浮ついた俺
「詠唱とかしないんだな」
「え、詠唱……とかは……
恥ずかしくないですか?」
なぜもじもじする。
「俺は見た事ないから分かんないけど~。
フェスがそんなに顔赤くするなんて~。
詠唱って恥ずかしいんだ~」
なんかライがセクハラオヤジみたいになってるな。
「えー! 格好良さそうよ! 見た事ないけど」
「俺も見た事ないけど、カッコ良いイメージあるな」
ファイアッ! ボーッル! って方ね。
まぁ、無詠唱もカッコいいって思ってるんだけど。
「見た事ないのに、よくそんな事言えますね」
「じゃあ、やってみてよ!」
「はい?」
「それいいな~! フェスやっちゃいなよ~」
「嫌ですよ! 何を言ってるんですか!」
「減るもんじゃないし。
お・ね・が・い~」
リリーがものすごくウインクをしている。
ウインクうま。可愛いとはこういう事を言うんだろうな。
「……おえ」
まるで汚いものでも見るかのような顔をするフェス。
「ちょっとー! ひどい! ひどくなーい?!」
おえ、はさすがにひどい。
「ひどくありません。
本当に吐かないだけ感謝してください。
あと魔力が減ります」
「何よー!」
「はいはい、もう終わり~」
などと、わちゃわちゃしてる間にツキが魔石を拾ってきた。
「これはこれは、ツキさんありがとうございます」
「さすがツキちゃん。ありがとうね~」
コクリ。
なんかもう、無口キャラというよりコクリキャラだな。
薄目で俺を見てくるツキ。
「まぁ、詠唱とかもういいんだけどさ。
さっきのって火魔法?」
「はい」
「他にもできるの?」
「できますよ」
「「「おお~」」」
パチパチパチ…
みんなで拍手する。
タイミングはバッチリだ。
「それくらいは当然です」
分かりやすくフェスがどやっている。
「じゃあ、次はオリだな!」
「え?」
「そうよ! オリの番よ!
オークどっかにいないかしら?! 見てくるね!」
「俺も探してくる~」
といってリリーとライが駆け出していった。
早。
二手に分かれてもう姿が見えない。
「慌ただしいですね」
「賑やかだよな」
「良く言えばそうですね」
「そういえば、フェスは杖使ってるよな」
「魔法する時は使ってませんよ」
「え?」
「持ってるだけです。私疲れやすいので」
「え?」
「こうですね」
杖にもたれかかるフェス。
「おじいちゃんじゃん」
「ははは」
そこ笑うんだ。
魔法の杖とかではなく、完全に身体を支える用らしい。
「あとは歩くの疲れた時とかに、これに乗ったりします」
「え?」
自転車の後ろのお姉さんの乗り方で杖に乗り、フェスがふわりと浮く。
「すげえぇええええっ! マジか!」
「見たままです」
フェスが俺とツキの周りをくるくると飛んでいる。
「そんな事もできるのか?!」
「魔法使いですから」
「えー! 俺もやれるかな?」
「どうでしょうか。
他人にあまり興味ないので分かりませんが。
イメージできるかどうかとか、想いの強さですかね」
「頭でごちゃごちゃ考えると、詠唱必要とかなんとか言ってなかったか?」
「イメージとごちゃごちゃを一緒にしないでください。私の場合は飛んだら楽! 楽したい! 歩きたくない! と思ったら、杖に乗って浮いてました」
なるほど、こういう単純明快なのが良いわけね。
「その画が浮かぶと同時にパーン! とくるわけですよ。オリもそれができれば、可能かと思いますよ」
「おお~」
飛びたい飛びたい。
「あ、オリ浮いてますよ」
「え?」
俺はフワフワと50cmくらい浮いていた。
「マジか?!」
「これは……なかなかやりますね」
「ちょ、俺すごくない?」
「普通に凄いと思います。
もっと高くなります? 進めたりしますか?」
「お、おう。やってみる」
俺は横に進んだ。
すんごいフラフラしてる。
「お、おお……
難しいな……ほっ……よっ……はっ!
ん~……こうか?! ……こ、こうだ!!」
高さは変わらないが、今度は少しずつ前進している。
「上手、上手~。
こっちですよ~。こっちこっち」
フェスが俺の前にいて手を広げて見守ってくれている。
俺は赤ちゃんかな?
「うわっ……」
どさっ。
「痛た、落ちた……難しいな」
「いいえ、これはかなり大したものですよ」
「そう?」
「ええ、知りませんけど」
知らんのかい。
「ビックリした~。俺浮いちゃったわ、ツキ」
「見てたから分かる」
そうだね。
「ちなみにフェスは杖なしで飛べるのか?」
「試した事がありませんね。
試す気もありませんし」
「何で?」
「疲れそうで」
そうですか。
「杖があると楽っていうイメージがあるのかな」
「そうかもしれませんね。
あと、身ひとつで浮くと……
私の格好に合う気がしませんので、それも影響しているのかもしれません」
「確かに。下穿いてないから、そのまま飛んだら見えそうだもんな」
フェスの格好はズボンがないタイプで、魔法使いと神殿関係者の間みたいな服だ。
ちょっとでも汚れたら確実に目立ちそうなくらい白で、しかも金糸で繊細な刺繍が施されている。
「私を変態のように言わないでください」
「ごめんごめん。
ちなみに素朴な疑問なんだけど」
「なんですか?」
「その服の柄って何?
よく分からないんだけど」
「よくぞ聞いてくださいました」
フェスの瞳がキラキラしている。
「なんだよ」
「たくあんぬです」
「は?」
「これは特注のたくあんぬ柄なのです」
何言ってんだ。
「さすが! オリには分かりますか!
うん、うん! 飛べるだけありますよ~」
いや、分かんない。
「うん、そうだと思ったよ」
「ぶっ……」
ツキが吹いていた。
「くしゃみ」
「これは雪の結晶のように、たくあんぬの結晶をイメージしているのです」
たくあんぬに結晶とかあんのか?
詳しい人、いたら教えて。
「オリ、聞いてますか?」
聞いてませんでした。
「聞いてなかった」
「も~、困りますよ!
いいですか―――― 」
などと、延々と話していた。
二度と聞くまい。
「リリーとライ遅いな」
「そういえばそうですね。
もっと話していたいですが、見て来ますか」
「ではまた次回」
フェスと急速に仲良くなった感がありますね。
【 フェスの好感度が2上がったよ 】
「好感度まで教えてくれんの?!」
【 書いてみただけだよ 】
「っだそれ!」




