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お嬢様の警護(2)

「おい、笑うなよ」


 ツキが肩を揺らして笑っている。


「とても……お似合いですよ」


 着替えるように言われた服は高そうなフォーマルスーツだった。


「似合ってると思ってる人のリアクションじゃないだろ」


 ツキの体が『く』の字に曲がりだした。


 こいつのツボはよく分からない。


「……っ……いえ、似合いすぎてて驚いているのです」


 なら、目に涙を溜めながら指を差すな。


「お前だって、なかなかの仕上がりだろうが」


「ありがとうございます」


 褒めたと思ったの?


「いや、似合ってないから」


 ゲシッ


「痛っ」


 ローキックはやめろ。服が汚れるだろ。借り物なんだぞ。


「聞きませんでしたか? この服は頂けるそうですよ」


 そうなの? ラッキー! こんな高い服、自分じゃ買えないぞ。というか買わないぞ。


「どうせだったら、お前もそんなフリフリのドレスじゃなくて、落ち着いた服貰えたら良かったのにな」


 ツキとフリフリドレスの組み合わせほど、合わないものはない。


「もはやキモイから」


「あなたにはデリカシーというものがないのですか」


「フリフリドレスが似合わないって言ってるんだよ。ドレスってんならお前にはシュッとしたのが似合うと思うぞ。今度似合うの選んでやるからな」


「ありがとうございます」


 買うとは言ってないからな。


「そんな事だろうと思いました」


「ははは」


 ツキとしょーもない話をしていたら、白い人影が目の前を横切った。


 着替えて応接室に戻っていた面々が息を飲むのが分かった。


 黒装束から一転、真っ白な中性ヨーロッパ風の見事なドレスを身に纏ったショウさんだった。


 透明感のある真っ白な肌に真っ白なドレス。

 中性的な顔立ちに女性らしさもあり、ほのかな色気と清純さが……


「美しい~……」


 そりゃライもベタ惚れになりますわ。


「鼻の下伸びてますよ」


 伸ばしてるんです。


「そうですか」


 俺だけでなくこの部屋全員がそう思っている事が分かった。


「え? え? どなたですか? もしかしてお嬢様ですか?」


 陽キャ冒険者が頬を赤らめながら、ショウさんに話しかけている。


 分かるぞ、その気持ち。


「違うぞ」


「あっ! 違うんですか! あ~……この屋敷の方ですか? 俺、冒険者の――」


 仕事先でナンパすんなよ。


「何を言っている。私も冒険者だ。さっきまで一緒にここにいただろう」


 陽キャが応接室を見回し、誰がいないか確認する。


「え? 黒装束の人?」


「そうだ」


「「えーーーーーっ!!」」


 隣でナンパを見守っていた、弓を持ってる女性も驚いている。


「え~、嘘ぉ! 女性だったんですか~! 全然気づかなくてごめんなさぁい」


「マジかよ! すげぇ!」


「気にしないでくれ、よく勘違いされるんだ」


 応接室に戻ってきていた、冒険者を見てみると、女性はフリフリドレス、男はフォーマルスーツに着替えさせられているようだ。


「では、皆さまの準備が整ったところでお嬢様と一緒に買い物に参りましょう」


「あの、お嬢様とはいつ会えるんですか?」


 弓を持っている女性が聞いてくれる。


 このパーティー、俺が思ってる疑問を聞いてくれるから助かるな。


「お嬢様は馬車でお待ちです。皆様がいらっしゃるのを、とても楽しみにされていますよ」


 執事さんが微笑んでいる。


 目の奥が笑っていないような気がするのは俺だけか。


「ささ、参りましょう」


 ◇


「馬車でかぁ……」


 目の前にはそれはもう立派な馬車。

 ボディの中は通常4人掛けのところ6人……いや、それ以上乗れそうだ。


 馬も大変だよ、ホント。


「なぜ、馬目線なのですか」


「なんとなく」


 白い人影が横に来た。


 ショウさんだな。


「……ショウさん……それ……」


「日に焼けると困る事を伝えたら、貸して貰えた」


 うん、まぁ、しょうがないとは思うけど。


 ショウさんが、エレガントな帽子を被って登場した。

 ドレスに似合った帽子だ。

 麦わら帽子とはまるで違う。

 今回は服装に似合った帽子で良かったね。と言いたい所だが、残念なことに帽子からは白い布が垂れており、しっかり顔が隠れている。


 布で顔の皮膚を守る為とはいえ、もっとなんとかならなかったものなのか。

 今回もショウさんは動じてない。どころか……


「これは良い。黒装束ばかりで飽きていたんだ。知っていたかオリ殿、この服は貰えるらしいぞ」


 表情は見えないが、ショウさんがほくほくしている。


 あなた、隠れ住んでるんじゃないの?

 街中で目立つ格好しかしてないけど。

 と、思ったけど、もちろんそんなこと本人には言わない。


(あなた方、普通に話してますね)


 そうだった。

 ちょっと気まずい感じかと思ったけど、なんか普通だった。


「口当ては冬はいいんだが、夏は息苦しくてな。これなら、顔と布の間に空間があるから助かる」


「それでいいんなら、もっと前から色々工夫できたんじゃ……」


「私にはこの様な発想はできない! これを考えた人は凄いぞ」


 凄いかな〜……どう見ても雑な仕上がりなんだけど。

 この人、お嬢様と並ばせていいのか?


「ささ、皆様、馬車にお乗り下さい」


「おっ!」


 ついに、お嬢様とご対面か。


「ではまた次回」

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