五章 歪んだ日常②
「千里ちゃんに君を襲わせたのはちょっとした出来心だったんだよ。お願いだから許してくれよ。ほら、これから俺達一緒に戦うわけじゃないか? だから仲直りしようじゃないか」
「…………」
孝二は沈黙したまま、鍵山を見つめていた。元々あまり好きな相手ではないのに、馴れ馴れしくなったことで余計に存在がうっとうしくなっていた。
「誰も一緒に戦うなんて言ってない」
「またまたぁ。そんなこと言わないでさ。困った時はお互いさまっていうでしょ?」
――何がお互い様だ……。
孝二はうんざりしたようにため息を吐き出した。
「ねぇねぇ。君の刻印はどんな能力なんだい?」
「あ?」
「ほら、お互いに能力を理解しといたほうが連携も取りやすいでしょ?」
孝二は再びため息を吐く。孝二がそのまま黙っていると、なおもしつこく鍵山は尋ねてくる。
「あぁ、分かったよ。俺の能力は――」
――貴様の能力は、現在過去未来、全てを見通すことの出来る第三の眼を得る。それは自分や他人にとどまらず、そこらの動物から足元の石ころまで全てだ。その全てを見ることが出来る。
「…………」
「あれ、どうしたんだい? 轟君」
――あらゆる過去。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
「え? あぁ、うん。いいよ。何だい?」
孝二は額の眼のイメージをゆっくりと開始し、鍵山をまっすぐに見つめる。
「お前は――千里をどうしたんだ?」
「え……? またその質問かい? もうしつこいなぁ」
刻印の眼が開き、脳にその眼から伝えられる映像が浮かぶ。
鍵山は孝二の額に突然刻印が浮かんだことで、驚きの表情を見せる。
「い、いきなりどうしたんだい? 俺達仲間じゃないか」
「いいから質問に答えてくれ」
鍵山の脳内に侵入していくような映像が脳に浮かぶ。そしてそこから鍵山を中心に時が逆流するような光景が広がっていく。