表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/79

五章 歪んだ日常⑥

『あんたにはそれで十分でしょ?』

 鍵山の手が動き、千里の頬を思いっきり引っ叩いた。

『このアマ! 人の顔に唾を吐きやがって!!』

 千里の襟首をつかみ、その場に押し倒す。

『犯してやる! 糞アマがっ!!』

 鍵山は襟を乱暴に破り取る。千里の下着が露わになり、鍵山の中に奇妙な興奮が生まれる。

『ははっ! どうされたい? 怖いか!? この糞アマ!!』

 千里の顔をつかみ、こちらに向けさせる。千里は涙を流しながらも、こちらを嘲笑うかのように見つめていた。

『……おい、なんだその眼は』

 鍵山の声が曇る。千里は肩を揺らしてこちらを笑っている。

『犯せば? 好きなだけ。それで何になるって言うの? あんたが私に何をしようと、私はずっと孝二だけを愛し続けるの。あんたは空っぽな体だけで満足すればいいのよ。この体がどんなに汚れようと、孝二は私をずっと見てくれるもん。あんたなんかには分かんないでしょうけど』

『…………』

 千里のまっすぐすぎるその視線に、思わず鍵山は目をそらした。それは千里の迫力に気圧されたことを物語っていた。

 鍵山は静かに立ち上がり、無言のまま窓辺に置いてある自分の鞄に歩いて行く。

 鞄を開き、そこから取り出した物。それは一本のナイフだった。鍵山はそれを強く握りしめ、千里のもとへ戻っていく。

『何? 今度はそれで脅すの?』

 千里の嘲るような言葉。鍵山は無言のまま、自身の左手に持つナイフを見つめる。

『何、簡単な話だよ』

 鍵山の体が震えているせいか、ナイフの切っ先がぶれている。鍵山は視線を千里に向け、静かに口を開いた。

『君の彼氏を殺してやるよ。そんなふざけた戯言が永遠にほざけないようにね。ただし殺すのは僕じゃない』

 鍵山は右手を掲げる。その掌に奇妙な紋様が浮かび上がってきた。

 それは玉座のような形をしていた。中心に『IV』と描かれており、その玉座の左右には錫杖のような物が対称的に描かれていた。

『ナンバー4。この刻印の名は『皇帝』』

 その右手が伸び、千里の額に触れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ