神殿の偉い人
案内してもらった部屋は真っ白で、調度品まで真っ白だった。
綺麗すぎるというか、白すぎて落ち着かない部屋だな。
掃除が大変そうだ。
「今から神官長が参りますので、少々お待ち下さい。
それまでこちらをどうぞ」
出されたのは緑茶とたくあんぬだった。
なんでたくあんぬなんだよ。
「ありがとうございます」
「うわわ♪ 来た甲斐がありましたよオリ!
神殿のたくあんぬはなかなか食べられませんよ!」
フェスのテンションが上がっている。
そりゃなによりで。
「ポリッポリッポ……
ポリポリッポ! ポリッポリ!」
「嬉しいからってリズミカルに食べるんじゃないよ」
器用だなオイ。
「私がたくあんぬにハマったきっかけはこのたくあんぬなのです。この味を求めるあまり、手作りまでしてますが、なかなかこの高みには手が届きそうにありません」
さいですか。
フェスがたくあんぬを掲げながら、うっとりとしている。
なんちゅー顔してんだ。
そんなに絶賛するたくあんぬはどんな味なのかね。
どれどれ……と、ひとつ頂く。
「ポリ……うんま」
何これ。やば。
「これはおいしいわ。凄いな」
「それはありがとうございます」
は?
目の前に人がいた。
「え? いつ入って……」
「それは私が作ったのですよ」
フェスが凄い勢いで立ち上がる。
「アース神官長、この度はご対応ありがとうございます」
恭しくお辞儀をするフェス。
所作が美しい。
なになに? 偉い人? っぽいな。
俺もフェスを真似して立ち上がる。
「初めまして。オリ・ジナルです」
「はい、こんにちは。
神官長のヴィグラス・アースです」
うっっ! 美しい!
フェスも綺麗だと思ったが、それ以上だ。
銀髪の長い髪。そしてキューティクルが凄い。
異世界ってシャンプーとかトリートメントとかなさそうなのに。すわらっすわらっだ。
さらっさらの上ってことね。
肌も綺麗だし、顔の造形が整いまくっている。
もはや、人ではないような美しさだ。
この真っ白い部屋に似合ってる。
だけど、近寄り難いわけでもなく、凄い優しそう。
そして男性だ。
俺よりも5cmくらい背が高いもんな~……
フェスと同じくらいか。
顔つきが似てるから身長も似てるってか。
……羨ましくなんて……あるに決まってます。
(うるさい)
すみませんでした。
「そのたくあんぬは私が作ったので、美味しいと言って頂けると嬉しいですね」
たくあんぬ作っちゃってんだ。
見た目に反して庶民的〜。
「立ち話もなんですから、座りましょう」
「あ、はい」
「さて、と。早速本題に入りましょうか」
「はい!」
「オリ・ジナルさん……でしたね。
フェス君の報告によると、16歳で突然魔法が使えるようになったと」
「はい」
「何か心当たりはありますか?」
「えっと……特には?」
「オリの話しでは最近こけて頭を打ったそうです」
「なるほど」
神官長が真っ直ぐに俺を見る。
全てを見透かされているようだ。
「頭を打ったからではないでしょうね」
ギクゥ。
「極まれにいるのですよ。
成長してから魔法を使える者が」
「そうなのですか?!
そのような話しは聞いた事がなかったので知りませんでした」
「教えてないですからね。
事例が稀にしかない事を教えるより、他に教える事が山ほどありますから」
「確かにそうですね」
フェスが頷く。
「さて、オリさんはどうされたいですか?」
「どうしたいかと聞かれても、何ができるかもよく分からないし」
「それもそうですね。
オリさんは魔法を使えるようになりたいですか?」
「そりゃもちろん」
「しかしながら、オリさんは既に使えますよね?
今回は魔法を使った形跡があったことから、魔法を使えると判明したわけですから」
そうでした。
「どのように魔法を使ったのですか?」
うわー、これ聞かれるだろうなって思ってたんだよな。
どうしようツキ。
(適当に答えてみればいいと思いますよ)
雑。
(どのような反応をするのか見るためです)
なるほど。
「えっとー、確かゴブリンがいてー。
魔法でも使えたらなーって思ってー。
手から火が出て、ゴブリン燃えたりしないかなーって思ってたら、手から火が出てました」
(すっごい馬鹿っぽい)
うるせー。
「それはまた……」
馬鹿っぽくてダメだったか……
「魔法の本質ですね」
え、そう?
「きっと、オリさんは物凄く単純なのでしょうね」
突然の悪口。
「失礼しました。
私、たまに順番を間違えてしまいまして」
「いえいえ」
「魔法というのは、人によっては長ったらしい詠唱が必要だったり、無詠唱でも頭の中でごちゃごちゃ考えてだったり。というパターンが多いのです。
案外その方が魔法使いっぽいと思われる事が多いようですが。優れた人ほど、単純明快に魔法を放ちます。きっとオリさんは魔法の才能があるのでしょう」
褒められた!
(単純ですね~)
うるせー。
「さて、神殿についてです。
フェス君から聞いているかもしれませんが神殿が行っている活動は様々です。
魔法の才能があると分かった子には魔法について学んでもらっています。
6歳までに魔法があるかどうか分かるのですが、なにせ子供ですから、魔法の暴発などありまして。大人よりも子供の方が単純な思考回路な為、魔法が出やすいのでしょう。
ただ、魔法の暴発を起こしてしまう子は魔法に優れた子が多いですね」
へ~。
「さすがにオリさんは16歳ですので、いくら単純な方といっても子供のように魔法を暴発させる事はないかと思います。現にゴブリンに魔法を当てる事ができたと聞いています」
「じゃあ、学校には通わなくてもいいですか?」
「子供たちが通う学校には行く必要はない。と言って良いでしょう」
「そうなんですね」
さすがに、子供たちと机を並べるのはキツイからな。
「ただ、魔法の種類や発動、コントロールする方法など知っておいた方が今後の為になるかと思います」
「確かにそれは……知りたいですね。
教えて頂けたりするんでしょうか?」
「もちろん。オリさんが望めばお教えしますよ」
「俺にとっては助かりますけど。
神殿にとって得はあったりするんでしょうか」
「オリさんは、ここをどこだとお思いですか?」
「えっと……神殿?」
「そうです。神殿とは神聖な場所です。
より、神に近しい場所なのです。
損得などとは無縁の場所です」
おお……
「オリさんに魔法の才能を与えたのは神です。
神に選ばれたオリさんに知識を与える事は我らにも喜びであり、きっとこの世界の為になるでしょう」
うわぁ、神殿の人っぽい。
神に選ばれたとか言ってる。
たくあんぬ作ってる人とは思えないね。
教えてもらっても大丈夫かな?
(いいんじゃないですか。当初の目的だけさくっと果たせそうですし)
「じゃあ教えて貰っちゃっていいですかね?」
「もちろんです」
うっ……眩しい。
輝くような笑顔とはこのことか。
「では、詳しい説明はバーバラ君に聞いてください」
「あ! よろしくお願いします」
「それでは私は失礼しますね。
オリさん、頑張ってください」
そう言って、神官長は出て行った。
「では、手続きをいたしますのでしばらくお待ちください。
あ、たくあんぬのおかわり要りますか?」
「はい!」
俺の横にいたフェスが元気に手を上げて返事をしていた。
このたくあんぬ、おいしいからツキにも皆にも食べてもらいたいよ。
(今、下さいよ)
サイズ考えろよ。
服べっとべとになるぞ。
(ではまた次回)




