はじめての窓口とゴブリン討伐
「52番の方~」
「はいっ」
「お待たせしました。
本日はどうされますか?」
「ゴブリン3体の討伐を受注します」
「はい、それでは受注票お預かりします」
「あっ! はい!」
「パーティー名は『オリ&ツキ』で、お二人でよろしいですか?」
「はい!」
「では、ギルドカードを」
「はい!」
ギルドカード! あのギルドカードか!
くぅ~! 来たね来たね~!
……あれ? どこだ?
「ここ」
ああ、お前が持ってくれちゃってたわけね。
「確認させて頂きます」
お姉さんがサラサラとペンを走らせ、俺とツキのギルドカードの番号を受注票に記入していく。
ちなみにギルドカードは紙? でできてるっぽい。
あとでよく見てみよう。
「最低3体。多くなる分には問題ありません。
魔石を回収して持ってきてください。
ゴブリンですので、本日中に納品よろしくお願いします。
回収できない場合でも、本日中にご連絡ください」
納品って言っちゃうんだ。
「は、はい!」
魔石来たーーー!
魔石回収来ちゃったよ。
魔石のある世界、それが異世界よ。
「やば!」
ついつい、頬がほころぶ。
「はい?」
「いえっ! なんでもないです。行って来ます」
「行ってらっしゃいませ。お気をつけて」
「ありがとうございます! 行こうぜツキ!」
「はい」
初心者とバレバレなのか、とても暖かい目でお姉さんから見られているのが分かった。
ちょっと浮かれちゃったな。
◇
「よっしゃ! 討伐前に装備の確認だ! 準備はいいか!」
「あなたは?」
「あ、俺大丈夫か?」
ポーションとかこの世界あったっけ? 薬草か?
「絆創膏」
あ~、絆創膏ね。
傷にはやっぱり、絆創膏よ。
「マジで?」
「嘘です」
やめて。
「キズパワワーワット」
「嘘だろ」
「嘘です」
もういいよ。
「ポーションありますよ」
よしよしよし! 来た来た来た!
いいんだよ、テンプレでいいんだよ!
興奮するから。
「鼻息荒すぎです。これが俗に言う変態ですか。気持ち悪いですね」
「うるせー。あれ? 俺ポーション持ってるか?」
「ありますよ。腰袋に入れておきました」
「お母さ~ん」
「誰がお母さんですか。そこはママと言ってみてください」
無理。
「本当だ、3本入ってる」
思い出してきた。ポーション売ってるわ。
冒険者ショップで。
「説明しましょう。
冒険者ショップとは、冒険に必要なアイテムが多数揃えられており、ポーションやエーテルはもちろん、武器や防具、そして、おやつに至るまで何でもあるお店です。
一日中いられると評判です。ついつい買いすぎてしまうとか。ホットトドックとか安くておいしいらしいです。我々はまだ食べたことがありませんが」
急にどうした。
「忘れてると思いまして」
助かりました。ってかおやつまであるのか。
「今度行こうな!」
「そうですね、おやつは300ギゼルまでです」
「バナナーナはおやつに入りますか?」
「入りまー…すん」
「どっちだよ。ツキその中途半端なの好きだよな」
「おちゃめさんなもので」
「せっかくなら、おやつをアイテムボックスに入れておくか」
「そんな使い方で良いんですか?」
「今のところ入れるものないしな」
「ちなみに、アイテムボックスはギッリギリ、パンッパンに入れておくと、容量が大きくなっていきますよ」
まじか。ってか、もっと早く言えよ。
「石でも詰めておいたらいいのでは?」
やだよ。
「よくそれでさっき『おやつ入れでいいのか』とか聞いたな」
なんて、しょーもない話をしてたらゴブリン達がいるところまで来ていた。
おぉ~いるいる。
わぁ~ゴブリンだぁ。
ゴブゴブ言ってるかな? 耳をすませてみる。
なんかギチギチ言ってた。きんもい。
「なんか5体もいるな。どうしようか。
さすがにいきなり5体はな……」
「では、あちらに行ってみますか?」
「おお、確実に行きたいからな」
「いましたよ。おあつらえ向きに1体です。どうぞ」
「よし……」
緊張するけど、それはじじいの俺なのか、今の俺なのか。
じじい時代も今の俺も何かを殺すというのは初めてだから。
今の俺は素振りとか無料の戦闘訓練とかはしてきたけど、命を奪うってのは……
これが異世界でよくある、前の世界では無縁の感情か。
でも異世界で生きて行くって決めたからな。やってやるぜ。
「もういいですか?」
はい。
ゴブリンはこちらに気づいていない様だ。後ろから行こう。
「ゴブリーン」
ちょ、ばか。呼ぶ奴があるか!
ゴブリンが凄い勢いで……でもなく、こちらに走ってくる。
遅。
「ギギィ……」
うわ、よだれ汚。
「今ですよ」
ズシャ!
「パチパチパチ。1体討伐完了ですね」
弱。
「弱くね?」
「まぁ、こんなものですよ」
「そっか」
「なので、5体も行けると思いますよ」
「そうかな?」
「余裕、余裕」
「じゃあ、行っちゃうか!」
「どうぞ、どうぞ」
「って、行かねーよ! 騙されないぞ。さすがに5体は無理だ。次は2体を狙う。確実に行くぞ。元じじいは慎重だ」
「長年の経験から来る慎重さですか。そういうのも大切かもしれませんね」
ズシャッ!
「5体行きましょうとか言ってたヤツの言うセリフかよ」
ズシャッ!
ゴブリンを斬りながら話す俺。
「弱」
「だから言っているじゃないですか」
まさかの本当だった。
これは5体行けそうだ。
「行っちゃうか!」
「どうぞ、どうぞ」
このノリがなんか信用できない。
「やっぱり若いと身体が軽いな」
「じじいの発言ですね」
だな。
「てかさ、お前は戦わないのか?」
「戦いませんよ」
「なんで?」
「分かりませんか?」
「うん」
「強いので」
さいですか。
「よ~し、じゃあ5体行くか!」
あいつの事は放っておいて、俺はゴブリン5体に飛びこんで行った。
ダッシュ斬りにジャンプ斬り。
我ながら、本当にいい動きだった。
「さっきまで、命を奪うのはなんちゃら~って思ってた人とは思えませんね」
そうだね。
我ながら、どうかと思った。
斬ってもなんにも思わなかった。
これは相手がモンスターだからだろうか。
「まぁ、いいや。今日は帰るか。疲れてないけど初めての討伐だし」
「魔石は拾っておきましたよ」
「ありがと」
「では戻りますか」
「これって、いくらくらいの稼ぎになるのかな~?」
「知らずに戦ってたんですか?」
「受注票ちゃんと見てなかったわ」
「ちゃんと見ないとダメでしょう」
「ごめんね、ママ」
「よしよし」
なんて話してたら冒険者ギルドに戻ってきてた。
「ではまた次回」
誤字報告ありがとうございました。




