四章 戦士と奴隷⑯
その紋様は巨大な目だった。
大きく見開かれたその目の瞳には『XVII』と描かれており、その目の上部分には七つの小さな星。下部分には瞳から流れる涙を包み込む壺のような物が描かれていた。
「ナンバー17。この刻印の名は『星』。これで見たんだよ。こいつらの攻撃の軌道も。手前がさっき俺を殺そうとしたこともな!」
「ば、馬鹿な……。俺以外の刻印の能力者がこの学校にいるはずが……まさか、CWAか!?」
「違う。俺は普通の学生だ。CWAとは関係ない。だが――」
孝二は木刀を背後に振る。背後から襲いかかろうとしていた学生をなぎ倒す。
「手前が俺の日常を壊そうってんなら容赦しない。殺す」
孝二は振り返りながら、そう言った。鍵山は体をがくがくと震わせ、口を開く。
「そ、その力は誰から貰ったんだ?」
「あ?」
孝二は何と答えようか、一瞬迷う。
「ベージュのコートを着た男だ」
緋川、と直接言うことが出来ず、孝二は率直にそう答えた。
だが、その答えを聞き、鍵山はその目を大きく見開かせた。
「あぁ! あの人から貰ったのか! ということは君は俺の味方だったのか!」
「はぁ!?」
孝二は頓狂な声を上げるが、鍵山は構わず、孝二の脚に抱きつくように詰め寄ってくる。
「あぁ、すまなかったよ。あの人が気を利かしてくれたんだね。それなのに俺は君にひどいことを。本当にすまなかったよ。君がいれば百人力、いやもう万人力だ!」
突然の態度の豹変に、孝二は訳が分からず言葉を失っていた。
「あぁ、本当に助かるよ。千里ちゃんには君のような男が似合うよ。まさにお似合いのカップルだ! さぁ、俺達の力でCWAの奴らを返り討ちにしよう!」
「おい、ちょっと待て」
孝二はとりあえず、鍵山を黙らせる。
「何か勘違いしてないか? 俺が刻印を貰った相手は――」
「緋川先生だろ?」
孝二は目を見開き、言葉を飲み込む。
「俺もあの人に刻印の能力を貰ったんだよ。刻印の使い方、そしてCWAの情報をくれたのもあの先生だ」
鍵山は興奮したように言葉を続ける。
「さぁ、今宵CWAの奴らが俺達からこの力を奪いにくる。そうなるよう緋川先生が仕向けてくれたんだ。はは、馬鹿な連中だ! 奴らも俺の奴隷にしてやる! 正直一人じゃ不安だったんだ。いや、本当に君が加勢してくれて助かるよ! 連中が動き出す時間は六時だ」
孝二はもう訳が分からなくなっていた。