選択のとき(2)
「さて、異世界行きについて」
ごくり。
「の、前に。
順番待ちで普通に転生について説明しましょう」
「あ、はい」
俺のごくり返せよ。
「あなたの胃に入ってますよ」
俺の心読むなよ。
「勘です」
というか、唾液とかあるのか? 死んでるのに。
「ありません」
「絶対、勘じゃないよね」
「さて、順番待ちで普通に転生ですが」
あ、ごまかした。
「ごまかしてません。
で、順番待ちで普通に転生はそのままです」
「そのまま?」
「特にリスクもないまま。
ずーっっと待ってれば、生まれ変わります」
「へー……」
「はい」
「いつまで?」
「いつまででもです」
「いつまででも?」
「はい、順番はいつくるのかも分からないので超退屈です。
それがリスクみたいなものでしょうか」
「えー……」
「どこぞのテーマパークみたいに、あと100年とかプラカードとか立っていれば、待ち甲斐もありそうなものですが、そういうのないので。」
「うわー……きっつ」
「順番待ち嫌いな方は選びませんね」
マジか。
どうしよう。
悩むわコレは。
「さて、最後に異世界行きについてです」
そういえばまだ残ってたわ。
「こちらはあなたの大好物の異世界に行きます」
おお!
「メリットはあなたの望む異世界に行ける事です」
おお!
「転移でも転生でも召喚でも。
結構なんでもありです。
望めば前世の記憶もここの記憶も残せますし。
まぁ、異世界によくあるご都合主義ありありのありです。」
「言い方ぁ」
「ザ・テンプレでも良いですし、設定を頭に浮かべれば思い通りになりますね」
設定って言っちゃってる。なんだそれ。
都合良すぎて新手の詐欺かな?
「まぁ、恐ろしいくらい都合が良いですよね。
なのでもちろんリスクもあります」
ごくり。
「あなたの望む異世界に行けるのは、20億人に一人くらいの割合です」
なに?!
「もっと低かったでしょうか? あまり覚えてませんが」
覚えとけよ!
「はい?」
なんでもないです。
「そりゃそうですよね。都合良すぎますからね」
それもそうか。
「じゃあ、異世界行きを選んで、望んだ世界に行けなかった人はどうなるんだよ」
目の前の白髪2本の人がにやりと笑った。
「言い方」
言ってないけど。
「思い方」
絶対心の声聞こえてるわ。
「それが面白いところなんですよ。知りたいですか?」
うん。
「それは……」
それは……
「異世界で住みます」
は?
「異世界っていっても世界ですからね。
そこで住むのですよ」
「おぉ、なるほど」
「もちろん前世の記憶なんてありません。
普通にその世界が当たり前で、普通に生活を営みますね」
「なんだそれ。むしろ一番良いコースじゃん」
「そう思われるなら異世界コースで良いでしょうか?」
「待て待て待て。なんか怪しい。俺は騙されないぞ」
「こちら詐欺師ではないので」
そんな単純なわけないぞ。何か裏があるはずだ。
「裏ですか」
「まだ説明してないこと、あるだろ」
目の前の白髪2本の人がにやりと笑った。
「それ本当に気にしてるんで、やめて下さい」
「じゃあ、説明してない事っ」
「はいはい。生活を営むと言いましたが……」
ごくり。
「人とは限りません」
「何っ?!」
「異世界で命あるもの、何かになります」
そんな重要な事を言わないとは。
「人の場合は前世の記憶がない事が多いですが、みじんことか虫とかだと前世の記憶が残ってるので悲惨ですね。まぁ、一生が短いので、すぐこちらに来ますから。悲惨と言っても地獄よりは大した事ないですよ」
どん引き。
「どん引きしてますか? ちなみに動物も記憶残ってる場合が多いですよ」
はぁ……
「あなたの世界でも賢い動物とか。
あざとい動物とか。
言う事聞かない動物とかいるじゃないですか。
あれは大概、前世の記憶残ってるからですよ」
なんだよそれ。聞いてないよ。
「今、言いましたからね」
そうでした。
教えてくれてありがとう。
「というか、訊かなかったら、教えてくれてないよな?」
「まぁ、いいかなって」
「良くない!」
むしろ一番大事だわ。
「で、どうしますか?」
うー……悩むっ!
「そこ悩むんですね」
どうしよう!
「20憶人に一人だから、ほぼ当たりませんよ」
買わなきゃ夢は当たらないんだ!
「宝くじじゃないんですから」
一緒だ!
「まぁ、何でも良いですけど」
どうしよう!
「決まりましたら、行きましょう」
いや、ちょっと待って!
「ではまた次回」
なかなか異世界に行きません。