つとその事ばっかり考えやがる。ましてや興味があるクセに否定なんてしたらもうその後は見えてんだよ」


「いい加減にしてください」


「そうだな、構ってると、どんどんその日が近くなってくるだけだからな」


「っ!!」


「は~……マジになる奴はからかう事もできないからな~」


「もう、いいです。話しにならない」


「はいはい。危ないからお前にはもう近寄らないよ」


「……」


「あ、コレもダメか。難しいな。さじ加減が」


「……」


「固まっちゃったか。もう放っておいて。ツキさんとこ行こう~っと」


 ◇


 理解できない。

 あのサラという女性。

 何者かも謎ですが、言動が理解できない。

 私があの女性を好きになる?

 そんな事あるわけがありません。

 あの女性に魅力など感じない。まぁ、女性にも男性にも魅力を感じた事などありませんが。むしろ不愉快だ。言葉使いも悪いし。断言できる。私の知りえる人の中で最も不愉快と言っていい。


 ただ、この否定の言葉、感情があの女性の事を強く考えさせるというのは分かります。

 本当に興味がない場合、考える事すらない。興味はある。謎の存在なのだから。ですが、ただそれだけ。何者なのか気になるだけです。異性として気になる事などない。絶対ない。ないないない……ありえない……。


 ◆


「来ちゃった!」


 うげぇ。


「サラさん?!」


 『来ちゃった!』じゃねーよ。


「あ……」


 ライが真っ赤になっている。


 分かるぞ。耳の感触を思い出しちゃったんだろうな。


「なんでここに?!」


 リリーだけ通常運転だな。


「この間、湖に行くって聞こえたからさ~」


 こいつ、盗み聞きしてやがったのか。


「遊ぼ遊ぼ~」


「ちょっとライ! 思い出してないで、こっち来なさいよ!」


「何思い出してんだ?」


 お前が耳を噛んだ事をだよ。


「サラさんこの間ライの耳はむはむしてたから」


 はむはむて。


「ああ、あれな! この間は悪ふざけして、ごめんな! 今日は舐めたりはむはむしたりしないからこっち来いよ!」


 ライがツキを乗せて、こっちへ泳いで来た。


「おいおい、ツキさん背中に乗せるなんて、なんのご褒美だよ」


 なんだそれ。


「この間から思ってたけど、なんでツキちゃんだけ『さん』づけなの?」


 薄目になって、サラを睨むツキ。


 前から思ってたけど、薄目である必要あるのか?


「ええ……さんづけはだな……『ツキサン』って名前かと思ってたわ! わはは!」


 それは苦しいだろ。


「なあんだ! そっかー! でも『ツキサン』って名前だと『ツキサンさん』になって変だよねー!」


「だなー! ツキサンさんなんて呼べねーよぉ!」


「「あはは!」」


 リリーの明るさって本当良いよな。


「何で遊ぶー?!」


「ビーチボールでもしようぜー」


 ビーチボールなんてこの世界にあるのか?


「ビーチボールって何?」


「あ、知んないか? 今出してやるよ」


 サラが指を鳴らすと、ビーチボールが出て来た。


「ええ?! 今どこから……?」


「でー! これで、こうよ!」


 サラがビーチボールを俺に打って来た。


「ほっ……」


 普通にバレーのトスでサラに返す俺。


「お〜、いいじゃ~ん」


 二人で何回かラリーを繰り返す。


「なにそれー! やるやるー!!」


「おっしゃー! 行くぞ~!」


「こんな感じ~?!」


 さすが、リリー。やったことないのに、見よう見まねでトスで返している。


「ライ、行くぞ~」


「は~い、ツキちゃん行くよ~」


 ライも普通にできてるな~。


 バコッ!


「ふぐっ……」「きゃあっ!」「うわっ」「あっ…」


 ツキがアタックしやがった。サラの顔面に思いっきりめりこんでいる。


「……あざます」


 なんでお礼言ってんだよ。


「やだ! 何?! サラさん顔真っ赤だよ!」


「痛くない? 大丈夫~?」


「むしろご褒美だから……」


 ペコリ。


 なんのペコリだよ。お詫びのつもりかよ。


「何それ! あはは! サラさん面白すぎる!」


「だね~、あはは!」


「ツキ、急にアタックしちゃダメだろ」


「こんな遊びした事ないんだけど!」


「これ、何でできてるんだ?」


「いーから、いーから。アタックOKでやろうぜ! あ、アタックってのはさっきツキさんがやったやつな」


「よーし! やるわよ~」


 バコ!


「ツキ! いきなりアタックからやる奴があるかよ! 何回かパス回ししてからだろーが」


「喜んでる」


 本当だ。


「ではまた次回」

フェスにフラグが立ってしまった。

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