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はじめての魔法

「あなたは詠唱でも無詠唱でもどちらもできます。

 まぁ、どちらでもできるというのは正しくありませんが。簡単にお伝えするとどちらでもできます」


 無詠唱できるなら詠唱もできるよな。

 口で言えばいいだけなんだから。

 でもよくあるのは、無詠唱もできるけど詠唱した方が威力が大きいとか。


「さすがによくご存じで」


 異世界ものであるもんな。


「しかしこの異世界は漫画やアニメなどではありません。オリにとってはオリのオリジナル異世界なわけです。」


 オリオリしてんな~。


「あなたの命名センスが悪いせいです」


 すみません。


「あなたは詠唱でも無詠唱でも威力に差はありません」


 ほほう。


「言葉で説明するよりも、実際にやってみた方が分かるでしょう」


 シュンッ。


「?!」


 消えた!


 シュンッ。


「お待たせしました」


 いや、待ってない。


「ゴブリンを3体ほど連れて来ました」


 どこから?


「あっちです」


「今、消え……」


 たよな?


「分かりやすくいえば、瞬間移動ですね」


 分かりやす~。

 そんな事できるんだ。


「あなたもできますよ」


 え?! マジで?


「弱いので、今はできないと思いますが」


 ちぇっ。


 と、そんな事を話しているツキの手には縄につながれたゴブリン3体。


「ギャー! ギャー!」

「ギギギギギィッ」


 うるさっ。


「とりあえず、あの木につなぎますか」


 5mくらい先の木にゴブリンをつなげ戻ってくるツキ。


「さ、どうぞ」


 はい?


「まず1体倒してみましょう。テンプレと言われようとも、最初は火魔法とかが良いのでは?」


 はい?


「どうぞ」


 どうぞってなんだよ。

 どうしたらいいんだよ。


「無詠唱いってみましょう」


 説明説明。


「あなたは私に頼りすぎでは?」


 教えてくれるって言ったじゃん。


「そうですが、とりあえず火を思い浮かべてみたり、何でも試したりすれば良いではないですか。

 それでも異世界好きと言えるのですか?」


 すみませんでした。

 その通りだと思います。


 よし、火を思い浮かべて……

 手なんかを、こう……


 バッ……


 しーん……


 でないな。


 バッ!

 バッ!

 バッ!


 でない。イメージが足りないのか?


 ツキが地面で丸まって震えていた。


「っぐ……ぷっ……ふっ……」


 おい……。


「でませんね」


 キリッ…じゃない!


 今笑ってたよな。


「お腹がよじれるとはまさにこのことです」


 泣くぞ。


「すみませんでした。どうぞハンカチです」


 まだ泣いてない。


「ふ~……イメージが足りないのでは?」


 そうなのかな?


「異世界ものでよく聞くセリフを言ってみました」


 言ってる言ってる。


「さて、真面目にやりましょう。

 このままでは日が暮れます」


 俺はずっと真面目だったぞ。

 あと、まだ昼前ですけどね。


「あなたの今やっていたのは、私の助言に誘導されて『火魔法=火』のイメージを頑張ってしていました。しかしそれだけではいけません。

 というか、火をイメージするとかも特にいりません。あのゴブリンに火を当てる」


 チュンッ――


 ドオォォッン……


「ギィャァァアッ!!」


 ゴオオオォ……


「これぐらいでいいのです。

 今のは説明の為にあえて口にしましたが、無詠唱であれくらい思うだけで大丈夫です。

 簡単でしょう。イメージ云々かんぬんは必要ありません」


「…………」


 『ゴブリンに火を当てる』と、ツキが言った瞬間。

 ツキの人差し指からエネルギーみたいなものが高速で放たれたかと思ったら、ゴブリンが焼かれていた。


 なんだあれ。

 嘘だろ。


「今、目の前で見てたじゃないですか」


 軽。

 怖。


「なんでもいいですから。やってみますよ。

 魔石はあとで回収しましょう」


 そんな事気にしてない。


「私は強キャラっぽく人差し指にしましたが、オリはオリのお好きな『バッ…』っと、やってもらってもだいじょうブフッ……ですよ。

 失礼しました、思い出し笑いをしてしまいました」


 強キャラ言うな。

 笑いながらハンカチを差し出すな。

 泣いてない。


「強キャラとかは置いといて、引くほど強いな」


「強いと申し上げたでしょう」


 そうですね。


「どうぞ」


 お、おう。


 バッ!


 あのゴブリンに火を当てる。


 ボオォォッ!


「ギギギィッ!!」


 おお! 本当に火が出た。

 ツキとは威力が違うけど。ゴブリンは倒せていない。


「レベル3ですからね」


 チュンッ――


 ドオォォッン……


「ギィャァァアッ!!」


 ゴオオオォ……


 言いながらゴブリンを倒すツキ。


 うわぁ、強キャラっぽおぉい。


「ふっ……まぁ強キャラですし」


 むかつく。


「さすがにレベル3ではあんなものですよ。

 どんまいどんまい」


 がんばるしかないか。


「さて、次は詠唱です。詠唱も結局威力は変わりません。

 あなたの場合は派手るか派手ないかくらいです。

 思う事は一緒で、お好きな攻撃名とか……ぷぷっ……

 詠唱を適当に考えて言えばいいですよ。

 なので、えいやっでもいいですし」


 『えいやっ』好きだね。


「攻撃名といえば、ファイアーボールか」


「どうぞ、もう1体いますから」


「よし!!」


 俺は気合を入れてポーズを入れる!


「ファイアッ! ボォオーールッ!」

 あのゴブリンに火を当てる!


 ボオォォッ!


「ギギギィッ!!」


 おお~、当たった!


 ゴブリンがゴロゴロと転がっている。


 仕留められなかっ――


 チュンッ――


 ドオォォンッ……


「ギィャァァアッ!!」


 ゴオオオォ……


 俺が倒しきれていないゴブリンを倒すツキ。


「威力が上がって、1発でゴブリンを倒せればいい感じなのではないでしょうか」


 そうだね。

 なんかツキの見てると、当分魔法やりたくないな。


「私の域に達するにはまだまだ道のりは遠いですね」


 さいですか。


「ではまた次回」

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