表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/222

異世界の水用服

 よし、ダンジョンだ。

 ダンジョンに行ける。

 異世界といえば、ダンジョン。

 そして水着。いや、水着は違う。

 こちらの世界では水用服みずようふく

 言いにく。水用服だと夢がない響きだ。

 俺の中でくらいなら水着って言っていいだろう。

 いやいや、そうじゃない。

 ダンジョンだ。

 来たよ来たよダンジョンが。

 お待ちかねのダンジョンだ。


「うるさい。私の部屋で騒がしくしないでください」


 すみません。


「ごめん、ちょっと興奮してる」


「分かりますけど、何回リピートするんですか。

 ダンジョンと水着。ダンジョンと水着。

 聞かされる身にもなってください」


 本当に申し訳ない。


「俺、恋人もいなかったけど友達もいなかったから。海というか水場で遊んだ経験ないんだよね」


 いや、そんな目で見ないで。


 違う、違うよ?

 俺の中で友達といえる人がいなかったというか。

 知り合い? みたいな。


 いやいや、泣くよ。

 そんな目で人を見るんじゃありません。


「あなたが友達という相手は世間でいう所の親友を指す。という事でいいですか?」


「そうそう。そんな感じ。

 俺、心開ける相手いた事ないんだよね」


 …………。


「お願い、言葉を失わないで。

 ……ごめん、泣いていい?

 ちょっと自分で言ってて悲しくなってきた」


「せっかく、前世の記憶がある状態で転生したのですから、今回の世界では友達や恋人など大切な人を見つけてください」


「うん」


「あと、本当に泣かないでください」


 なんか、ツキが優しいと俺って本当にやばいんだと思って泣けてきた。


「ダンジョンと水着を思い出して下さい」


「そうだった! ダンジョンと水着だ!」


「水着ってなに?」


「うわっ! リリー!! いつからそこに!」


「え? 今来た所」


「なんか聞こえた?」


「聞こえてないよ?

 えっ! オリ泣いてるの?

 ごめん! まずい所に来ちゃった?」


「いやいや、何でもない何でもない。ダンジョンに行けるのが嬉しくて」


「それで泣いてたの?」


「お、おお。嬉し泣き」


「ならいいんだけど。で、水着ってなに? 水用服の事?」


「あ、そうそう。え~っと……俺の地元では水着って言ってたんだよ」


「ふ~ん」


「リリーは何しに?」


「ツキちゃんに水用服持ってきた」


「おお~」


「どれがいい~」


「どれどれ……」


「ツキちゃんに持ってきたんだけど」


「はい」


 どれどれ……ふむふむ。

 リリーのだから激しめのだと思ったけど、なんか……服だな。

 上はピラピラしてて、おへそがなんとか見える感じか?

 下は短いスカートというか。


「なんかどれも同じような感じだな。

 これなんか、ワンピースみたいな。服じゃん」


「水用服なんだから当たり前でしょ。なに言ってんの?」


 おやぁ?


「え? こういうのじゃないのか?」


 絵を描いてみる。


 我ながらよく描けた。

 ふふ、前世ではちょっと褒められた事もあるんだよな。


「はぁ?! こんなの下着じゃない! オリの変態!」


 パーンッ! 


 リリーが俺を平手打ちして走っていった。


「えぇ……?」


 痛い……。


「ぷっ…ぷぷっ……っ! ……っ! ……っ!」


 ツキが丸まって震えている。


 その笑い方やめてくんないかな。


「はぁ……はぁ……。

 ……ふぅ~……オリの変態……くふっ! ……っ!」


 笑いすぎだろ。


「この世界の水着って、あの水着じゃないのか?」


「そうですよ」


 言えよ。


「楽しそうだったので。現地で分かったら面白いなと思っていたのですが、先にバレてしまいましたね」


 ひどい。


「失礼な。世界が違うのですから、同じだと思わないでください」


 そうですね。


「はぁ~……言われてみればそうか。

 というか、二度生まれて初めて女子にひっぱたかれた」


 まだジンジンしてる。


 叩かれたところをスリスリと触ってしまう。


「あんなので、照れるなんて意外だな」


 痛いけど、なんか感動してる。


「そっち属性ですか」


「そっち属性ってなんだよ」


「マゾヒズム」


 言うな言うな。


「そんなんじゃないわ!」


「では、なんなのですか?」


「ひっぱたかれた方じゃなくて、あんなんで照れて走ってどっか行くなんて可愛いなと思って。リリーも女の子なんだなって意味だよ」


「ほほぅ」


「なんだよ?」


「いえ、別に」


「別にじゃないだろ」


「いえ、良い傾向だなと思いまして」


「はあ?」


「亀の歩みでも一歩一歩進めばそれでいいのですよ」


「何言ってんだ?」


「あなたは長生きして老衰で死んだわりには本当に未熟ですね」


 それは普通に傷つくぞ。


「それとも今世のオリに引っ張られているのでしょうか? あまりに未熟すぎる」


「俺は昔からこんなんだよ!」


「それもそうですね。もっと頑張りましょう」


 うるせー。


「そんな事はもういいんだよ。どれにするんだ?」


「何がですか?」


「水用服だよ。やっぱ青だろ。青はこれしかないぞ。

 ……ちょっとお前には大きいか?」


「なぜあなたが選ぶのですか」


 水用服を持って、ツキにかざしてみる。


「着てみろよ」


 バーンッ!


「ごはぁっ」


 3回転する俺。


「歯、歯はぶひか……」


「おや、豚がいますね」


 ひどい。


「少しひっぱたいただけではないですか。二度の人生で二度目ですね。おめでとうございます」


「お、おまふぇ……何ひぃてくれるんふぁよ」


「すみません、照れてしまったようです」


 嘘つけ。


「こういうのお好きですよね?」


 だとしたらド変態だろうが。


「おや、違いましたか」


「ぐぞっ! ふぇっかく、アドヴァイふしてやっふぁのに」


「大きなお世話です」


「ぢゃあ、どふぉれにすふんだよ」


「この青色のですね」


 なんなの?


「ふっ……私は青が似合うようですので」


 試着しろよ。


「また叩かれたいのですか?」


 はぁ? サイズ合わなかったら脱げちゃうだろうから言ってやってんのに。

 お前はまな板なんだから。


 ドスッ!


「ぐはぁっ」


 みぞおちぃ……。

 ごめんなさい。

 俺が悪かっ……ガクゥ……


 そして俺は意識を失った ――――


  ◇


「……っは! 生きてる?! 俺は生きてるか?!」


「殺すわけないでしょう」


「痛く……ない……」


「さすがに回復かけておきました」


「怖」


「女の子を怒らせてはいけませんよ」


 女の子って……。


「リリーにも謝っておくように」


「あ、それはそうだな。ちょっと行って来る」


 ……。


「なんて謝ればいいんだ?」


「何か言いましたか?」


 考えてくれるわけないですよね。


「ではまた次回」


 ◇


「リリー? いる?」


「何?」


 ドアの隙間からジロリと覗くリリー。


「あの……さっきはごめん」


「……オリがあんなの描くとは思わなかった」


「うん。あの……俺が昔住んでたところの水着……じゃなくて。

 あー……水用服があんなのだったから。悪気はなくて……」


「オリがああいうの好きなわけじゃないの?」


 もちろん好きです。


「違う違う。あれが普通の世界だったから」


「世界?」


「あ! 地域、地域」


「ふ~ん……そうなんだ。すごい地域だね」


「う、うん。でもごめん。

 あれが普通じゃないなら完全に気持ち悪かったよな」


「うん」


 即座に大きく頷くリリー。


 返事はや。


「嘘……ちょっとビックリしただけだから。

 私も叩いてごめんね」


 おお、笑ってくれた!

 俺は許されたのか!


「ははは、痛かったけど。いい勉強になった」


「ふふ……何それ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ