はじめての案件受注(4)
「北側に煙幕弾上がってますね」
やっぱり北側がよく出るんだな。
「南側は全然出ないな」
「ですね。まぁ、出ない方がいいんですけどね」
「そうだな」
確かにこれはのんびりしちゃうな。
一応、索敵はしてるから大丈夫だろうけど。
それにしても『クリア・エネミーサーチ』カッコ良いな〜、俺とツキ以外に見えないのが残念だぜ。
「それにしてもよく上がってるな」
「やっぱり森が近いからですかね」
「おい、中央付近に煙幕弾が上がってるぞ」
「本当ですね」
「あの女の子大丈夫か?!」
「大丈夫ですよ」
「あんな華奢な身体でか?!」
「はい」
誰よりも強いからな。
なんならこの世界で一番強いんじゃないか?
それはさすがに言いいすぎか。
「ははは」
「どうした急に笑い出して」
「いえ、思い出し笑いです」
「相棒にモンスターが迫ってるというのに余裕だな」
「そうですね。相棒を信じてるので」
最強だからな。
「それはいいな」
顔が黒い布で覆われてるから分からないが、ショウさんが笑った気がした。
「それにしても煙幕弾、上がりまくってますね」
あれじゃ、畑の人達の手が止まっちゃうだろうな。
「加勢しに行った方がいいのではないだろうか?」
「そうですね。近場の畑の人に聞いてみますか」
こっち暇だからな。
「すみませーん。北側に加勢って行った方がいいですか~?」
「ダメダメ、南側に何かあったらどうすんだ」
まぁ、それもそうか。
でも、南側は見事に何にもいないんだよな。
北側まで索敵の範囲を広げる。
なんか昨日よりモンスター来てるぞ。
でも行っちゃダメだって言われたしな。
ツキー。そっちどんな感じ?
(カンリパーティーが苦戦してますね)
俺達そっち行けないんだけど、大丈夫そうか?
(大丈夫ですよ。いよいよとなったら、こっそり手伝います)
じゃあ、いいか。
「くっ……反対側で戦っている者達がいるのに行けないとは」
「煙幕弾も上がらなくなって来たんで大丈夫じゃないですか? カンリパーティー慣れてそうだったし」
「……そうだな。君は落ち着いてるな」
「そうですか?」
「私はいつも、気ばかり急いてしまうんだ。こんなんじゃダメなのに」
落ち込みだした。そんな感じにみえなかったけど。
人は見かけによらないな。
……そういえば、本来の意味で見かけ見えてなかったな。
黒装束で覆われてるから。
どんな顔してんだろ?
◇
「今日は参った参った。こんなにモンスターが出る事はなかなかないんだが」
へー、そうなんだ。
「ツキちゃんのおかげで助かったよ」
「すごいナイフ捌きだった。キラーベアーの脳天にナイフでズドンだからな。命の恩人だ」
全然こっそり手伝ってないね。
「運が良かった」
「うんうん」
…………。
カンリパーティーの人が滑ったみたいになった。
「では明日からもよろしく頼む」
◇
「皆さん、1週間お疲れさまでした。報酬はギルドから受け取ってください」
「お世話になりました」
終わったかと思ったら、畑の責任者の方が俺達を手招きした。
「今回はモンスターの数がやけに多かったので、畑Bの皆さんには心ばかりではありますが、上乗せしておきました。ありがとうございました」
「え、いいんですか?」
「もちろん」
「ありがたい。良かったなオリ&ツキにショウ。こんな事はなかなかないぞ」
そうなんだ、はじめての案件受注で幸先がいいな。
「またどこかで会ったら、よろしく頼む」
「こちらこそ」
「オリ殿、今回は世話になった」
「ショウさん。いえ、世話なんてしてませんよ」
「なんだかんだ、私は一度も戦わなかったから……」
確かに。ショウさんがいる時はモンスターも獣も出なかったな。
「モンスターは出ないほうがいいんですから、良いじゃないですか」
「良かったら、お礼に食事でもいかないか? 打ち上げみたいな……」
「いえいえ、本当に気を使わないで下さい。俺達は仕事してただけなんで」
「そうだよな。私なんかと打ち上げなんて嫌だよな。すまん、聞かなかった事にしてくれ」
「いやいやいやいや。違いますよ。嫌だなんて事ないですよ」
「……」
う~ん、見られてる。
「分かりました。じゃあ、割り勘でどうですか? な、ツキ?」
コクリ。
「いいのか?!」
「はい」
「よし! じゃあ行こう! どこ行こうな?!」
う~ん、最初に見た時と印象が変わってきたぞ。
「私はどこでもいいぞ! オススメとかあったら教えてくれ!」
勢いが凄い。
「じゃあ、俺達がよく行く店で良いですか?」
「ああ! もちろん!」
「じゃあ、ショウさん麦わら帽子返してから行きましょう」
「あっ! まだ被ってたな!」
走って帽子を返しに行った。
「やっぱり人って、話してみないと分からないな」
「話していても、分からない事があるのですから当たり前ではないですか」
そうですね。
「どうせなら、カンリパーティーも誘えば良かったな」
「誘えないくせに」
ギクゥ。
「かなり年上だからな〜」
誘われるなら、いいんだけど。
「年上じゃなくても、できないくせに」
うるせー。
「そういえば、なんでこんな案件受けてんだろ?」
低ランクの仕事だよな?
「ずっとここの警備をしてるそうですよ」
「え?」
「楽だからと言ってました」
「いやいや、他にもあるだろ」
「高望みはしないそうです」
は〜……。
冒険者も色々だね。
「待たせたな! 行こう!」
…………。
「えっと……どなたですか?」
「何を言っているんだ! ショウだよ!」
ははは! と目の前の人が笑う。
「ショウさん?!」
「しょうだよ!」
ははは! と笑ってるが面白くないよ、そのダジャレ。
「顔……」
「ああ、顔か。日も暮れたからな、頭巾と口当ては脱いだのだ」
顔……。
「ほら、行くぞ! 場所を教えてくれ」
ショウさんが駆け出す。
「あ、はい……」
「ではまた次回」




