鉱石取り(2)
「いるな~」
低レベルモンスターがうじゃうじゃいる。
「そもそも何でモンスター同志で戦わないんだ?」
「家族だからですよ。モンスター皆兄弟」
人類皆兄弟みたいに言うな。
「嘘だろ?」
「嘘ですよ」
流れるように嘘を言うな。
「好きなくせに」
心の底から好きじゃないです。
「つまんない嘘は置いておいて、マジでなんでケンカしないんだ?」
「なぜだと思います?」
予想もつかないな。
「モンスターを構成するもの」
構成するもの?
「あなたの頭でも分かりやすく説明すると、人間でいう遺伝子の大部分が同じだからですよ。ちなみにモンスターは遺伝子とかないです」
分かりやすくして下さって、ありがとうございます。
「どういたしまして。遺伝子の大部分が同じなので、捕食しないのです。通常、人間が人間を食べる事はありませんよね?」
「たまに食べてる人いるよね」
カニバリズム。
「だから通常だと言いました。異常があると、食べます。モンスターも一緒です。異常があるモンスターはモンスターを食べます」
「でもさ、人間同士でもケンカするだろ。なんでケンカしないんだよ」
「食欲以外ないからです」
めっちゃ怒ってんじゃん。
「あれは興奮しているだけです。捕食対象にだけ働きます。ちなみにモンスターで前世の記憶持ちは例外です」
ふーん。
「まとめると、食欲のみ。睡眠欲、性欲、生存欲、怠惰欲、感楽欲、承認欲など人間が持つ欲はないのです」
ふーん。
「でもさ、あいつらずっと洞窟とかにいて、食べなくても生きられるのに食欲あるのか?」
「だから飢えているではないですか。飢えているからモンスター以外の生物を見た途端、ご飯だー! と興奮してこちらに来るのですよ」
なるほど。
「そう思うと『モンスター皆兄弟』嘘じゃないじゃん」
「遺伝子ではないので兄弟ではありません」
なるほど。
「珍しく色々教えてくれるんだな」
「暇だったので」
「まぁ、暇っちゃ暇だな」
俺たちは低レベルモンスターをなぎ倒しながら、洞窟の奥へ進んでいた。
「蟻とかじゃなくて、普通のモンスターで本当に良かった」
これぞ余裕。無駄話をしながらでも進めてしまう。
「もう二度と教えませんよ」
有意義な話をしながら進めてしまう。でした。
「亀の歩みですが、成長しましたね」
「俺、今レベルいくつだろ?」
最近、左手の出番がなかったから、あいつ寂しがってるだろうな。
「……俺はいつから左手に人格を見出してんだよ」
「喜びますよ」
「俺の左手だぞ。人格は俺だけで十分だよ」
【 T T 】
「いや、聞いてないから」
余計な事言うんじゃなかった。
「それにしても、うじゃうじゃいるな」
重い荷物を持っていたら確かに厳しい。
「そろそろ鉱石が取れる場所のようですね」
「なんで分かるんだよ」
「看板があります」
『もう少し行ったら鉱石あるよ~。良い鉱石を持ってきてね~』
のん気だね。
◇
洞窟のひらけた場所に到着。
ここにはモンスターはいないようだ。
「安全地帯ですね」
「かなり広いな」
ぼんやり光っている石があちこちにある。
「思ったんだけどさ、ここってダンジョンじゃないの?」
「ダンジョンではないですよ」
そうですか。
「洞窟でモンスターが出て、ぼんやり光っている石がある所といえば! みたいな感じだったからさ」
「クイズですか?」
違います。
「さ、鉱石取ってこ…………てかさ、これさ、取ってくるっていうか採ってくるじゃないか?」
採掘じゃん。
「気づきませんでしたか?」
「サイエンス兄さんから、つるはしとスコップを渡されたから『あれ?』とは思ってたけど」
「分かって受け取っているのかと思っていました」
う~ん、息を吸うように受け取ってたね。
「まぁ、いいけど」
掘るか……
「おお~、この冊子めっちゃ役に立つじゃん」
イラストと特徴がしっかり書いてあるから分かりやすい。
「このうっすら白く光ってる石、そこら中に埋まってるけど『1個10,000ギゼル』だぜ」
こんだけあったら、うはうはじゃん。
「変態みたいですね」
うはうはって思っただけですけど。
「採ってみたらいいじゃないですか」
そうだな。
「あるってすぐ分かるし、サイズもこぶし大だから狙い目っぽいけどな」
…………
んん?
…………
「詐欺だ」
「別に詐欺でもなんでもないでしょう」
見えてる所はこぶし大なのに、掘っていったらバレーボール大っておかしいだろ。
「こんなん持てるかぁ」
「あなたなら持てるでしょう」
この案件が人気ないの分かった。
「掘るのめんどいから、これはこれだけでいい」
さっさと、アイテムボックスに入れる。
「この鉱石はサイズが一定ではないとしっかり書いてありますよ」
「限度があるだろ」
「あなたの限度など知りませんよ」
そうですね。
「さすがにここまでは想像してなかったから、この種類はもう採らないでおく」
どれがいいのかな~?
「掘るのに時間がかからなくて、高価買取してもらえるのがいいな」
「そんなに都合の良い鉱石があればいいですね」
「一定サイズの鉱石はないかな~」
このぼんやり赤く光ってる石はどうだ?
「冊子によるとペンダント大ばかりのようですよ『1個30,000ギゼル』」
「いいじゃん!」
…………
「かったーーい!!」
「どこの女子ですか」
「固い」
「そうそう甘くはないですね」
固すぎだろ。
「どれどれ」
ツキが人差し指の爪を赤い石に引っ掛ける。
ポロッ。
…………
「たいした事ないですね」
「お前にとってはな」
嫌なものを見た。
「失礼ですね」
怖いものを見た。
「どこか痒いところがあったら、言ってくださいね」
背中ズタズタになるわ。
「さ、掘ろ」
「ではまた次回」




