お薬コーナー
「あ、いないいない」
良かった~。
カマキリおじさんいなくなってたわ。
「では、待望のお薬見ましょうか」
「おう!」
あらためて、見ると……
異世界のお薬屋さんは俺の知ってる薬局とは違うな!
お薬屋さんっていうより。酒屋さんみたい。
なんせ、薬が瓶に入ってるから。
「ふお〜。端から見てもいい?」
「どうぞ」
さてさて〜。
異世界のお薬屋さんの第1商品な〜んだ!
……なんだコレ。
目の前には山積みになっている、そこそこ大きい皮袋。
持ってみるとぽちゃぽちゃ音がする。
良い音~。
液体だな。
「水ですね」
「水?」
「3リットル入りの水です」
「水売ってんだ」
「何、阿呆みたいな顔してるんですか。前の世界でも水は売っていたでしょう」
そうか。確かに。
「皮の袋に入ってるんだな」
「ペットボトルがありませんからね」
「高くつくんじゃないか?」
水を入れられる革袋って、革袋の方が高そう。
「リサイクルですよ」
「リサイクル?」
「基本的にこの世界では、飲み物や薬瓶など使用後に返します」
「返さなかったらどうするんだよ」
「返さない人もいるので、割高設定なのですよ。そして、袋や瓶を返せばギゼルも少し戻ってきます」
「へ〜」
ビール瓶みたいな扱いだな。
まぁ、勿体ないもんな。
「この水袋の隣の白い錠剤っぽいの何?」
1cmくらいの丸い薬のようなものが、透明な瓶の中に1個だけ入っている。これは見本として置いてあるだけで、小さい紙袋でパッケージされた状態で売られていた。
「5個入りで30ギゼルだから、1個6ギゼルか」
「塩飴ですね。熱中症予防にセットで購入させようと隣に置いているのでしょう」
どの世界でも考える事は一緒だな。
「同じ人型ですからね。体の構造は一緒です」
人型て。まぁ、そりゃそうか。
あ、しまったな。
水袋をアイテムボックスの拡張用に買っておけば良かったけど、アイテムボックスにはホットトドッグが入ってる。さすがに潰れるよな。
「私のアイテムボックスに入れてもいいですよ」
マジで?
お前が俺の為に能力を使ってくれるなんて珍しいな。
「私の分のホットトドッグも入ってるので」
ツキの分も買っておいて良かった。
「じゃあ買おう」
「色々あるな〜。でも入ってすぐの商品は、前の世界と似たようなのが多いな。容れ物が違うだけで」
「おおっ! ポーション売ってるー!
6本セットとかあるぞ。
あ! 12本セットもある。
すんごい、沢山売ってるじゃん!
どうやって、仕入れてるんだ?」
「冒険者ショップですから、大量仕入れができるのでしょう」
「作る人、大変だな。
……ちょっと待て。なんだコレ。
ポーションだけで何種類あるんだよ」
「製造元が違います。ポーション屋も鎬を削っているのでしょう」
「ええ……1種類じゃないんだ。
……回復量100……回復量100……回復量100。
全部、回復量100なんだな。
どれ飲んでも一緒じゃないのか? 味か?」
「味も違いますが、実は回復薬には表示ルールがあるのですよ」
「なんだそれ」
「ポーションの回復限度表示は100までなのです」
「どういう事だ?」
「回復量が120の場合でも100までしか表示できないのです」
「120って表示すればいいじゃん」
「商売ですからね、横に120が置いてあれば商売敵は130にしてきますよね。
130が横にあったら140にしたりしたわけですよ」
「ほうほう」
「そうなるとキリがないので、ポーションは表示100までと決まったそうです」
「別に上げてけばいいじゃん」
「300からはハイポーションになります」
「なるほど」
「さて、ここからが面白いですよ」
「なにが?」
「つまり、限度表示は100ですが、実際飲んでみると100以上のポーションがあるのです」
「え?」
「100のポーションを探せ! ではないですが。
同じ価格帯でも効能が良いの悪いのあるのですよ」
「あ~、そういう事か」
「味もそうですが、飲んでみないと分からない物がありますからね。
ちなみに、人によって合う合わないがあるので、一概にこれが良いってわけでもないらしいですし」
「なんか詳しいな」
「私に知らない事はありません」
「嘘つけ」
「はい、嘘です」
「え~、じゃあ試しに1本ずつ買ってくか。
味の好みもあるしな。この間ツキが買っててくれたのがまだあるから、ないやつにしよ」
「これなんか、美味しそうですよ」
「ポーションに美味しそうも何もないと思ってたけど、味があるなら、そういうのもあるよな~」
「隣の棚はハイポーションです」
「おお! ハイな奴も欲しい~。
ただ俺、今の体力いくつだろ」
【 401だよ~ 】
「じゃあ、ハイなやつもあっていいな。
3本くらい買っていくか」
「3本でいいのですか?」
「他にも見たいしな」
「エクスポーションもありますよ」
「エクスッ……う~ん、俺にはまだ早いな。
買うってよりは、まずは宝箱から取りたいな。って、宝箱とかあるのか?」
「ありますよ」
「あるんだ。本当ゲームみたいだな」
「そうかもしれませんね」
「ああ、こっちの棚はもう未知の世界だな。瓶の作りからして違うわ。お高い」
「こちらに毒消しがありますよ」
「毒消し! 見たい見たい。
これもやっぱり種類あるのかな?」
「『ザコモンスターの毒なんてコレ1本。初心者向けのイチーゴ味』だそうです」
「毒消しがイチーゴ味なんて嫌だな。
毒の強さに応じて毒消しがあるのか?」
「まぁ、それはそうでしょうね」
「『そこそこのモンスターの毒にはコレ! 危ないと思ったらすぐ飲もう!』だって」
「ザコモンスターの毒にも良いらしいですが、値段が高いのでザコモンスターの毒で使ったら損した気分になりますね」
「おい、見ろよ『猛毒消し』だって!」
「『すんごい強い毒を受けたらコレ飲んで! 死の淵から生還しよう』ですか…」
「待て待て『強い毒ではない場合は劇薬となりますので、ご使用の際には十分注意してください。命にかかわります』って、こんなんあるのか? 判断難しすぎるだろ」
「まぁ、毒にも薬にもなる典型ですね」
「これ見てたらキリないな」
「でも見たいのでしょう」
「見たい~」
「ではまた次回」




