俺の休日
「飛びながら探索したらどうなるかな?」
俺は街外れな事をいい事に、飛びながら探索スキルを使ってみた。
「ぎいぃぃぃ」
探索スキルを使うとちゃんと飛べず、飛ぶ方に気を取られると探索スキルが疎かになる。
「顔真っ赤ですよ」
きっとそうでしょうね。
「ムズすぎ」
「力みすぎです」
そうですね。
「もっと器用になんないかな~」
「できる事からコツコツと」
はい。
「歩くか」
「今日で2日目ですが、どれくらいショウさん探しをするのですか?」
「この間案件したばっかりだから、お金にちょっと余裕あるじゃん。だからショウさん探しと探索スキルの向上をはかりたいと思って。一石二鳥だろ」
とりあえず、街の外れをぐるりと周ろう。
「こういう時でもなきゃ、街外れなんて来なかっただろうからな」
「そうですね」
「人いないな~」
「日中は街にいるのでしょう」
「ショウさんも、日中は働きに出てそうだからな」
………。
「おやぁ?」
「日中街はずれにいないなら、いくら探索しても見つかるわけありませんね」
「っあーーーーーー!!」
……そうだ。俺はここに探索スキルを磨きに来たんだ。
「ではこのまま磨きましょう」
待って待って。
「街に戻ろう」
「なぜですか? 探索スキルを磨くのですよね?」
戻らせてください。
「私は何も止めていませんよ」
そうですね。
「あー……俺アホみたいだ」
「何を言っているのですか。オリ、あなたはアホみたいなんかじゃありませんよ」
次に言うセリフ分かってるよ。
「では、街に戻りましょう」
言えよ。
「分かってるなら言いませんよ」
言えよ。
「求められると言いたくなくなりますね」
あっそ。
「俺はアホみたいじゃなくてアホって言いたかったんだろ」
「何も自分で言う事ないではないですか。事実だとしても」
哀れんだ目をやめろ。あと、しっかり肯定してるからね。
「何やってんだか」
「確実にスキルアップしてますから、この2日間は無駄ではありませんよ」
慰めありがとう。
「私は事実を述べているだけです」
「じゃあ、戻ろうか」
探索スキルを使用しながら戻ろう。
◇
「気持ち探索範囲が広がった気がする」
それにしてもツキ邪魔だな。
「は?」
「違う違う。そういう意味じゃない」
かつてないほど睨まれた。
「ではなんなのですか?」
「隣にいるのは分かってるから、表示から消したいなって事」
「でしたら消せばいいではないですか」
「どうやって?」
「知りませんよ。あなたの能力ですよ」
そうでしたそうでした。
「消したいって思えばいけるかな?」
ツキを消したい。
「その言い方、気に食わないのですが」
「失礼しました」
ツキの表示を消したい。
「お、消えた」
これは良い。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「私が消えた感想は?」
「スッキリした」
睨むな睨むな。
「これが出来れば、ストーカーしてる感なくなるな」
「そうですね」
「じゃあ、必要ない人の表示はどんどん消してって街歩きするか」
「ソフトクリーム買ってください」
「いいね~。俺ミックスにしよ」
「本当にミックスが好きですね」
「一度で二度おいしいからな。お前はバニーラで良い?」
「はい」
せっかくの街歩きだし、今日は一応休みだからな。
◇
「あ~……垂れる垂れる」
夏の暑さにソフトクリームが驚きの速さで溶ける。
「おい、ツキ! 涼し気に座ってないで取りに来いよ!」
俺は俺のミックスソフトを死守すべく、垂れて来たクリームを舐めながら歩く。
「前!」
「え?」
ドンッ!
「うわっ!」「っ?!」
急に足に何かが当たり、体勢を崩した拍子にソフトクリームが落ちていく。
「ああっ!」
べちゃっ!
「うわーっ! ごめん!」
小さな女の子の頭に俺のソフトクリームが落ちていた。
「あなたは何をしているのですか」
駆け寄って来たツキが俺を押しのけ、女の子の頭からソフトクリームを取る。
「大丈夫ですか?」
女の子の顔は見えない。
「オリ、水と手拭いを出してください」
「おお……」
「手拭いは未使用のですよ」
分かってるよ。
アイテムボックスから水袋と手拭いを取り出した。
「手拭いに水をかけてください」
はいはい。
「綺麗な水と綺麗な手拭いですからね」
ツキが女の子の頭から優しくソフトクリームを拭く。
「これでとりあえず綺麗になったと思いますが」
ツキが俺に囁く。
女の子は終始下を向いて、俺達に無反応だ。
「ごめんな、お兄ちゃんソフトクリームに夢中になってて気づかなかった」
「本当にアホですね」
「ごめんなさい」
「このお兄ちゃんは本当にアホなだけなので、許してあげてください」
「あ! お詫びにソフトクリーム食べるか?」
コクリと頷き、女の子が初めて反応した。
「よっしゃ! じゃあ何味がいい? 買ってくるから」
女の子が俺の落としたミックスソフトを指差した。
「お~、ミックスな! 俺と好みが一緒だな! すぐ買ってくるから! 日陰で待ってて!」
名誉挽回とばかりに走ってソフトクリームを買いに行った。
「はーーっ! はーーっ! お待たせ! ツキのはこれ!」
ソフトクリームが溶けないように、今度は周りに注意しながらダッシュして戻ってきた。
「はい! 君のミックスはこれ! 溶けちゃうから気をつけてな」
屈んで女の子の手にソフトクームを渡す。
その表情はちょっと嬉しそうだ。
「良かった……」
頭にソフトクームをぶちまけておいてなんだが、嬉しそうな顔が見れてほっとした。
「あれ?」
目が合ったその子の目は虹色だった。
「ではまた次回」




