鉱石取り(3)
「沢山鉱石取ってあいつらにおいしいご飯を食べさせてやろう」
「あなたももう立派なお父さんですね」
なんてこった。齢16にして、父。
「その前に奥さんが欲しいぜ」
「おじいさん、これなんかはどうですか?」
いや、確かにおじいさんだった事もあるけどさ。
「どれどれ……この緑の縞模様のやつ?」
小さ。
直径2cmあるかないかの小さい石が、周辺にパラパラと埋まっていた。
「おいおい、こんな小さいのに1個80,000ギゼルだぜ」
ちょっと頑張るか。
パキッ……
「え……」
「あ~あ、割っちゃっいましたね」
弱。
「うそだろ」
ほぼ粉砕した状態になってしまった。
「脆い石もありますからね」
「この割れたの持ってっちゃダメかな?」
ダメだろうな。
「もう1個やってみよう」
パキキ……
「ゆっくりやってもダメか」
目の前に80,000ギゼルが埋まってるのに、俺には指を咥えて見ている事しかできないのか。
「くぅ……」
待てよ。
「俺にはアイテムボックスがあるじゃないか!!」
無理してこれだけ掘り出す必要はない!
「ほほう」
「周りまるごと持っていけばいいんだよ」
スコップで縞模様の石が10個くらい埋まってる所を狙い掘っていく。
「サイエンス兄さんのところに持っていったら、うまいこと取り出してくれるだろ」
…………
「おい、何か話してくれよ」
掘ってると黙っちゃうからな。
「無駄話って言われるのでお断りです」
すぐ根に持ちますね。
「は?」
なんでもないです。
「私は自分の仕事は終えていますので、寝ます」
ツキはさっさと赤い石を10個ほど爪で取って横になっている。
「カップラーメンも食べられない時間で取りやがって」
「歌でも歌って掘ってれば良いではないですか」
歌ね~……
「すー……すー……」
寝るの早くね?
「は~……」
暇。
黙々と掘る。
「ツキは300,000ギゼル。俺はこれを掘れば800,000ギゼル。勝ったな」
しばらく遊んで暮らせるぞ。
…………
「ひぃぃ……」
800,000ギゼルを稼ぐのは楽じゃねぇ。
「なんで~、こんなに~、掘るのが~、大変なのぉ~、魔法で~、さぁっさと~取れないのかなぁ~」
採掘魔法はピンとこないな。
「スコップが~、進まない~、つるはしも~、しんどい~、ああぁ~、しんどい~」
「ちょっと」
「あれ? 起きたのか?」
「歌でも歌えばと言ったのは私ですが、さすがに声が大きすぎです」
「ごめんごめん。ここ、声が響くから気持ちよくなっちゃって」
エコーって大事。
「せっかく歌声は良いんですから、音量と歌詞をどうにかしてください。3歳児ですか」
「え、ありがとう」
「何がですか? 歌詞がひどいと言ったのですが」
「俺の歌声褒めてくれたじゃん」
ツキさんは俺の声をよく褒めてくれるよな。
「褒めていません」
「歌声は良いって言ったじゃん」
「言っていません」
「言ったよ」
「寝ます」
認めたな。
「くかー、くかー」
演技下手くそか。
「なんか元気でたから、掘ろ」
◇
ついに、ついに俺はやったぜ!!
「見事、縞模様の鉱石……の周辺を掘り出してやったぜ!!」
長かった。早く帰りたい。
「おい、そろそろ帰るぞ」
本格的に寝やがって。
とりあえず、鼻をつまむ。
「……ぶはっ!」
「帰るぞ」
「長かったですね」
もう、固いこと固いこと。
「とりあえず、やりきったから今日は帰ろう」
「『今日は』という事はまた来るのですか?」
「掘るのは大変だけど、お金を稼ぐには良いからな」
思い出した頃にでも来よう。
「あれぇ?! ツキ先輩?!」
どこかで聞いた声がする。
「やっぱりツキ先輩だ! うわぁー、奇遇ですねー!」
サラ?!
「なんでこんな所にサラが」
「こっちのセリフだよ。お前ここで何してんだ」
扱いの差たるや。
「ギルドの案件で鉱石取りに来てんだよ」
「ああ、ギルドの案件か。確かにここはいいのあるからな」
「で、何でここにいるんだ?」
「あ~ん? なんでお前にそんな事言わなきゃなんねーんだぁオイ」
ガラ悪。
俺のおでこがサラのおでこでゴリゴリされる。
「痛い痛い」
「あなたはここで何をしているのですか?」
「ここには~、ダンジョンの宝箱に入れるアイテムの材料を取りに来てんすよ~」
本当に、ツキには従順だな。
「サラってそんな事もしてるんだな」
「あ~ん? 宝箱のアイテムが勝手に沸くわけねーだろーが」
またしても俺のおでこがサラのおでこでゴリゴリされる。
「痛い痛い。強くなってるって」
「次は割るぞ」
なぜ質問したくらいで、おでこを割られにゃならんのだ。
「本当にダンジョンの管理人みたいな事やってるんだな」
ツキの後ろに隠れながら言ってやった。
「お前ぇ、正々堂々出てこいや」
「断固拒否する」
今度こそおでこが割られる。
「ちゃんと答えてあげなさい」
おお、ツキが優しい。
「話が進みませんから」
助かります。
「ちっ…、お前ぇ、ツキさんに感謝して、耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ」
ガラ悪。
「この世界のダンジョンのアイテムは私が用意してんだよ。アクセサリーなんかは手作りだからな。すげーだろ。敬えよ」
「買った物を入れてるとかじゃないんだな」
「お前、そこらで買えるもんがダンジョンにあって嬉しいんか?」
確かに。
「そんなの体がいくつあっても足らないだろ」
「だから忙しいんだろーが」
なるほど。
「本当ならすごいな」
「なんで私が嘘つくんだよ。そんな最低な事するわけねーだろ」
あなたの先輩、嘘ばっかりつくんですけど。
「お前だって持ってんだろーが」
「俺が?」
「ここで作ったのなら……ソパールか。ソパールの宝箱であっただろ」
「そういえば、ソパールのアイテムも売らなかったから持ってるな」
アイテムボックスを探ってみる。
「もしかしてコレとかか? 『なんかの石』」
なんの石かよく分からなかったから勝手に『なんかの石』って言ってる。
「ここの石だ」
「え?! そうなの」
「売ったら18,000ギゼルくらいだけどな」
ソパールダンジョンの低階層だからそんなもんか。
「へー」
「正直、石は取って入れるだけだから楽でいいんだよな」
サラがウシシと笑っている。
「誰が牛だってぇ?」
言ってません。
「あと、何持ってんだ?」
「このサークレットもソパールダンジョンだったはず」
「ああ、それについてる石もここのだし、サークレットもデザインから作成も私だからな」
「まじか。すごいな」
まさかサラが作っていたとは。
「敬えよ」
危うく敬ってしまいそうだ。
「敬わないけど」
「あんだとコラぁ」
「この『いも』もダンジョンの宝箱にあったんだけど、何?」
「『いも』は『いも』に決まってんだろ」
「普通に『いも』なんかい」
「腐らない加工をしてやってるけどな。非常食用になるからっつって、高値で売れるらしいぞ。10,000ギゼルくらいだったか?」
「高」
普通の『いも』は100ギゼルだぞ。
「そろそろ帰りませんか?」
そうだった。
「じゃあ、俺たち帰るから頑張れよ」
「じゃー、私もかーえろっ!」
サラが飛び跳ねてツキの横に行く。
「ではまた次回」




