はじめての案件受注(3)
「この案件は大当たりだったな」
今日だけでキラーベアー17体、キラーラビット7体、熊8体を倒した。
「固定給の他にこれだけ倒せれば、1日の収入としてはウハウハですね」
ツキさんはウハウハとか言っちゃダメな気がするな。
「あなたの気持ちを代弁したのです」
そりゃどうも。
「でも思ったよりモンスター出るんだな。寛ぎ過ぎて死んだ人がいるって言ってたから、もっとまったりしてるもんだと思ってた」
油断する暇ないくらい、コンスタントにモンスター来てたけど。
「煙幕弾は上がりませんでしたね」
「まぁ、俺ら側は来る前に倒してたからな」
もしかして、モンスター来てないとか思われてたりしてな。
◇
「え?! モンスター来てたんですか?」
思われてた。
「あ、はい」
「今日はやけに静かだと思ったんですが……」
「熊は北側に積んであるんですけど、そのまま頂いてっちゃって良いんですかね? あと魔石もあります」
バッグから魔石を取り出し並べて行く。
「あ、あ、出さなくていいです。熊もどうぞ」
本当に貰ってっていいんだ。
「ありがとうございます。熊は帰る時に持って行きますね」
「荷車お貸ししますよ」
「助かります」
半分は荷車で半分はアイテムボックスに入れよう。
アイテムボックスのスペースが広がりそうでいいな。
獣臭くなりそうだけど。
(臭いは充満しませんから大丈夫ですよ)
そうか、時止まってるもんな。
「じゃあ、今日は皆さん上がってください。麦わら帽子は帽子掛けに戻してくださいね」
そして、本日は解散となった。
「じゃあ熊回収しに行くか~」
そういえば、熊を貰ってくのはいいとして、どうすればいいんだ?
ギルドで買い取って貰えるのか?
「私が解体しますよ」
「できんの?」
「なぜできないと思うのか」
ですよね。
「できない事を聞いた方が早そうだな」
「今度考えておきます」
できない事がないのかもしれないね。
◇
今日の夜ご飯は、ツキが腕によりをかけた熊尽くしだった。
「クマおいしよー!」
「おいクウガ、口の周りがどろどろだぞ」
クウガが食べているのは『熊の脳みそ』だ。
新鮮だと最高においしいらしい。
「熊は刺身でも美味しいですが、ツキさんの料理は格別です! 今日のシオン探しは成果なしでしたが、こちらの料理で癒されます! 五臓六腑に染み渡ります」
クリスは熊の刺身……生肉を山盛り食べたあと、熊シチューを陶酔しながら食べている。
ツキが得意げにしている。
料理を褒められるのは嬉しいようだ。
(褒められればなんでも嬉しいですよ)
いや、料理の時は特に嬉しそうだぞ。
「この熊って、今日の案件で貰えたの?」
リリーは熊の煮つけを食べている。
「そう、今週はずっとここ」
「いいね~、俺達も今度行こうかリリー」
「そうね。で、ツキちゃんに料理してもらお!」
あと7体あるけどね。
なんだかんだ、アイテムボックスに全部入ったんだよな。
ギツギツだからまたアイテムボックスが大きくなってくれるぞ。
「熊デザート」
ツキがデザートを持ってきた。
「なんだよコレ」
熊でデザートってどんなだよ。
「ゼリーかしら?」
「血でできてる」
おえ。
「血?! 珍しいわね」
リリーが躊躇なく食べる。
「美味し! なんで? なんか爽やかな味がする」
「うま~」
「凄いです! 美味しいです!!」
「クマ! おいよし~」
「俺は遠慮しておくよ」
ツキにちろりと見られる。
「悪いけど、無理」
食わず嫌い発動。
(別に食べてくれなんて言ってません)
◇
「今日は北側を我々が、オリ&ツキのどちらかが中央、南側にショウとツキ&オリの残りが担当してくれ」
「「はい」」
「分かった」
「ツキ、お前中央行けよ」
コクリ。
「じゃあ、ショウさんよろしくお願いします」
「よろしく頼む」
「ショウさんはソロなんですか」
「ああ」
今日も麦わら帽子被ってるな。
「今日はサイズの合った麦わら帽子をつけているな」
「え?」
「サイズが合ってなくて、気持ち悪かったからな」
黒装束に麦わら帽子の人に気持ち悪いって言われた……
「相棒にもそう言われました」
「良い相棒を持ったな」
「はぁ……」
「ショウさんは忍者なんですか?」
「違うが?」
怪訝な顔で見られた。
「あ、黒装束なんでてっきり……」
「日焼けと熱中症予防だ」
え~……
「万全にしたつもりだったが、麦わら帽子の発想はなかった」
「そ、そうなんですね~」
「肌が弱くてな」
「はぁ……大変ですね」
「分かってくれるか」
あんま分かんない。
「すぐに火傷のようになってしまうのだ」
腕捲りして、肌を見せてくれた。
「え?! めっちゃ綺麗!」
黒装束の下にあるとは思っていなかった、美白&美肌が目に飛び込んできた。
「白くて、肌のきめが細かいせいで弱くてな」
「女性顔負けですね」
「何を言っている」
「?」
「私は女だぞ」
なんですって?
「え?!」
「男に見えたのか?」
「え、あ、は?」
「こんな格好をしているから無理もないか」
「え~……申し訳ございませんでした」
上半身を90度倒し、最敬礼のお詫びをする。
「いや、謝るな。背も高い方だし、声は低いしな」
「や、でも」
「本当に大丈夫だ」
アカネさんといい、こっちの世界来てから女性を男性に間違えすぎだな俺。
決めつけはよくない。
今度からはマジで気をつけよう。
「昨日は中央だったから暇でしょうがなかったが、本当に広い畑だな」
「そうですね」
「適当に巡回するか」
「そうですね」
「昨日は北側は沢山モンスターが出たようだな」
「そうですね」
「君は強いんだな」
「そんな事ないですよ」
「君はランクいくつなんだ? 私は5だ」
「俺たちも5ですよ」
「なんだ、一緒だな」
「そうですね」
「君はそうですねをよく言うな」
「そうですか?」
「わざとか?」
「そんな事ないですよ」
「ランクも近い事だし、仲良くしよう」
「もちろん」
黒装束に麦わら帽子だけど話しやすい人だな。
「それにしても、モンスターは来ないものだな」
「そうですね」
あっという間に、昼になっていた。
(ではまた次回)




