俺の風魔法
「じゃじゃ~ん!!」
「おめでとう!」
「やったな~」
「ポリポリポリ……」
「おかげ様で、我々『オリ&ツキ』アイアンカードになりました~」
パチパチパチ……
「明日はお祝いに夜ご飯食べに行く?!」
「いいね~」
「いやいや、アイアンカードと言ってもランク3だからさ」
「カードの種類が変わるってのは冒険者にとって嬉しい事なんだから行こうよ!」
「お祝いお祝い~。おごるよ~」
「え? いいの?」
「カードの種類は最大でも6回しか変わりませんし。ミスリルカードのパーティーにいたっては数える程しかなれません。
実質、普通のパーティーは行けても5回まで。その内の1回なのですから、大いにお祝いしましょう。ライのおごりで」
「いいよ~、おごっちゃうよ~」
「よっ! ライ様! 太っ腹! 格好良いっ!!」
リリーが拍手する。
「こんな時だけ調子いいね~」
「えっ?! 本当にいいのか? そんなつもりなかったんだけど。嬉しくて見せたかっただけで」
「もちろんいいよ~。
ね~、ツキちゃんお祝いしたいよね~」
コクリ。
「よしよし」
ツキの頭をなでるライ。
本当にライにはツキが何歳に見えてるんだか。
「どこ行く、どこ行く?!」
「そういえば、北の広場の横に新しい店ができたって聞いたな~」
「ではそこにしましょう。たくあんぬは置いてあるでしょうか」
「じゃあ、北の広場で18時に待ち合わせにしよ!」
◇
さてと、お祝いしてもらう前に今日も今日とてレベル上げだな!
「そろそろオークくらい行っても良いのでは?」
「待て待て。俺は慎重な男。3人にどれくらいのレベルでオークに挑戦したか聞いてからにしよう」
「オークくらいなら行けますよ」
「まだレベル8だぞ! あんな大きい豚、怖いだろうが」
「好きにしてください」
ツキがため息をつく。
「とりあえず、今日はまだゴブリンだ」
「では魔法で行きましょう」
「現在の俺のレベルは8」
体力は544、魔力の量……長いな。
そういえば、左手の聞き方に合わせる必要ないな。
HP544、MPは102。
うん、しっくりくる。
「左手が泣きますよ」
うるせー。
【 T T 】
そういうのはどこで覚えてくるんだよ。
「感覚では火の球がMP3くらいな感じだから、34回は放てると思ってるんだけど」
「火以外にも使ってみたらどうですか」
「やっぱ水かな」
「ありきたりですね」
なんなの?
「失礼しました。つい本音が」
おい。
「え~…、じゃあ土か」
「その辺りの石ころ投げてればいいじゃないですか」
なんなの?
「じゃあ、風にする」
「良いのではないですか」
「風ね……」
…………。
「なんか、風ってイメージ湧かないな。扇風機しか出てこないわ」
「風魔法に謝ってください」
「なんでだよ。
いや、風魔法といえば色々あるのは分かるんだけどさ。
切り裂いてみたりとか?」
「やってみたら良いではないですか」
「いや、だから扇風機がモンスター切り裂いたら怖いだろ」
「はい?」
「俺の中で風は暮らしを支える感じというか、便利だったり穏やかなイメージで攻撃系じゃないんだよな」
「あなたがそう思うなら、攻撃系の風魔法は生まれませんね」
「そうなっちゃうよな~。う~ん、防御系ならありなのかな~」
「時間はあるのですからゆっくり考えれば良いのでは?」
「あ! 掃除機とかいいかも!」
「はい?」
「吸うんだよ! うわー! めっちゃいいこと思いついた! 俺天才かも」
「ちょっと! どこへ行くんですか?!」
「こっちこっち!」
早速スライムがいる所にやって来た。
「見てて、見てて」
「なんですか一体」
「行くぞ……」
スライムを吸う!
シュパ!!
「ほらな!」
モミモミ。
「お~、ぽよんぽよんだ」
「今のはなんですか」
ツキが怪訝な顔をする。
「吸引力だよ、吸引力」
「はぁ……」
「掃除機ってゴミ吸うだろ! サイクロン! それよ! 超便利!」
「なるほど」
「これはもう天才だろ。逆転の発想だろ。捕りに行かずに、こっちへ吸って引っぱるっていう。無傷! 便利! 可能性無限大! どうこれ?!」
「確かにそうですね」
「これもうなんでも応用できるじゃん。すごいな俺」
「よくそこまで自画自賛できますね」
「見てて見てて。あそこにゴブリンいるじゃんか」
「いますね」
「行くよ?」
「どうぞ」
ゴブリンを吸うっ。
ギュン!
「んでぇ……」
バシュッ!
「見た?」
「これは……なかなか……」
「なっ?! ちょっと遠くにいる敵でもギュンッと吸って引き寄せて、野球のバッターのようにフルスイング1発よ!」
まぁ、フルスイングじゃなくても普通に斬ればいいんだけど。
そこはね?
「魔石も吸えるぞ」
持ってる魔石を地面に置いてみる。
「さ~、お立会い、ちょっと重さのある魔石でもぉ~」
「実演販売ですか」
「この魔法があれば~」
魔石を吸うぅ。
置いていた魔石が俺に集まり、構えていた鞄に収納された。
「はい! このとおり~。
な?! どうよ」
「感心しました」
「え?」
「私にはなかった発想です。今後とも、その感じを大切にしてください」
うわ、ツキが笑ってる。
「なにか? 私だって良い事であれば普通に褒めますよ」
「嬉しいー。また褒めてもらえるように頑張ろ~っと」
「なんですかそれは」
「あれ?! そういえば、スライムどこいった?」
「とうに逃げましたよ」
しまった、ちゃんと揉んでない。
「あなたという人は……台無しですよ」
「揉むっていうかさ。
感触の確認というか……。
うん、まぁ、柔らかかったけど。
実際はあんな感じじゃないよな。たぶん」
「何を言っているのですか?」
「あれ、俺なに言ってんだろ?」
「せっかく褒めていたのに……」
「あ! 待ち合わせに遅れそう!」
「ではまた次回」




