はじめての案件受注
「これなんかいいんじゃないか? 昼番、残り2名だし」
毎週募集:昼番夜番あり、各10名募集。初心者歓迎。
畑の警備をする簡単なお仕事です。
畑を荒らす、動物とモンスターの討伐。
担当エリア内さえ守っていれば、何をしてても良いです。
動物やモンスターが出ない日もあるので初心者の方でもお気軽にどうぞ!
※討伐したモンスターの魔石や獣の肉はお持ち帰りOK!
昼番 126,000ギゼル/1人
夜番 175,000ギゼル/1人
「簡単すぎるのでは?」
それはそう思う。
「でも初めてだからな。これで様子を見よう」
念には念を入れないとな。
「あなたがいいなら何でもいいです」
「じゃあ、これで」
冊子に『オリ&ツキ』のパーティー名を2枠に記入する。
案件受注する場合は、受注したい案件のページに受注可能人数分の枠があるので、枠内に参加する人数分のパーティー名を記入する。個人情報保護の観点からメンバー名までは書かないのだ。まさか異世界で『個人情報保護』という言葉を聞くとは思わなかったが、人間がいるならあってもおかしくはない。
「では案件番号を控えて受付に行きましょう」
「待て待て、他のパーティー見てみようぜ」
「私は興味ないので、先に受付に行って手続きしてます」
さよですか。
「じゃあ頼むわ」
同じ案件を受注するパーティー名を確認する。
『パールルール』×5
『カンリ』×2
『ショウ』×1
聞いた事ないな。
……そもそもパーティー名を見たところで分かる事がない事が分かったな。
でも『パールルール』は5人パーティーなのか。多いな。
あと、パーティ名ダサいな。
『カンリ』は俺達と同じ2人か。
パーティー名がどうしてそうなったか知りたいくらい、よく分からんな。
『ショウ』は人名か? 1人分の枠しか書いてないしソロかな?
担当エリアがあるらしいけど、どういうエリア分けになるんだろ?
ソロもいるくらいだから、パーティーメンバーと一緒に行動するわけでもないのかもしれない。
ツキと離れて警備する事もあったりするのか?
「まぁ、行ってみれば分かるか」
◇
「では本日から1週間、こちらの皆さんで警備していただく事になりますので、よろしくお願いします。警備中は熱中症に気をつけてくださいね~」
現場は炎天下の為、麦わら帽子と水袋と塩飴を渡された。
「水と塩飴が足らなくなったら、ここにありますので自由に持って行ってくださいね」
働く人に優しい職場だな。
「さて、こちらの案件が初めてなのは『ショウ』と『オリ&ツキ』パーティーですね。詳しい内容についてはこの後説明しますので、少し残ってくださいね」
パールルールとカンリは経験者か。
「パールルールパーティーは毎週ありがとうございます。今週も5名全員で畑Aを担当して下さい。残りのパーティーは畑Bを担当して下さい」
慣れているのか、パールルールはエリアを言われるとさっさと持ち場に向かった。
「カンリパーティーは今回初心者の方がいますので、分からない所とか教えてあげて貰えると助かります」
頷くと、カンリパーティーも担当エリアに向かった。
「ではショウさんとオリ&ツキさん、今回は受注ありがとうございました。こちらの畑は場所柄なのか猪や熊、モンスターだとキラーラビット、キラーベアーがよく出ます。我々一般人には敵わないモンスターですが、ランク5の冒険者の皆さんなら容易く倒せるといわれているモンスターばかりが出て来ますので、容赦なくいっちゃってください。畑や畑の作物を絶対に荒らされないようにして下さい」
「「はい」」
こういう時はちゃんと返事をするツキ。
確かに空気読んでるな。
「分かった」
ショウパーティーと呼ばれる人物が腕を組みながら返事をした。
頭から顔から全身黒ずくめの男忍者だ。
暑そ。
「ショウさんは……麦わら帽子いらなさそうですね」
「いる」
いるんだ。
忍者ルックに麦わら帽子ってなかなかパンチあるぞ。
あ、被った……。
「あの、無理しなくて良いですよ?」
気をつかって麦わら帽子を被ったと思ったのか、畑の人が声をかける。
「熱中症は怖いからな。麦わら帽子を借りられるなら借りたい」
そうだね。
顔が隠れているからだろうか、人の視線を恐れない事に感心する。
「担当エリアを5人で警備にあたってください。基本的には畑を適当に巡回して頂ければいいです。なんなら巡回してなくてもいいです」
なんですと?
「モンスターや獣が出たら、畑で作業をしている我々が煙幕弾を放ちますので、その場所に急行して退治して頂ければ良いです」
なるほど。
「間に合わないと困るので寛ぎすぎるのはさすがにやめて頂きたいですが」
ははは、と笑っているが、そんな奴いないだろ。
「それで亡くなった冒険者の方もいますので」
いたんだね。
「巡回して頂くと、ちゃんと仕事してもらってる感がでて畑で働く皆の士気も下がりませんし」
もらってる感でいいの?
「あの……普通に巡回してって言えばいいのでは?」
「言う程モンスターが出る訳ではないので、巡回しつづけて貰うのが忍びなくて」
「じゃあ、畑で手伝ってもらいながらモンスターが出たら退治するとかの案件にすれば」
「大事な農作物を素人に任せられません」
すごい目で見られた。
「すみません」
「いえいえ、我々は畑が守られればそれでいいので」
優しい顔に戻った。
差が怖い。
「守られなかった場合とかあるんですか?」
「ありますよ。ギルドにボロクソ苦情言ったら、ランクを落とされてました」
ははは、と笑っているが目が笑ってなくて怖い。
「ランク落ちるくらいじゃ足りませんけど」
真顔で言うから普通に怖い。
「畑が荒らされないよう頑張ります」
「はい、よろしくお願いします。何か分からない事があったら、カンリの人に聞いてください」
「はい」
俺達は担当する畑へと向かった。
「ではまた次回」




