お嬢様の警護
「このお屋敷のお嬢様が警護対象ねぇ……」
目の前に聳え立つ、お屋敷を見て、今日の警護について考える。
「こんな立派なお屋敷のお嬢様ならわざわざ冒険者に警護を依頼しなくてもいいだろ……」
各所に私兵が配置されている。
「『友達の振り』が重要なんでしょうね」
「冒険者がおかしな奴だったらどうするんだろうな」
「ギルドに楯突く冒険者がいるとは思いませんが」
だな。
「うわ~……なんか緊張してきた」
「緊張してても始まりませんから行きますよ」
はい。
◇
「誰だ」
「ギルドから派遣されて参りました『オリ&ツキ』2名です」
「待て」
お~……ドキドキする。
門番の人が来客予定かなんか書いてある紙を確認する。
「よし、ついて来い」
「はい」
「…………」
ひゃ~、なんか緊張する~。
門番の人キリっとしてる~。
(そわそわしないで下さい)
お屋敷とか二度生まれて初めてだし。
「この部屋で待て」
「はい」
「頑張れよ」
頑張れよ?
「ありがとうございます」
なんだろ?
(いましたよ)
案内された部屋はそれはもう立派な応接室。絶対高いだろう調度品。
そして立派な応接室に不釣り合いな格好をした、俺達冒険者5人。
その中にはショウさんの姿が。
「ショウさん……」
ここでも黒装束って浮きすぎ。目立ちすぎ。警護する気あるのかな?
って思ったけど、黙っておく。
「オリ殿……」
ショウさんに顔を背けられる。
まぁ、そうなるよな。
今は仕事中だし、終わったら話しかけよう。
逃げられないようにしないとな。
コンコンコンコン。
扉がノックされる。
入ってきただけで分かる、洗練された動き。
服装からも確実にこのお屋敷の執事さんだろう。
なんというナイスミドル。
「お待たせいたしました。どうぞお座りください」
着席を施され、皆がソファに座る。
「本日は、お嬢様の警護を皆さまに依頼いたしました。受けて頂き本当に嬉しい限りです。内容はご承知いただいているかと思いますが、警護の際には必ずお嬢様のお友達のようにお振る舞いください」
「お友達のように振る舞うってどういう感じで行けばいいんですか?」
背中に弓を抱えた女の人が、俺も思っていた疑問を聞いてくれた。
「あなたのお友達だと思って、接して下されば良いと思います」
「え~……私の友達お上品じゃないんですけど」
執事の人がお上品に微笑む。
「それで大丈夫ですよ」
「絶対ダメだと思うんですけど」
「お嬢様が嫌だと思ったら、あなたの警護は強制終了なので安心して下さい」
安心できない事言ってる。
「強制終了って! そしたら報酬はどうなるんですかっ?!」
弓の人が慌てる。
「報酬は全額お支払いたします」
「ならいっか! 分かりました!」
軽。
「そういえば募集要項には書いていませんでしたが、お嬢様を終日警護して下さった方には追加で300,000ギゼルお支払いたします」
なにぃ!
俺を含めた冒険者達みんなの目の色が変わった。
(私は変わっていませんよ)
そうだね。
「だったらお嬢様好みのお友達やった方がいいじゃないですか! どんな友達がいいか教えてくださいよ! やりますから!」
そこそこイケメンの冒険者が前のめりになる。
イケメンなんだけど、ちょっと違うな~。俺好みのイケメンではない。
自分の事イケメンって思ってそう。そう思うとやっぱライの顔はいいな~。
性格良いのが顔に出てる。爽やかだし。
あ~、でも俺のイケメンセンサーの基準が上がってるってのもあるな。
(自分の顔を棚に上げて、イケメンについて思いを馳せないでください)
どうせ普通の顔ですよ。でもな、それとこれとは違うんだよ。
「お嬢様の好みの友達なんて、誰も知りません。こちらが聞きたいくらいです」
お、ちょっとイラっとしたな。
「色々と試して、是非お嬢様好みのお友達になってください」
執事さんはイラっとした事なんてなかったかのように、綺麗に微笑んだ。
「むず~」
なんちゃってイケメンは陽キャっぽい。
「それでは、お嬢様を呼んで参ります。その際にお嬢様指定の衣服に着替えていただきますので、ご協力よろしくお願いいたします」
着替え?
「着替えってどういう事?」
「そんなん俺が知るかよ。でもこんな良い案件なかなかないから、頑張ろうぜ! 俺が明るく接して様子みるから、お前は落ち着いた感じで行ってみろよ。パターン変えて行こうぜ」
弓の人と陽キャの人は同じパーティーだったようで、打ち合わせをしている。
「俺達はどうする?」
真似して打ち合わせをしようとしてみる。
(いつもと同じでいいでしょう。それにあなたの場合は色んなパターンなど持ってないでしょう)
そうですね。
(あえて、作ってみるのも面白いかもしれませんが)
やらねーよ。言ってみただけだから。
結局のところ、話してみないと分からないからな。
(そうですね)
ショウさんには何の変化もみられない。
黒装束は絶対脱がされそうだけど、どうするんだろう。
「お待たせいたしました。皆様の着替えが用意できましたので、あちらの部屋でお着替えをよろしくお願いいたします」
え? お嬢様が来て服を選ぶんじゃないのか?
「あの、お嬢様は?」
弓の人が質問する。
「お嬢様は皆さまを既に確認して服を選ばれておりますので、ご安心ください」
そこの心配はしていない。
「は?! どこで見たんだ?」
陽キャの人が驚いて部屋をキョロキョロしている。
「ささ、そんな些細な事は置いておいて、お着替えよろしくお願いいたします」
またしてもちょっとイラっとしたように見える。
執事なのにイラっとしてるのバレたらダメだろ。
「じゃあ、着替えるか」
「ではまた次回」




