ショウ姉探し(2)
「……だからさ、こんな……誰だか……分からない……似顔絵を……見せて……探す……くらいなら……ライの顔でも見せて……この顔に似た……女の人……見ませんでしたか〜……とかって言った方が、よっぽど良いと思うぞ……っと、どうよこんな感じで!」
俺はライの顔を見ながら、記憶にあるショウさんの顔に寄せて行き、似顔絵を描いた。
「「ショウ姉!!」」
「こっちの方がまだマシだろ」
「この間、破廉恥な絵を描いてた時も思ったけど、オリってば絵を描くの凄く上手いわね!」
水着の時ね。
「それはもう忘れてくれ」
「破廉恥な絵ってなに〜?」
聞くな聞くな。
「オリの昔住んでた所の水用服を絵に描いてくれたんだけど、女の人の肌が凄く露出した、破廉恥な絵だったのよ。私、思わずオリの事引っ叩いちゃって」
「女の人の肌が露出……オリってば、そんなの描くんだ〜」
ライが優しい眼差しと微笑みを送ってくる。
やめろやめろ。良い顔の無駄使いだ。
「そんな事より、ショウさん探しだろ」
「私とライの絵もショウ姉だったけど、オリが描いたショウ姉の方がよりショウ姉だから、見つかりそう!」
自分たちの絵の評価本当に高いね。
「思ったんだけどさ」
「何〜?」
「今、クリス達もシオン君探してるだろ」
「そうね」
「探しついでにショウ姉の事も聞いてもらったらどうだ? 絵を見て貰うだけだし」
「え……そんなの、いいのかな」
「で、お前らは探しついでにシオン君の事探せば、お互いに良いんじゃないのか?」
「オリ……なんて、なんてナイスアイデアなの!」
リリーが抱きついて来る。
おい、胸が……ありがとうございます。
「リリー、オリ藻掻き苦しんでるけど」
「あっ!ごめん!」
いえ、窒息死しても良かったです。
「大丈夫大丈夫」
(藻掻いていたのではなく、リリーの胸に顔を押し当てていたのでしょう)
してない! ……はずです。
ツキが薄目で俺を見てくる。
してないって!
「呼んで来る」
「ツキちゃん、ありがとう!」
リリーのお礼にコクリと頷くツキ。
「オリ~、ツキちゃんにはなんて言ってあるの?」
「普通にショウさんがライのいとこって事と、家出してるから探してるって言ってあるよ。わざわざ詳しい事言う必要もないし」
ツキが俺の心を読めなければ言ったであろう事を言う。
すまん。俺のせいでバレてるんだ。
「そっか、ありがとう」
「フェス達にもそう言えばいいと思うぞ」
◇
「オリ! クウガには才能がありますよ!」
フェスが興奮して話す。
「効きたくあんぬ大会を先ほどまでしていたのですが」
大会だったんだ。
「クウガはたくあんぬに触れて少ししか経ってないのに、もう『たくあんぬ師』と言っても過言ではないくらい、素晴らしいです」
なんだそりゃ。
「あ、クリスも十分良いのですよ。クウガが凄すぎるだけで」
フォローしてるが、別に悔しがってないだろ。
「次はクウガに負けません」
悔しがってた。
クウガが嬉しそうに笑っている。
「オリ兄様、お呼びの事でどうかされましたか?」
「ごめんな、効きたくあんぬ大会中に」
「いえいえ、もう終わっていましたから大丈夫ですよ」
フェスが満足そうに言う。
一緒に効きたくあんぬ大会できる子達ができて良かったな。
「この間、ここに遊びにきたショウさんなんだけど、実はライのいとこで、リリーの幼馴染だったんだよ」
「それは何かのご縁ですね」
「言われてみれば、ライに良く似ていましたね」
「でさ、二人に聞いたところ、家出中だったんだって」
「おや」
「まぁ……」
「まー」
「休みの日とかに探してたらしんだ」
「そうだったのですか。お仕事もされているのに大変だったのですね」
人探しの大変さを知っているクリスが二人を気遣う。
「それでさ、お互い人探しをしてる事だし、一緒に探したらいいんじゃないかなって思って」
「それは名案ですね」
俺は皆に人探しの方法を提案した。
「オリ兄様の似顔絵は素晴らしいです」
「そっくり~」
「そう?」
ちょっと自信があったから普通に嬉しい。
「シオン君は見た事ないけど、特徴を教えてくれれば描いてみるから、それを見せたらどうかなって」
三つ子だから、特徴を聞いて描けばなんとかなりそうだと勝手に思っている。
「オリにこの様な才能があるとは思いませんでした。シオン探しの前に描いてもらえば良かったですね」
「似顔絵という発想がありませんでしたね」
「でしょ! 似顔絵っていいわよ!」
ライ画伯、リリー画伯の絵じゃなければな。
「じゃあ、人数分描くから探す時に使ってくれ」
「ありがとうございます」
「ます!」
「オリありがと!」
「ありがとう~」
「いやいや、俺なんかでも皆の役に立てて嬉しいよ」
皆からお礼を言われると照れるな。
皆が顔を見合わせる。
何かおかしい事を言ったか?
「オリ兄様! 『なんか』なんておっしゃらないで下さい」
「だめ~」
……そう思ってもらえたんだ。
「そうよ! オリにそんな言い方しないでよ!」
オリは俺だけどな。
「オリがいるだけで嬉しいよ~」
俺は口説かれているのか。
「おお……ありがとう」
「ちゃんと分かったの?!」
怒られているけど、嬉しいな。
「分かったよ」
照れ笑いしながら答える俺。
「じゃあ、後で似顔絵描いておくから、それぞれ探す時に持ってってくれ」
「はい!」「あい~」「分かりました」「了解~」「まかせて!」
「クリス、今日はもう遅いからシオン君の絵は明日描くな」
「はい! よろしくお願いします。私達は早速、明日からショウさんの似顔絵で探し始めますね」
「ありがとう~」
「ありがとう! 私達も全力でシオン君も探すからね」
「はい!」
「じゃあ、今日はこれまでって事で」
なかなか良い感じになった気がする。
(良かったですよ)
やっぱり?
(絵の才能は前世の才能ですね)
そうなんだ。
(芸術方面の能力はチートでは得られないですから、大事にした方がいいですよ)
「ツキ、その手に持ってるのなんだ?」
(絵です)
なんかぐっちゃぐちゃだけど。
「狸か?」
「……」
「耳がないから……たくあんぬだろ」
「オリ」
「は?」
「オリ」
「俺?」
嘘だろ。
「壊滅的だな」
描いた絵を握り占めるツキ。
俺らしい顔がさらにへしゃげる。
「やめろやめろ」
もの凄く睨まれた。
「確かに絵の才能は別みたいだな」
絵をぐしゃぐしゃにして投げ捨てるツキ。
「おいおい」
俺を捨てるな。
「せっかく描いてくれたのに」
「燃やす」
「やめろやめろ。燃やすくらいなら俺にくれよ」
困惑した顔で俺を見るツキ。
「なんだよ。いらないんだろ」
(ゴミですよ)
「俺をゴミ扱いするな」
(あなたの事じゃありません。絵です)
いや、描いてくれて嬉しいから貰ってく。
似顔絵なんて描かれた事ないからな。
(何がおかしいんですか?)
またしても睨んでくるツキ。
「これ喜んでる顔なんだけど」
(そうですか。勝手にしてください)
「はいはい、勝手に飾らせてもらいます」
(やめて下さい)
「額縁売ってるかな?」
(売ってません)
「じゃあ手作りでもするか」
(もういいです)
なんだか初めてツキに勝った気がする。
「ではまた次回」




