五章 歪んだ日常 22
「なぁ」
「何だ?」
孝二は言葉一つ一つを確認するように静かに言った。
「世界中に刻印はあるんだよな」
「ん? あぁ、そうだな。刻印の正確な数は分かっていないからな」
「世界中で今回みたいなことが起きているのか?」
「……あぁ、そうなるな。刻印によって人が傷つき、死んでいる」
「……そうか」
孝二は大きく息を吐く。
「どうやらもう決心しているようだな」
真の言葉。それに孝二は大きく頷いた。
「あぁ」
真の顔をまっすぐに見る。そしてはっきりとした口調で自分の意思を告げた。
「入れてくれ。CWAに。世界中の人たちの日常を守る力になりたい」
真は鼻を鳴らしながら口元を笑みの形に歪める。
「いいだろう。歓迎しよう。緋川に言っといてやる」
真はそれだけ言うと、顔を窓の外に向ける。
――日常を守るためか。
真は目を細め、窓から覗く星空を眺める。
――どこかの後輩と同じこと言いやがるな。さすがというか。何というか。
コーヒーを飲みほし、軽く息を吐く。
――正義、か。緋川。貴様の本当の目的を――貴様がやろうとしていることを――こいつが知ったらどう思うだろうな……。
真は横目で孝二を見やる。その純粋な子供の顔に、真の中に罪悪感に近い思いが浮かんでいた。