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異世界の人

 さて、と。

 家に戻ってきたはいいけど、まだ時間早いからな。


「ツキ〜、まだ誰も帰ってきてないから居間でスキル確認するの付き合ってくれるか~?」


「お風呂入って着替えてから」


「俺も風呂入りたいな。一緒に入るか!」


 ツキが目を2mmくらいにしてこちらを見ている。


 『この童貞が』って思ってやがるな!


 ツキがニヤリと笑う。


「一緒に入る?」


 嘘です。

 ちょっと言ってみたかっただけです。


 くっそー。もて遊ばれた。


 睨む俺にツキがニヤリと笑う。


「先に入る」


 どうぞ、どうぞ。


 ツキがにやにやしながら、風呂に向かおうと振り向いた。


 ポフッ…


 廊下から現れた人物とぶつかるツキ。

 ぶつかるといっても、その人物の懐にポフッと当たったくらいだけど。


「ごめん」


 と、フェスを見上げながら謝るツキ。


「ツキさんなら、大歓迎ですよ」


 と、流れるようにふんわりツキを抱きしめるフェス。


 何してんのこの人……


 フェス・ティバール。

 男の子。男の子。

 男なんですよ。この人。

 今なにしてた?

 同年代の女子をふんわりと抱きしめてるぞ。

 どこの世界の人だよ。あぁ、異世界の人ね。

 そうだね。16歳だね。みんな、一緒の年齢だね。


 身長は177、8cmくらいか?

 大き。みんな若いのに大きいね~。

 これも異世界あるあるか?

 物語系の登場人物は大体背が高いんだよな。

 そんなに背ぇ高い奴ばっかりいるかよ。

 って思ってる俺にこの現実よ。くっそー。

 日本で生きてた時は平均よりちょっとだけ高かったんだぞ。


 シェアハウス5人目の住人。

 ライとリリーとパーティーを組んでる。

 3人パーティーなんだよな。

 ライは俺たちをパーティーに誘ってくれてるけど。

 それだと5人パーティーだし。

 多くね?

 まぁ、それ以外にもお断りしてる理由はあるんだけど。


「それよりもオリ。今のはなんですか?」


 キッ……


 なぜ睨む。

 今のはなんですかってなんですか?

 女子を抱きしめながら話しているあなたはなんですか?


「今のって何?」


「みだらな……」


 はい?


「みだ……何て?」


「みだらだと言ったんです」


「何が?」


「ツキさんに一緒にお風呂に入ろうなどと。

 不埒なことを言っていたでしょう」


「冗談だよ」


「冗談? オリは冗談で可憐な乙女と一緒に入浴するのですか?」


「しないよ」


 そんなん怖くてできないよ。

 フェスと一緒にしないでくれますかね。


「今、まさに一緒にお風呂に行こうとしていたではないですか」


 何言ってんだ。


「行かないよ」


「見つめ合ったあと、はにかみながらお風呂に行こうとしていたツキさんがいるではないですか。

 一緒にお風呂に入って背中を流そうとしてたのではないですか?」


 何? はにかみ?

 歯になんか挟まってたの?

 ってか、ツキを抱きしめながら何言ってんの?

 フェスの方が不埒ですよね。


「いや、入んないって。冗談だから。

 幼なじみ同士の軽口だから」


「本当ですか?」


 コクリと頷くツキ。


 コクリじゃねーよ。


「ツキさん、はっきり断らないといけませんよ。

 世の中には勘違いする輩が多いですから」


 コクリ。


 だからコクリじゃねーよ。

 なぜ、抱きしめられたままなんだ。

 お父さんはそんな子に育てた覚えはありませんよ。


「育てられてない」


「ん?なんですかツキさん?」


「なんでもない」


「あー、危ない危ない」


 と、いいながらツキの頭にほっぺをあててグリグリしている。


 フェスの方が危ないだろ。

 いくらツキが女に見えないとはいえ、これでも女の子なのに。

 というか、なぜされるがままなんだツキさんよ。


「……」


 ツキが糸目でこちらを見ている。


「お風呂入ってくる」


「はい、気をつけてくださいね」


 コクリ。


 いや、放せよ。

 あと、気をつけてってなんだよ。


「まったく、オリにも困ったものです。

 冗談を言うなら、面白い事を言って下さい」


 面白くなくてごめんなさいね。


「年頃の男女なんですからね。

 分かっているのですか?」


 いや、そっくりそのまま返すわ。


「年頃の男女が抱きあってる方がどうかと思うぞ」


「私はいいんです」


 そうですか。


「ってか、出かけてなかったんだな。

 ライとリリーは依頼受けに行ってるんだろ?

 一緒に行かないのか?」


「はい。そんな暇はありませんので」


 さよですか。


 ポリポリポリ……


「まぁ、なんでもいいけど」


 ポリポリポリポリ……


「今の流れで急に『たくあんぬ』貪り食いだすかね」


 ポリポリポリポリポリ……


 う~ん、自由人。


「食べますか?」


 スッとタクアンヌの袋を差し出すフェス。


「どうもありがとう」


「今回のは前回よりも甘いかもしれません。

 また感想を聞かせてください」


「分かった」


 フェスの大好物は手作り『たくあんぬ』

 ちなみに日本でいう『たくあん』である。

 うん、食べ続けちゃうよね。わかるよ。


「部屋戻ってるわ」


「いいですか、つまらないポリポリ……

 冗談は、ポリポリポリ……」


「言わないよ」


 後ろでずっとポリポリと音が聞こえてきたが

 俺は振り返りもせずその場を去ったのだった。


  ◇


 バタン。


 あー……なんか……

 フェスは本当にマイペースだな。

 キリっとしてるんだか、してないんだか。

 あの顔面なのに。


 そう、フェスは前世の人生合わせても、俺が見て来た人類の中で一番美しい顔をしている。


 あれは反則だ。初めて見たときは息を飲んだね。

 なんて美しい人だ…と。

 二度の人生で初の恋が一目惚れかぁ……と思いきや……

 まぁ、声を聞いたらとんでもないイケボが出てくるし、たくあんぬを出して食べだすし。

 さすがに男だって分かったけど。あの顔面でイケボて。柔らかく結んだ長い髪は銀髪で、美しすぎるだろ。非現実的すぎる存在。異世界だからなのか?


 というか、見た目で一目惚れしそうになるって……

 俺は超ド級のメンクイか?

 男って分かった瞬間スッと冷静になったけど。

 男にいけるタイプではないことが判明した。

 あのまま女性だったらこのシェアハウスにはいられなかったかもしれない。

 確実に借りて来た猫みたいになって、しんどくなって出て行ってたな。

 ちなみに大体の女性に意識しすぎて話せなくなるけど。

 童貞たる所以だな。

 リリーみたいに、向こうからガンガン話しかけてくれたら話せるけど。


 バンッ。


「お風呂あきましたよ」


「んん、ノックな」


「コンコン」


 はいはい。

 キツネーネさんかな?


「じゃあ風呂入ってくるわ~。その後、俺の部屋でスキル確認付き合って~。あの、メモ出てくるやつ」


 コクリ。


 なんで誰もいないのにコクリなんだよ。


「ではまた次回」


  ◆◆◆


 タクアンヌでも食べましょう…

 と、居間へ向かう私の耳に

 とんでもない会話が聞こえてきました。


「俺も風呂入りたいな。一緒に入るか!」


 ツキさんが笑っています。


「一緒に入る?」


 真剣な顔でツキさんを見つめるオリ。

 見つめ合う二人。

 ツキさんが微笑んでいます。


 ……なんということでしょう。


「先に入る」(脳内補正:先に入って待ってるね)


 ツキさんがニコニコしながら振り向いた。


 オリにだけ見せるツキさんの笑顔はとても愛らしい……

 飾って見ながらタクアンヌを食べたいほどに。


 ポフッ……

フェスに心の声は聞こえていないので、あんな感じになってました。

ツキのニヤリやニヤニヤが笑顔や微笑みに見えてます。


誤字報告ありがとうございました。


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