魔石正義施人
「また魔石正義施人だわねぇ」
ギルドの拾得窓口のおばさん……
お姉さんが頬に手を当てて話す。
魔石正義施人? なんだそれ。
「なにそれ?!」
リリーがライの背中を台にして身を乗り出す。
あ、胸が……
柔らかそ……いかんいかん。
「なんですかそれ?」
ライが背中のリリーを押しのけながら聞く。
「最近魔石がよく落ちてるのよぉ」
「それでなんで、施し人なんですか?」
「取りに来ないのよぉ!」
「それなら魔石ど忘れ人じゃない。ん? 魔石興味ない人かしら?」
「リリーは静かにしてろよ~」
「なんですってー! えいえい!」
なんていいながらライの背中をぐいぐい押してるが、その度に胸がぐいぐい当ってる。
ぐいぐいぐいぐい……
あれはなんのご褒美なんだ。
「やめろって~。取りにこないだけなら、その人がどこかに行ったとかじゃないんですか?」
ライの背中にはあの弾力が届いてないのか。
「それがねぇ……」
ギルドのおばお姉さんが、周りをキョロキョロ見てから小声で話し出す。
「黙って魔石を懐に入れてる冒険者はボコボコにされてるのよ」
「「「ええっ?!」」」
興味がないんだろう、ツキとフェスは無反応だ。
「ちゃあんと、こうしてギルドに報告にしにきた子達はみぃんな魔石をゲットできてるのよぉ!」
なんと。
「ギルドに報告した良い子には魔石をあげて、報告しない悪い子には死なない程度に制裁をってね」
おばお姉さんがウィンクをしている。
長年の成果か凄く自然で上手い。
「それで魔石正義施人ですか」
「そうよぉ! 変わったことするわよねぇ~」
「なんでそんなことするんでしょう?」
「知らないわよぉ! 真面目な子が好きなんでしょおね〜」
「私たち真面目だもんね~!」
嬉しそうに、リリーがライの衿をぐいぐい引っ張っている。
あ〜、締まってる締まってる。
「うぐ……」
ペシッ!
「いったい!」
「こっちは星が飛んだよ! 落ち着け~」
「ごめ~ん」
「青春ねぇ〜」
おばお姉さんが眩しそうに二人を見ている。
なぜなら、ただイチャイチャしてるようにしか見えない二人だからだ。
「だから皆もこの魔石、きっと貰えるわよぉ〜。良かったわねぇ~」
「ライとリリーのおかげだな」
「なんのなんの!」
「あぁっ! オーク1体しか倒してない! どうしよっ!? 戻る!?」
「いいわよぉ! そんなの! 拾得物持ってきてくれたパーティーは免除だからぁ」
「そうなんですか?」
「そうよぉ。こっち来て、戻って、また来てなんてしてたら日が暮れちゃうでしょぉ。さすがにそれで依頼達成ならずとかしないからぁ。安心して」
ほぉ~……良かった。
「色々教えて下さってありがとうございました」
「いいのよぉ、仕事だし。あなた達いい子だし、爽やかだし、青春だし。見てて私まで若返った気分よぉ。魔石の保管期間終了したら、また連絡するからねぇ」
「「「はい」」」
そんな話しをしている後ろでツキとライはたくあんぬを食べていた。
なるべく小さい音で食べようと努力しているところに成長を感じる。
◇
「魔石正義施人だって!
どんな人だろ?! どんな人だと思う?!」
初の合同パーティー記念に夜ご飯は外ですることになった。賑やかな店内だから、リリーの大きな声も目立つことはない。
「さぁ?」
「もー、フェスはもっと興味持とうよ! ねね、オリはどう思う?」
「強いのは確実だよな。あんなに沢山の魔石、何回も人にあげられるんだから」
「だよねだよね! ライはどう思う?」
「そんな事したらダメだよな~」
「なんでよぉ!」
「だって、なんの経験にもならないじゃないか~」
真面目〜。
「強いランクの人ならオークとか何体も倒せるだろうけど~、弱い冒険者の為にそんな事してないだろ~。俺たちは1体1体と対峙して退治して成長していくんだから」
「上手いこと言いましたね。対峙して退治して……ふふ」
フェスがエダマメエー食べながら、笑ってる。
そんなんで笑うタイプなんだ。
しかも両手でエダマメエー食べるんだ。
お上品だね。
「そう~? 俺も上手い事言えたなって思ってたんだよ~」
あんな真面目な顔してそんな事思ってたんだ。
そして、片手エダマメエー食べる派ね。
イケメンはエダマメエーを食べてるだけで絵になるね。
俺はどうやって食べようかな?
皿に枝豆を出して、箸で食べちゃおうかな?
あ、枝豆って言っちゃった。
なんせコレ枝豆だから。
エダマメエーって名前の。
……俺やっぱ、エダマメエーは片手派だわ。
「ちょっと! 話しそらさないで」
「別にそらしてないよ~。最初は魔石をタダでゲットできたと思ってつい喜んじゃったけど~、わざとそんな事してるならダメかなって。施されちゃダメだろ~」
「そうだけど……でもさ、なんでそんな事してるかは気になるよね」
「全く気になりません。私はこのたくあんぬミックスが気になります」
リリーに目もくれず、メニューを見ながら唸るフェス。
ブレない男だ。メニュー選びはブレまくってるが。
「なによー、気になってるの私だけなのー?!」
「俺も気になってるよ」
「オリー! 私にはオリしかいないわー!」
などと言いながら、リリーが俺の腕に腕をからませ、俺の肩に頭をすりすりしてくる。
こっ! これは!
ついに来てしまった、胸の弾力。
あ……むにむにしてる。
「おい、リリーやめろよ~。オリが困ってるだろ~」
いや、全く困ってない。
天井向いてたのは感触をより感じようと思って集中してただけだし。
「そんな肉の塊押しつけられたらオリが可哀想ですよ」
いや、凄く嬉しいです。
「ごめんねー、オリ。つい、嬉しくなっちゃって。気をつけるね」
「全然全然! 大丈夫、大丈夫! ほらっ、ツキなんて、板みたいだから、ちょっと驚いただけで……え……?」
3人が凄い顔でこちらを見ている。
「なんてこと言うのよ」
「なんてこと言うのですか」
「なんてこと言うんだよ~」
すんごく怒られた。
下を向いて肩を揺らすツキ。
コイツ絶対笑ってるだろ!
「ではまた次回」




